農業におけるAI活用事例20選!収穫向上、コスト削減など目的別に紹介
農業分野でのAI(人工知能)活用が急速に広がっています。人手不足や気候変動といった課題に直面する農業現場では、AIを活用することで収量向上、作業効率化、環境負荷軽減など様々な効果を実現できるようになりました。
本記事では、日本の農業現場で実際に導入されているAI活用事例を20件厳選してご紹介します。収量・品質向上、コスト・労働削減、環境負荷低減、サプライチェーン価値向上の4つの観点から整理し、それぞれの導入効果や特徴を詳しく解説していきます。
なお、以下の記事ではAIの活用事例を網羅的に取り上げています。ぜひ参考にしてみてください。

【一覧表】農業業界におけるAI活用事例20選まとめ

収量・品質向上を実現した農業におけるAI活用事例
農作物の収量アップや品質安定化を目指すAI事例をご紹介します。以下の5つの事例を取り上げます。
- Spread「Techno Farm けいはんな」によるレタス生産の自動化事例
- NTTデータのドローン×AI「スマート追肥・病害診断」事例
- オプティムの「AI収穫時期・収量予測」システム事例
- e-kakashi × カルビーポテトによるジャガイモ収量1.6倍の事例
- クボタ「KSAS」による水稲・園芸作物の精密農業事例
Spreadが植物工場で日産8トン超を実現した事例

自動化栽培の「Techno Farm」、植物工場として初の「Mizuho Innovation Award」受賞 | 農業とITの未来メディア「SMART AGRI(スマートアグリ)」
項目 | 内容 |
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企業名 | 株式会社スプレッド |
業界 | 植物工場/リーフレタス量産 |
ビフォー | 温度・湿度・CO₂・光量を人が調整。稼働率・歩留まりが不安定 |
アフター | AI制御で栽培工程7割自動化・日産8t超、品質と供給が安定 |
スプレッドが運営する「Techno Farm けいはんな」は、大規模完全閉鎖型植物工場として注目を集めています。従来は人の手で温度や湿度、CO₂濃度、光量などの環境制御を行っていましたが、天候や作業者の経験によって品質にばらつきが生じていました。
同社が導入したIoT環境制御クラウド「Techno Farm Cloud」では、AIが様々なセンサーデータを解析して最適な栽培環境を自動制御。その結果、栽培工程の7割を自動化し、日産8トン超の安定生産を実現しています。さらに、AI制御により水を1日1.6万リットル節水し、労務データの可視化で月80時間の作業削減も達成。年間を通じて同一規格のレタスを大手小売4500店に安定供給できるようになりました。
NTTデータがドローン画像AIで増収を実現した事例

準天頂衛星みちびきに対応したドローン及びNTTグループのAI技術を活用したスマート営農ソリューションの実証実験を開始 | NTTデータ | NTTデータグループ – NTT DATA GROUP
項目 | 内容 |
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企業名 | NTTデータ(スマート農業コンソーシアム) |
業界 | 水稲/露地作物 |
ビフォー | 生育診断は目視。追肥タイミングが遅れ減収リスク |
アフター | ドローン画像をAI解析→生育ステージを診断し追肥量を可変施用。収量2〜5%増、肥料5%減 |
NTTデータのスマート農業ソリューションでは、ドローンで撮影した圃場画像をAIが解析することで、作物の生育状況を正確に診断できます。従来は目視による生育診断に頼っており、追肥のタイミングが遅れて減収につながるケースがありました。
このシステムでは、みちびき衛星測位と画像AIを組み合わせて圃場の差分を精密に補正し、最適な追肥量を算出。複数のドローンが協調飛行することで30ヘクタールを2時間で撮影でき、追肥の誤差を1キログラム/10アール以内に抑えられます。また、病害虫発生を事前予測して農薬散布計画を自動生成する機能も備えており、収量2〜5%増と肥料5%削減を同時に実現しています。
オプティムがマルチモーダルAIで熟度予測を実現した事例

農作物収穫時期・収量予測システム特許について | OPTiM
項目 | 内容 |
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企業名 | 株式会社オプティム |
業界 | 施設園芸全般 |
ビフォー | 収穫時期の判断が経験頼み。需要予測が困難で余剰在庫や欠品が発生 |
アフター | AIが熟度をリアルタイム判定し最適な収穫時期を予測。収穫人員の確保を最適化し残業月40h→15hへ |
オプティムの「AI収穫時期・収量予測」システムは、映像解析とセンサーデータを統合したマルチモーダルAIが特徴です。従来は栽培者の経験に頼って収穫時期を判断していたため、需要が読めずに余剰在庫や欠品が常態化していました。
このシステムでは、AIが作物の熟度をリアルタイムで判定し、「取り頃」を可視化することで最適な収穫タイミングを予測できます。収穫人員の確保も最適化され、残業時間を月40時間から15時間に大幅削減。さらに、販売会社や小売店へ事前発注データを自動連携することで価格下落を防止し、生産者の収益安定化にも貢献しています。
e-kakashiとカルビーポテトが収量1.6倍を達成した事例

項目 | 内容 |
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企業名 | Agri Info Design(e-kakashi) |
業界 | 露地ジャガイモ |
ビフォー | 土壌水分・施肥は経験値。品質不安定 |
アフター | 気象・土壌データをAI解析し施肥を最適化、収量1.6倍・規格外率30%減 |
e-kakashiとカルビーポテトの実証実験では、IoTセンサとAIダッシュボードを組み合わせた施肥最適化システムを導入しました。従来は土壌水分や施肥のタイミングを栽培者の経験値に頼っており、品質が不安定でした。
システム導入後は、気象データと土壌センサーのデータをAIが解析して最適な施肥タイミングと量を算出。「施肥シフト表」を自動生成することで、誰でも適切な施肥管理ができるようになりました。結果として収量1.6倍、規格外率30%減を実現し、スナック市場拡大に対応した原料安定供給を可能にしています。導入コストは1ヘクタールあたり月3,000円と比較的安価で、サプライチェーンへ予測収量をAPI連携する機能も備えています。
クボタのKSASが可変施肥で資材15%削減を実現した事例

施設園芸 | スマートアグリソリューション技術編 | イノベーション | 株式会社クボタ
項目 | 内容 |
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企業名 | 株式会社クボタ |
業界 | 農機・営農支援SaaS |
ビフォー | 作業・施肥・収量データが紙や個別Excelに散在、勘に依存 |
アフター | KSASが画像+環境データをAI解析し、可変施肥と収量予測で増収・資材15%削減の実証 |
クボタのKSAS(Kubota Smart Agri System)は、農機・ドローン・外部API連携を備えた国内最大級のFMIS(農場管理情報システム)です。従来は作業や施肥、収量のデータが紙や個別のExcelファイルに散在しており、経験と勘に依存した営農が行われていました。
KSASでは、スマホで撮影した画像から病害虫をAI診断する機能や、衛星・ドローン画像を解析して可変施肥を提案する機能を搭載。BASFのXarvioと連携して衛星NDVIデータから最適な施肥量を算出し、資材15%削減を実証しています。また、API公開により外部サービスとの相互接続も可能で、水稲向け基本コースなら1ヘクタールあたり年約3,000円のサブスクリプション料金で利用できます。
コスト・労働削減を実現した農業におけるAI活用事例
人手不足や労働コスト増加に対応するAI事例をご紹介します。以下の6つの事例を取り上げます。
- inahoの「アスパラガス自動収穫ロボット」事例
- AGRISTの「ピーマンAI収穫ロボット」事例
- ヤンマーの「ロボットトラクターYT5113A」事例
- HarvestXの「イチゴ自動授粉・収穫ロボット」事例
- クボタの「無人田植機アグリロボ」事例
- ミズニゴールの「水田除草ロボット」事例
inahoが収穫作業の9割自動化を実現した事例

12秒でアスパラガスを収穫「inaho自動野菜収穫ロボット」がRaaSモデルを展開 | 農業とITの未来メディア「SMART AGRI(スマートアグリ)」
項目 | 内容 |
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企業名 | inaho株式会社 |
業界 | 農業ロボティクス(施設園芸) |
ビフォー | 人手による収穫は1本あたり約12秒・屈伸作業で疲労大 |
アフター | ロボットがAI画像判定→自動刈取。収穫の9割自動化、作業者は監視のみ |
inahoのアスパラガス自動収穫ロボットは、高齢化と季節労働者確保の困難に直面するアスパラガス栽培の救世主として注目されています。従来は人手による収穫で1本あたり約12秒かかり、屈伸作業による疲労が大きな問題でした。
このロボットは、AI視覚判定により収穫適期のアスパラガスを正確に識別し、ロボットアームが傷つけずに把持して自動刈取りを行います。収穫作業の9割を自動化することで、作業者は監視業務のみに集中でき、取り残しもゼロに近づけることができました。RaaS(Robot as a Service)モデルを採用しており、初期費用0円で成果連動課金という導入しやすい料金体系も特徴。スマホで圃場マップを確認し、遠隔停止も可能な利便性の高さから、人件費20〜30%削減で約2年での投資回収を実現しています。
AGRISTがワイヤー走行で人手を半減させた事例

項目 | 内容 |
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企業名 | AGRIST株式会社 |
業界 | 農業ロボティクス(施設果菜) |
ビフォー | 収穫量多い夏季に人手確保が困難。重労働で定着率低い |
アフター | ワイヤー走行ロボットがAIで果実判別→自動切取り・搬送、人手を半分以下に |
AGRISTのピーマンAI収穫ロボットは、ピーマン栽培の労働力不足解決に大きく貢献しています。ピーマンは収穫量の多い夏季に人手確保が特に困難で、重労働のため作業者の定着率も低いという課題がありました。
このロボットの最大の特徴は、地面にレールを敷く必要がないワイヤー走行システムです。泥詰まりリスクを回避しながら、AIが果実を正確に判別して自動で切取り・搬送を行います。24時間遠隔監視が可能で、JA全農での実証実験で収穫実行性が検証されました。18日間レンタルの短期導入プランも用意されており、まずは試験的に導入することも可能。病害早期検知アルゴリズムにより歩留まり向上も実現し、3ヘクタール運用なら2.5年で投資回収できる試算となっています。
ヤンマーが無人走行で労働40%削減を達成した事例

株式会社只野農園 只野 貴士様〈ロボットトラクターYT5113A〉|お客様事例紹介|農業|ヤンマー
項目 | 内容 |
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企業名 | ヤンマーアグリ株式会社 |
業界 | 農機自動運転 |
ビフォー | 1haロータリー耕起に2時間・2名必要 |
アフター | 無人モードで作業者1名→監視のみ。労働時間40%削減、燃費10%向上 |
ヤンマーのロボットトラクターYT5113Aは、高齢経営体の大型圃場拡大による作業ピーク負荷の解決策として開発されました。従来は1ヘクタールのロータリー耕起に2時間・2名の作業者が必要でした。
このロボットトラクターは、GNSS(全球測位衛星システム)とIMU(慣性計測装置)を組み合わせることで、不整形圃場でも直進自律走行が可能です。無人モードでは作業者1名が監視のみを行えばよく、労働時間40%削減と燃費10%向上を実現。水田・畑地両対応のアタッチメント交換機能も備えており、リモート障害診断により稼働率99%を維持しています。国の補助事業対象機として導入コストを半分に抑えることができ、年15万円のサブスクリプション保守サービスも提供されています。
HarvestXが授粉・収穫の80%自動化を実現した事例

項目 | 内容 |
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企業名 | HarvestX株式会社 |
業界 | 施設園芸ロボティクス |
ビフォー | 授粉・摘果・収穫に延べ600h/10a |
アフター | ロボットが24h走行し授粉・収穫の80%を自動化、労務費50%減 |
HarvestXのイチゴ自動授粉・収穫ロボットは、人手不足と高糖度保持の両立という難しい課題に取り組んでいます。従来はイチゴの授粉・摘果・収穫作業に延べ600時間/10アールもの時間を要していました。
このロボットは、AI熟度判定と6DoF(6自由度)ロボットアームによる非接触摘果が特徴で、24時間走行しながら授粉・収穫作業の80%を自動化できます。ミリ波と3Dビジョンを組み合わせることで果実位置の誤差を±2ミリメートル以内に抑え、環境センサーと連携して結露リスクを動的に回避する機能も搭載。成果報酬型RaaSモデルを採用しており、月額8万円/ベンチ30メートルで導入でき、労務費50%削減を実現しています。
クボタが田植時間50%短縮を実現した事例

Agri Robo田植機(8条)|田植機|製品情報|農業ソリューション製品サイト|株式会社クボタ
項目 | 内容 |
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企業名 | 株式会社クボタ |
業界 | 水稲自動移植 |
ビフォー | 1haの田植に2名×1.5h |
アフター | 無人田植+自動施肥で1名監視、時間50%短縮 |
クボタの無人田植機「アグリロボ」は、作付面積拡大に人手が追い付かない大規模農業法人のニーズに応えるソリューションです。従来は1ヘクタールの田植えに2名で1.5時間を要していました。
RTK(リアルタイムキネマティック)測位とジャイロセンサーを組み合わせることで、直進精度2.5センチメートルの高精度無人田植えを実現。作業データは自動的にKSASにアップロードされ、畔際自動停止機能により苗のロスを90%削減しています。2024年には熊本県で10ヘクタールの実証実験が行われ、その効果が確認されました。年間リース料90万円で導入でき、田植え時間を50%短縮することで大幅な労働力削減を可能にしています。
ミズニゴールが作業時間1/10で無農薬率向上を実現した事例

水田の除草作業を効率化! これから活躍が期待できる除草ロボット3選 | AGRI JOURNAL
項目 | 内容 |
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企業名 | 株式会社ミズニゴール |
業界 | 自動除草ロボ |
ビフォー | 手押し除草で10aあたり4h、腰痛リスク大 |
アフター | 自走ロボが水を濁らせ光合成を遮断。作業時間1/10、無農薬率向上 |
ミズニゴールの水田除草ロボットは、有機JAS米わずか0.12%という低い普及率の壁となっている除草コストの課題に取り組んでいます。従来の手押し除草では10アールあたり4時間を要し、腰痛リスクも大きな問題でした。
このロボットは、自走しながら水を濁らせることで雑草の光合成を遮断する仕組みです。GPS搭載により田面形状を自動マッピングし、電池交換式で6時間連続運転が可能。シェアレンタル方式を採用することで小規模農家でも導入しやすくなっており、日額6,000円でレンタルできます。作業時間を1/10に短縮し、無農薬栽培の普及に大きく貢献。2025年モデルからは圃場30センチメートル深水にも対応予定で、さらなる適用範囲拡大が期待されています。
環境負荷低減を実現した農業におけるAI活用事例
持続可能な農業を目指すAI事例をご紹介します。以下の5つの事例を取り上げます。
- NEC × カゴメの「CropScope」事例
- みらいの「完全閉鎖型植物工場」事例
- ソフトバンクの「AI農薬散布ドローン」事例
- KDDI × 飛騨市の「水門遠隔制御」事例
- 富士通の「Akisai温室制御」事例
NEC × カゴメが水・肥料削減と増収を両立した事例

農業DXソリューション「CropScope」による低環境負荷な営農の実現: Vol.76 No.1: グリーントランスフォーメーション特集 ~環境分野でのNECの挑戦~ | NEC
項目 | 内容 |
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企業名 | DXAS (NEC & カゴメ JV) |
業界 | 露地スマート農業プラットフォーム |
ビフォー | 灌水・施肥が経験則に頼り水資源浪費、ばらつき収量 |
アフター | AI助言で水15%・肥料20%削減しながら収量20%増 |
NECとカゴメの合弁会社DXASが開発した「CropScope」は、EU圏の気候変動による水制限厳格化という課題に対応するソリューションです。従来は灌水・施肥を経験則に頼っており、水資源の浪費と収量のばらつきが問題となっていました。
CropScopeでは、衛星データと圃場センサーによる可視化と自動灌水制御を組み合わせることで、水15%・肥料20%削減を実現しながら収量20%増を達成しています。マルチ国語UIにより海外農家も即座に運用でき、リスクスコアによる病害予防で農薬使用量の低減も可能。
ESG指標に活用できる圃場KPIダッシュボードを提供しており、企業の持続可能性報告にも貢献しています。衛星リモートセンシングと気象長期予測モデルを組み合わせたAI技術により、環境負荷低減と生産性向上を同時に実現している事例です。
みらいが水使用量98%削減で日産5万株を実現した事例

「舞台ファーム」が企業と学生・社会人がデータ・AI活用のためにプロジェクトベースで協業──仙台X-TECHイノベーションプロジェクト – TECH PLAY Magazine
項目 | 内容 |
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企業名 | 株式会社みらい |
業界 | 植物工場 |
ビフォー | 天候依存・病害で歩留まり不安定。大量の水を消費 |
アフター | AI環境制御+LEDで水使用量を98%削減しながら日産5万株生産 |
みらいの完全閉鎖型植物工場は、都市部の外食チェーン向け安定供給という課題に対し、環境負荷を大幅に低減しながら大量生産を実現している事例です。従来の露地栽培では天候依存や病害により歩留まりが不安定で、大量の水を消費していました。
この植物工場では、AI環境制御とLED照明を組み合わせることで、水使用量を98%削減しながら日産5万株という大規模生産を実現。クローズドループシステムによりCO₂と水を循環再利用し、光合成最適化アルゴリズムで糖度向上も達成しています。システム全体をクラウドで監視することで遠隔地運用が可能で、ヘッドレスCMS連携により店舗在庫の自動発注も実現。総投資16億円で4年回収を想定しており、持続可能な都市型農業のモデルケースとなっています。
ソフトバンクが散布量30%削減で作業効率化を実現した事例

農薬散布の負担軽減で注目される自動航行ドローンのメリットとは?|ビジネスブログ|ソフトバンク
項目 | 内容 |
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企業名 | ソフトバンク株式会社 |
業界 | ドローン防除サービス |
ビフォー | 背負い散布で10aあたり1L余分に農薬散布 |
アフター | センチメートル測位+AI航路で散布量30%削減・作業時間1/5 |
ソフトバンクのAI農薬散布ドローンは、環境保全型農業への補助金要件である農薬削減ニーズに応えるソリューションです。従来の背負い式散布では10アールあたり1リットル余分に農薬を散布してしまう問題がありました。
このシステムでは、クラウドRTK「ichimill」による センチメートル測位とAI航路制御を組み合わせることで、散布量30%削減と作業時間1/5短縮を同時に実現。斜面果樹園でも高度自動追従が可能で、ドローンログを自治体へオンライン提出する機能も備えています。散布後のNDVI(正規化植生指数)変化を即座にレポートすることで、散布効果の可視化も可能。年間サブスクリプション12万円/機という導入しやすい価格設定で、農薬使用量削減と作業効率化を両立しています。
KDDI × 飛騨市が水使用量20%減で作業7割削減を実現した事例

岐阜県飛騨市 スマート農業システムの実証事業 | 地域共創 (Te to Te) | KDDI株式会社
項目 | 内容 |
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企業名 | KDDI株式会社 |
業界 | 水管理スマート化 |
ビフォー | 水見回りが総労働時間の50%。過剰灌水による肥料流出 |
アフター | センサー+AIで水門遠隔制御。作業7割削減、水使用量20%減 |
KDDI と飛騨市の連携による水田センサー&自動水門システムは、担い手不足と水資源制限という二重の課題に取り組んでいます。従来は水見回りが総労働時間の50%を占め、過剰灌水による肥料流出も環境負荷となっていました。
このシステムでは、LPWA(低電力広域)通信により山間部10キロメートルの長距離伝送を実現し、センサーとAIによる水門遠隔制御を可能にしています。スマホで水位・温度をリアルタイム確認でき、AIが天候予測と連動して自動開閉を行います。さらに農業ダムの放流量と連携することで、流域全体の水管理を最適化。作業7割削減と水使用量20%削減を実現し、1圃場あたり機器・通信費約25万円で導入できます。
富士通のAkisaiが燃料・水15%削減で品質向上を実現した事例

20130705_PlantFactoryTaiwan2013.pdf
項目 | 内容 |
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企業名 | 富士通株式会社 |
業界 | 施設園芸ICT |
ビフォー | 温室機器が個別制御、過加温で燃料・水ロス |
アフター | クラウドSaaSが気象連動で機器制御、水・燃料15%削減 |
富士通の「Akisai」は、燃油高騰とカーボンニュートラル政策という課題に対応する温室環境制御システムです。従来は温室機器が個別制御されており、過加温による燃料・水のロスが発生していました。
AkisaiのクラウドSaaSは、UECS(ユビキタス環境制御システム)準拠の環境制御ボックスとスマホ操作を組み合わせ、気象データと連動した最適制御を実現。温室CO₂濃度の自動最適化により品質8%向上も達成しています。タブレット操作のみで遠隔管理が可能で、API連携により第三者の環境AIとの相互補完も実現。初期費用80万円から、SaaS月額5,000円/棟という導入しやすい価格設定で、水・燃料15%削減と品質向上を両立しています。
サプライチェーン価値向上を実現した農業におけるAI活用事例
流通・販売の効率化や付加価値向上を目指すAI事例をご紹介します。以下の4つの事例を取り上げます。
- ファームノートの「Farmnote Color」牛用ウェアラブルAI事例
- オイシックス・ラ・大地の「AI需要予測」事例
- ISIDの「SMAGtブロックチェーン」事例
- 日立システムズの「青果サプライチェーンサービス」事例
ファームノートが発情検知95%で繁殖ロス30%減を実現した事例

項目 | 内容 |
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企業名 | 株式会社ファームノート |
業界 | 畜産ICT |
ビフォー | 発情・分娩の見逃しで受胎率低迷。データは紙台帳 |
アフター | AIが行動データを解析し発情検知率95%。繁殖ロス30%減、出荷計画を前倒し共有 |
ファームノートの「Farmnote Color」は、畜産業界で強化される内臓脂肪規制による品質証明需要の高まりに対応したウェアラブルAIシステムです。従来は発情・分娩の見逃しにより受胎率が低迷し、データ管理も紙台帳に依存していました。
このシステムでは、牛に装着したウェアラブルデバイスが行動データを24時間モニタリングし、AIが解析することで発情検知率95%を実現。繁殖ロスを30%削減し、出荷計画の前倒し共有も可能になりました。クラウド牛群管理によりトレーサビリティ情報を自動生成し、IoTゲートウェイで電波不感地もカバー。牛一頭あたり年間7時間の見回り削減も実現し、月額180円/頭という低コストで導入できます。畜産クラスター事業の補助金対象でもあり、持続可能な畜産経営を支援しています。
オイシックス・ラ・大地がフードロス25%減を実現した事例

#365「賞味期限の常識を覆す — データで見える”本当の鮮度”が食品ロスを40%削減」(探求爆発デイズ#73)|久米村隼人@DATAFLUCT代表
項目 | 内容 |
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企業名 | オイシックス・ラ・大地株式会社 |
業界 | EC生鮮流通 |
ビフォー | 発注は担当者経験。欠品と廃棄が共存 |
アフター | AI需要予測で発注精度30%向上、フードロス25%減 |
オイシックス・ラ・大地のAI需要予測システムは、SDGs評価と原価高騰という課題の同時解決を目指した取り組みです。従来は担当者の経験に基づく発注により、欠品と廃棄が同時に発生するという矛盾した状況が続いていました。
このシステムでは、品種別・地域別の需要を3か月先まで推測することで、発注精度30%向上とフードロス25%減を実現。欠品率も1/3に低減し、在庫回転率15%向上も達成しています。TensorFlowの時系列モデルとAutoMLを活用したAI技術により、CO₂排出量レポートをIR開示に活用することも可能。生鮮食品のEC流通において、環境負荷低減と経営効率化を両立した先進事例となっています。
ISIDがブロックチェーンで生産者収益12%増を実現した事例

ブロックチェーン技術で地域農産品の生産履歴と取引状況を可視化する、 スマート農業データ流通基盤「SMAGt」を開発(2020年01月07日) | ニュースリリース | 電通総研
項目 | 内容 |
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企業名 | 株式会社電通国際情報サービス(ISID) |
業界 | 農産物データ流通基盤 |
ビフォー | 有機野菜の履歴管理は紙。ブランド価値伝達が困難 |
アフター | 生産〜販売履歴をBC+AI解析で可視化。生産者収益12%増・偽装ゼロ |
ISIDの「SMAGt」ブロックチェーン+AIトレーサビリティシステムは、有機JAS取得コストとエビデンス要求の高まりという課題に取り組んでいます。従来は有機野菜の履歴管理が紙ベースで行われ、ブランド価値の伝達が困難でした。
このシステムでは、生産から販売までの履歴をブロックチェーンとAI解析で可視化し、生産者収益12%増と偽装ゼロを実現。宮崎県綾町でスマート農業モデルを構築し、QRコードスキャンで消費者が履歴を確認できる仕組みを提供しています。AIが需要トレンドを解析して販促提案を行い、他アプリ連携用APIも無償公開。自治体モデルでの導入費は5,000万円ですが、有機農産物の付加価値向上と消費者信頼の確保を同時に実現しています。
日立システムズが廃棄15%減・納期25%短縮を実現した事例

項目 | 内容 |
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企業名 | 株式会社日立システムズ |
業界 | 青果流通SaaS |
ビフォー | 産地〜小売の在庫・品質情報が分断。欠品とロスが並存 |
アフター | AIが需給・品質を解析し発注自動化。納期短縮25%、廃棄15%減 |
日立システムズの「青果サプライチェーンサービス」は、“見える化”要求とESG調達基準という課題に対応したソリューションです。従来は産地から小売までの在庫・品質情報が分断されており、欠品とロスが同時に発生していました。
このシステムでは、小売・農家・卸業者がリアルタイムで情報共有する共通クラウドを構築し、AIが需給・品質を解析して発注を自動化。納期短縮25%と廃棄15%減を同時に実現しています。GLOBAL G.A.P.対応履歴の自動付与機能や、物流ルート最適化によるCO₂ 10%削減も実現。”買い取り保証”契約のシステム化により、生産者の経営安定化にも貢献し、月額利用料8万円/店舗で導入できます。青果流通全体の効率化と持続可能性を両立した先進事例です。
農業AI導入プロジェクトを成功に導く5つのステップ

「どうやってプロジェクトを進めれば失敗しない?」という疑問に答えるため、農業AI導入の成功ステップを整理しました。以下の5つのステップに沿って進めることで、失敗リスクを最小化できます。
現状課題の棚卸しで導入目的を明確化
農業AI導入の第一歩は、現状の課題を具体的に洗い出すことです。「人手不足で困っている」「収量が安定しない」といった漠然とした課題ではなく、「収穫作業に月100時間かかっている」「病害による損失が年間売上の15%」など、数値で表現できる課題を特定しましょう。
課題の棚卸しでは、経営者だけでなく現場作業者からもヒアリングを行うことが重要です。実際の作業フローや困りごとを詳しく聞き取ることで、AIで解決すべき本当の課題が見えてきます。

この段階で課題を明確にすることで、適切なAIソリューションの選択が可能になります。
PoCで小規模実証から始める
本格導入の前に、PoC(Proof of Concept:概念実証)として小規模な実証実験を行うことを強く推奨します。圃場の一部分や特定の作業に限定してAIシステムを試用し、期待した効果が得られるかを検証しましょう。
PoCでは、システムの性能だけでなく、現場での使いやすさや作業フローへの影響も確認できます。3か月程度の短期間で実施し、結果を踏まえて本格導入の可否を判断することで、大きな投資リスクを回避できます。

多くのAIベンダーがPoC向けのプランを用意しているため、積極的に活用しましょう。
データ収集体制を事前に整備
AIシステムの効果を最大化するには、質の高いデータを継続的に収集する体制が不可欠です。導入前に、誰がいつどのようにデータを収集するかを明確に決めておきましょう。センサーデータの自動収集だけでなく、現場での目視確認や手動入力が必要なデータもあります。
データ収集作業が現場スタッフの負担にならないよう、シンプルで効率的な仕組みを構築することが大切です。スマートフォンアプリを活用した簡単な入力方法や、既存の作業フローに組み込める収集方法を検討しましょう。

継続可能な体制を整えることが成功の鍵となります。
信頼できるパートナーを慎重に選定
農業AI導入では、技術提供だけでなく農業現場への理解が深いパートナーを選ぶことが重要です。単にシステムを販売するだけでなく、導入から運用まで一貫してサポートしてくれるベンダーを選びましょう。
パートナー選定では、同じような規模・作物での導入実績があるか、現場訪問による丁寧なヒアリングを行うか、導入後のサポート体制が充実しているかを重点的に確認します。

将来的な機能拡張やシステム連携についても相談できる、長期的な関係を築けるパートナーを選ぶことが大切です。
効果測定指標を事前に設定
AI導入の成功を客観的に評価するため、具体的な効果測定指標を事前に設定しましょう。「作業時間○%削減」「収量○%向上」「コスト○円削減」など、数値で測定できる指標を定めることで、投資対効果を明確に把握できます。
効果測定では、AI導入前のベースラインデータを正確に把握しておくことが重要です。また、季節変動や外的要因の影響を考慮して、適切な比較期間を設定することも必要。

定期的に指標をモニタリングし、期待した効果が得られない場合は早めに改善策を検討することで、確実な成果につなげられます。
農業AI導入で注意すべき5つの落とし穴
農業AI導入時によくある失敗パターンを事前に把握し、対策を講じることが重要です。以下の5つの注意点を押さえることで、スムーズな導入を実現できます。

データ品質の確保で正確な分析結果を得る
農業AIの精度は、投入するデータの品質に大きく依存します。不正確なデータや欠損の多いデータを使用すると、AIの判断が間違ってしまい、期待した効果が得られません。センサーの定期的な校正、データ入力のダブルチェック、異常値の除去など、データ品質を維持する仕組みを構築しましょう。
特に注意が必要なのは、センサーの汚れや故障による測定エラーです。圃場環境では土埃や水滴がセンサーに付着しやすく、正確な測定を阻害する場合があります。

定期的な清掃・点検スケジュールを立て、データの信頼性を確保することが重要です。
現場スタッフの理解と協力を得る
AIシステムを導入しても、現場スタッフが使いこなせなければ効果は期待できません。導入前に十分な説明を行い、AIがどのように作業を支援するかを具体的に示すことで、スタッフの理解と協力を得ることが大切です。
特に年配のスタッフにとって、新しい技術への適応は負担となる場合があります。操作研修の実施、マニュアルの整備、質問しやすい環境づくりなど、現場に寄り添ったサポート体制を構築しましょう。

AIに置き換わるのではなく、人の判断を支援するツールであることを強調し、不安を軽減することも重要です。
法規制と補助金要件への適合性を確認
農業分野では、農薬使用や食品安全に関する法規制が厳しく定められています。AIシステムが提案する管理方法が、これらの法規制に適合しているかを必ず確認しましょう。特に有機栽培や特別栽培農産物の認証を受けている場合は、認証要件との整合性も重要な確認ポイントです。
また、農業AI導入には国や自治体の補助金を活用できる場合があります。スマート農業実証プロジェクトや農業DX推進事業など、対象となる補助事業の要件を事前に確認しましょう。

申請手続きを適切に行うことで導入コストを大幅に削減できます。
安定した通信インフラを確保
農業AIシステムの多くはクラウドサービスを利用するため、安定したインターネット接続が不可欠です。山間部や離島など、通信環境が不安定な地域では、システムが正常に動作しない可能性があります。導入前に圃場での通信状況を詳しく調査し、必要に応じて通信設備の増強を検討しましょう。
5G、LPWA(低電力広域ネットワーク)、衛星通信など、様々な通信手段があります。使用するAIシステムの通信要件と圃場の立地条件を照らし合わせ、最適な通信方法を選択することが重要です。

また、通信障害時のバックアップ手段も事前に準備しておくと安心です。
セキュリティとプライバシー保護を徹底
農業AIシステムでは、生産データや経営情報など、機密性の高い情報を扱います。外部への情報漏洩や不正アクセスを防ぐため、適切なセキュリティ対策を講じることが必要です。データの暗号化、アクセス権限の管理、定期的なセキュリティ監査など、多層防御の仕組みを構築しましょう。
また、個人情報保護法やGDPR(EU一般データ保護規則)など、データ保護に関する法規制への対応も重要です。特に海外展開を考えている農場では、各国の法規制を事前に確認し、適切なデータ管理体制を整備することが必要です。

ベンダー選定時には、セキュリティ認証の取得状況や過去のセキュリティ事故の有無も確認ポイントとなります。
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