AI-OCRの活用事例15選！工数削減やペーパーレス化、ミス防止など

AI-OCR（人工知能による文字認識技術）は、紙の書類をデジタルデータに変換する際の精度と効率を飛躍的に向上させる技術です。従来のOCR技術と比べて、手書き文字や複雑なレイアウトの書類も高精度で読み取れるため、多くの企業が業務改善のために導入を進めています。

本記事では、実際にAI-OCRを導入した企業の事例を、効果別に分類してご紹介します。工数削減、ペーパーレス化、ミス防止、コスト削減など、様々な観点から成果を上げた実例を通じて、AI-OCR導入の具体的なメリットを解説いたします。

以下の記事ではAIの活用事例を網羅的にまとめています。ぜひ合わせてご覧ください。

業務工数・処理時間を大幅削減した事例

以下の5つの企業事例をご紹介します：

• デジタル・クリエイティブ・ネットが請求書処理時間を90%削減した事例
• 日本ガス株式会社が帳票入力時間を90%短縮した事例
• リカ・インターナショナルが注文書処理の属人化を解消した事例
• 安田倉庫株式会社が輸出入帳票処理を50%効率化した事例
• 太陽油脂株式会社がFAX注文処理時間を月80時間削減した事例

デジタル・クリエイティブ・ネットが請求書処理時間を90%削減した事例

SmartRead×RPAで請求書処理を完全自動化！経理業務の時間は毎月わずか3時間に｜SmartRead

項目	内容
企業名	デジタル・クリエイティブ・ネット
業界	IT／レンタルスタジオ
ビフォー	請求書処理に毎月30時間
アフター	3時間に短縮（90%削減）

デジタル・クリエイティブ・ネットでは、従来使用していたOCRシステムの精度不足と操作性の問題に悩まされていました。特に請求書処理において、手作業による確認作業が多く発生し、月30時間もの作業時間を要していたのが課題でした。

同社はAI-OCRの導入により、RPAツールとの連携を強化。請求書の読み取りから仕訳処理まで完全自動化を実現しました。その結果、月30時間かかっていた処理時間を3時間まで短縮し、90%の大幅な工数削減を達成。

さらに、属人化していた業務を標準化することで、担当者不在時でも業務が滞らない体制を構築しています。精度重視での製品選定により、確認作業の手間も大幅に削減されています。

日本ガス株式会社が帳票入力時間を90%短縮した事例

AI-OCRを活用して作業人員はそのままに業務時間を5分から30秒に大幅削減！

項目	内容
企業名	日本ガス株式会社
業界	ガス／インフラ
ビフォー	帳票入力1件5分
アフター	1件30秒（約90%削減）

インフラ業界のリーディングカンパニーである日本ガス株式会社では、各種帳票の手入力作業に大きな時間を費やしていました。1件あたり平均5分を要していた帳票入力は、事務作業の大きな負担となっていました。

AI-OCR導入後は、1件あたりの処理時間を30秒まで短縮することに成功。約90%の時間削減を実現しています。同社の導入事例では、汎用的な帳票に対する高い適用性も確認されており、大手企業における実績として業界内でも注目を集めています。この効率化により、従業員はより付加価値の高い業務に時間を配分できるようになりました。

リカ・インターナショナルが注文書処理の属人化を解消した事例

コスト90％削減！スマートOCRだけがFAXでの受注事務をまるごと自動化できた｜導入事例｜AI-OCRのスマートOCR

項目	内容
企業名	リカ・インターナショナル
業界	卸売／美容
ビフォー	注文書入力に月33時間／拠点
アフター	自動化で工数削減

美容関連の卸売業を営むリカ・インターナショナルでは、取引先からの注文書フォーマットが多様化しており、入力作業の属人化が深刻な問題となっていました。各拠点で月33時間もの時間を注文書の目視確認と手入力に費やしており、業務効率の改善が急務でした。

AI-OCRの導入により、様々なフォーマットの注文書を自動判別する機能を活用。これまで特定の担当者に依存していた業務を標準化し、誰でも対応可能な体制に変革しました。月33時間の工数削減とともに、ナレッジの共有化も促進。属人化解消により、業務の継続性とリスク管理の両面で大きな改善効果を得ています。

安田倉庫株式会社が輸出入帳票処理を50%効率化した事例

通関業務における大口の申告書類作成の工数を約50％削減！お客様の輸出入を迅速に対応！｜導入事例｜AI-OCR対応のスマートOCR

項目	内容
企業名	安田倉庫株式会社
業界	物流・通関業務
ビフォー	輸出入帳票手入力で多大な工数
アフター	50%工数削減

物流・通関業務を手がける安田倉庫株式会社では、B/L（船荷証券）やインボイスなど複雑な輸出入帳票の処理に膨大な人手を要していました。特に大口案件では、帳票処理の負担が業務全体のボトルネックとなっていました。

AI-OCR導入により、輸出入帳票に特化した読み取り機能を活用。従来の手入力作業を大幅に自動化し、50%の工数削減を達成しました。同時に、人手による入力ミスの削減も実現し、通関業務の精度向上にも貢献。処理スピードの向上により、顧客サービスの質も向上しています。物流業界特有の複雑な帳票にも対応できる汎用性の高さが評価されています。

太陽油脂株式会社がFAX注文処理時間を月80時間削減した事例

FAX受注業務にて約80時間の工数削減に成功！他社と比較してユーザーインターフェースが明快 ｜導入事例｜AI-OCR対応のスマートOCR

項目	内容
企業名	太陽油脂株式会社
業界	製造業（食品・油脂）
ビフォー	FAX注文入力に月80時間超
アフター	月80時間削減

食品・油脂製造業の太陽油脂株式会社では、取引先からのFAX注文の処理に月80時間を超える作業時間を要していました。大量のFAX注文を手入力で処理することによる業務負荷が、従業員の大きな負担となっていました。

AI-OCRの導入により、FAX帳票の読み取りに最適化されたシステムを構築。月80時間の処理時間削減を実現し、従業員の業務負荷を大幅に軽減しました。大量受注時でも処理遅れが発生しない安定したオペレーションを確立。

製造業における受注業務の効率化事例として、同業他社からも注目を集めています。FAX特有の画質の問題にも対応できる高精度な読み取り機能が導入成功の鍵となりました。

ペーパーレス化・スペース削減を実現した事例

以下の2つの自治体事例をご紹介します：

• 板橋区が全庁的なペーパーレス化を迅速導入した事例
• 東京都三鷹市が職員負担軽減とワークライフバランス改善を実現した事例

板橋区が全庁的なペーパーレス化を迅速導入した事例

AI-OCR LGWAN-ASPサービス導入事例：板橋区様：株式会社日立システムズ

項目	内容
企業名	板橋区
業界	官公庁・自治体
ビフォー	全庁的紙処理（手作業）
アフター	LGWANクラウドで電子化実現

板橋区では、区役所全体で扱う大量の紙帳票を手作業でデジタル化する作業に多大な労力を費やしていました。紙からデジタルへの変換作業における人的負担の大きさと、システム改修にかかるコストが大きな課題となっていました。

同区はLGWAN-ASP（自治体専用ネットワーク対応クラウドサービス）に対応したAI-OCRシステムを導入。セキュリティを確保しながら、全庁的なペーパーレス化を実現しました。約1か月の実証実験を経て、2023年7月から正式運用を開始するという迅速な導入を達成。

職員向けの操作レクチャーと試用期間を設けることで、導入時の障壁を最小限に抑制しています。全庁展開という大規模なデジタル化プロジェクトでありながら、半年以内という短期間での本格運用開始は、他の自治体にとっても参考となる成功事例です。

東京都三鷹市が職員負担軽減とワークライフバランス改善を実現した事例

AI-OCR・実施事例【自治体事例の教科書】 | 自治体通信Online

項目	内容
企業名	東京都三鷹市
業界	自治体
ビフォー	入園申請書手入力（負担大）
アフター	AI-OCR＋RPAで自動化、時間削減（数値非公表）

東京都三鷹市では、保育園の入園申込書処理において職員の手入力負担が深刻な問題となっていました。6月26日から7月31日という限られた期間に集中する申込書処理により、職員が長時間労働を強いられる状況が続いていました。

市はAI-OCRとRPA（ロボティック・プロセス・オートメーション）を組み合わせた実証実験を実施。入園申込書の自動読み取りから処理まで一貫した自動化を実現しました。この取り組みにより、従来職員が手入力作業に注力していた時間を市民サービスの向上に再配分することが可能になりました。

さらに、職員のワークライフバランス改善を明確な目的として設計されており、働き方改革の観点からも注目される事例となっています。市民サービスの質向上と職員の労働環境改善を同時に実現した先進的な取り組みです。

ヒューマンエラー・ミス防止を実現した事例

以下の2つの企業事例をご紹介します：

• 日本化学産業がFAX受注のミス削減とテレワーク実現を達成した事例
• 兼松ロジスティクス＆インシュアランスが手書き帳票処理の精度向上を実現した事例

日本化学産業がFAX受注のミス削減とテレワーク実現を達成した事例

AI-OCRの導入事例10選をご紹介！情報管理と分析を効率化しよう | GMOサインブログ | 電子契約ならGMOサイン

項目	内容
企業名	日本化学産業
業界	製造業
ビフォー	FAX受注手入力で属人化、ミス多発
アフター	自動化、ミス削減、テレワーク実現

日本化学産業株式会社では、受注の約70%をFAXで処理していましたが、これらを手入力で対応することにより様々な問題が発生していました。特定の担当者に依存する属人化、手入力による入力ミスの多発、そして紙ベースの業務によりテレワークが困難という三重の課題を抱えていました。

AI-OCRの導入により、FAX受注処理の完全自動化を実現。手書き文字や複雑なレイアウトのFAX注文書も高精度で読み取ることが可能になり、入力ミスを大幅に削減しました。また、デジタル化により業務の標準化が進み、属人化の解消にも成功。

さらに、紙ベースの制約がなくなったことで、従業員のテレワーク勤務も可能になりました。製造業におけるデジタル化とワークスタイル変革を同時に実現した先進事例として、業界内でも高く評価されています。

兼松ロジスティクス＆インシュアランスが手書き帳票処理の精度向上を実現した事例

保険事業と物流事業、２部門でスマートOCRを導入。手書き書類の処理時間を50％削減できた｜導入事例｜AI-OCRのスマートOCR

項目	内容
企業名	兼松ロジスティクス＆インシュアランス
業界	保険・物流
ビフォー	手書き帳票で業務遅延
アフター	データ化で処理時間50%削減

兼松ロジスティクス＆インシュアランス株式会社では、保険業務と物流業務において大量の手書き書類を処理する必要がありました。手書き文字の判読に時間がかかり、さらに読み間違いによるミスが頻発することで、業務全体の遅延が慢性化していました。

AI-OCRの導入により、手書き帳票の読み取り精度が飛躍的に向上。従来は人の目で判読していた複雑な手書き文字も、システムが高精度で認識できるようになりました。その結果、処理時間を50%削減すると同時に、人的ミスによる業務遅延も解消。

保険・物流という複数業界にまたがる業務に対応できる汎用性も確認され、全社的な業務改革に大きく貢献しています。手書き文字特有の個人差や癖にも対応できるAI技術の進歩を実証した事例として注目されています。

コスト削減・ROI向上を実現した事例

以下の3つの事例をご紹介します：

• 四電工が建設見積業務の効率化で営業力向上を実現した事例
• PFU DynaEyeが多業界で30〜80%の時間削減を達成した事例
• 医療機関が診療記録処理の品質向上とコスト削減を実現した事例

四電工が建設見積業務の効率化で営業力向上を実現した事例

積算業務における入力作業の時間が半分以下に。会社全体で活用し業務改革を実現したい｜導入事例｜AI-OCRのスマートOCR

項目	内容
企業名	四電工
業界	建設業
ビフォー	見積業務が手作業で非効率
アフター	自動化で見積作成時間50%削減

建設業界の株式会社四電工では、積算業務における見積書作成が完全に手作業で行われており、多大な時間とコストを要していました。建設業特有の複雑な見積フォーマットと計算工程により、1件の見積作成に長時間を要することが業務効率化の大きな障害となっていました。

AI-OCR導入により、見積書入力の自動化を実現。建設業界特有の複雑な見積フォーマットにも対応できるシステムを構築し、見積作成時間を50%削減することに成功しました。この効率化により創出された時間は営業活動に再配分され、受注機会の拡大にも貢献。

さらに、積算部門での成功を受けて、自動化の効果が営業部門にも波及しています。建設業界におけるデジタル化の先進事例として、同業他社からも注目を集めており、業界全体のDX推進に寄与しています。

PFU DynaEyeが多業界で30〜80%の時間削減を達成した事例

AI-OCRを活用した業務効率化の事例紹介 | DynaEye 11

項目	内容
企業名	PFU DynaEye（複数自治体・保育園・製造業）
業界	公共・製造・保育
ビフォー	手書き帳票・日報処理に多大な時間
アフター	書類処理時間30〜80%削減

PFU社のDynaEyeは、自治体、保育園、製造業など多様な業界で導入され、それぞれの現場で大幅な時間削減を実現しています。手書きの申請書、日報、各種非定型帳票の処理に多大な時間を要していた各組織において、処理効率の向上が急務でした。

同システムの導入により、各業界で30〜80%という大幅な時間削減を達成。自治体では母子保健業務や給付金処理、保育園では入園申請業務、製造業では日報処理など、それぞれの業界特有のフォーマットに対応した高精度な読み取りを実現しています。

特に手書き文字の認識精度の高さが評価されており、即日対応が可能になった事例も報告されています。多業界での豊富な導入実績により、様々な業務形態に適応できる汎用性の高さが実証されており、ROI（投資対効果）の観点からも高く評価されています。

医療機関が診療記録処理の品質向上とコスト削減を実現した事例

AI OCR導入事例から見る業務プロセス改善方法【業種ごとに解説】

項目	内容
企業名	JMIP／大阪大学病院／北里大学病院
業界	医療機関
ビフォー	診療記録・調剤の手書き処理負担
アフター	自動読み取りで工数削減、品質向上

大阪大学病院、北里大学病院をはじめとする医療機関では、手書きの診療記録や調剤記録の処理に多大な人的リソースを投入していました。医療現場特有の専門用語や略語、さらには医師の手書き文字の判読に時間を要し、人的ミスのリスクも抱えていました。

JMIP（日本医療機能評価機構）との官民連携により、医療現場に特化したAI-OCRシステムを導入。診療記録やレセプト（診療報酬明細書）の自動読み取りを実現し、大幅な工数削減を達成しました。同時に、人的な読み間違いによるミスも削減され、医療記録の品質向上にも貢献。

大学病院という高度医療機関での導入実績により、システムの信頼性と精度が実証されています。医療現場特有のフォーマットや専門用語にも対応できる特化型AIの開発により、医療業界全体のデジタル化推進に大きな影響を与えている先進事例です。

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AI-OCRの導入効果

AI-OCRを導入することで、企業はどの程度の効果を期待できるのでしょうか。以下の3つの観点から、導入による具体的な効果を解説します：

コスト削減効果は人件費の大幅圧縮

AI-OCRの導入により、最も大きなコスト削減効果が期待できるのは人件費の圧縮です。前述の事例では、デジタル・クリエイティブ・ネットが月30時間から3時間への削減、太陽油脂が月80時間の削減を実現しています。

仮に時給2,000円の事務スタッフが担当していた場合、月80時間の削減は月16万円のコスト削減に相当。年間では約200万円近い人件費削減効果となります。

工数削減効果は50%から90%の大幅短縮

事例分析から見えてくる工数削減効果は、業務内容により50%から90%という大幅な短縮が可能です。日本ガスの帳票入力では90%削減（5分→30秒）、安田倉庫の輸出入帳票処理では50%削減を達成しています。削減効果の幅は、取り扱う書類の種類や業務の複雑さによって変動します。

導入ROIは1年以内での回収が一般的

前述の事例企業の多くが、導入から1年以内での投資回収を実現しています。四電工の見積業務では50%の時間短縮により営業効率が向上し、売上増加にも貢献。兼松ロジスティクス＆インシュアランスでは処理時間50%削減により、顧客対応品質の向上も実現しています。

ただし、ROI（投資対効果）の算定には、システム導入費用だけでなく運用保守費用や従業員の教育コストも含めて検討することが重要。

AI-OCR導入を成功させるポイント

AI-OCRの導入を成功に導くためには、技術的な側面だけでなく組織運営の観点からも適切な準備が必要です。以下の4つのポイントを押さえることで、導入リスクを最小化できます：

業務フローの見直しが導入成功の鍵

AI-OCR導入前に、現在の業務フローを詳細に分析することが重要です。デジタル・クリエイティブ・ネットの事例では、RPAとの連携を前提とした業務設計により、請求書から仕訳まで完全自動化を実現しました。

単純にOCRツールを導入するだけでなく、前後の業務工程も含めて最適化を検討することが成功のポイント。どの業務を自動化し、どの部分で人の判断を残すかを明確に定義することで、効果的なシステム活用が可能になります。

現場スタッフの合意形成が継続運用の基盤

板橋区の事例では、職員向けの操作レクチャーと試用期間を設けることで、導入時の障壁を最小限に抑制しました。現場スタッフの理解と協力なしには、どれほど優秀なシステムでも継続的な運用は困難です。

導入前の段階から現場の声を聞き、システムへの不安や疑問を解消することが重要。三鷹市の事例のように、職員のワークライフバランス改善という明確なメリットを示すことで、現場の協力を得やすくなります。

テスト導入による段階的なリスク軽減

いきなり本格運用を開始するのではなく、小規模なテスト導入から始めることで、システムの適合性を確認できます。板橋区では約1か月の実証実験を経て本格運用に移行し、PFU DynaEyeの事例では即日対応が可能になるまでシステムを最適化しています。

テスト期間中に読み取り精度の検証、業務フローの調整、スタッフの習熟度向上を図ることが重要になります。

ベンダー選定は自社業務との適合性を重視

デジタル・クリエイティブ・ネットの事例では、UI（操作画面）の使いやすさと精度を重視してベンダーを選定し、乗り換えに成功しています。価格だけでなく、自社の業務特性に適したシステムを選択することが重要です。

安田倉庫のように輸出入帳票に特化した機能が必要な場合や、太陽油脂のようにFAX処理に最適化されたシステムが必要な場合など、業界特有の要件に対応できるかを慎重に評価。

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