建築・建設業界におけるAI活用事例20選!施工効率や安全管理に貢献

建築業界では人手不足や働き方改革、脱炭素への対応が急務となる中、AI(人工知能)技術の導入が急速に進んでいます。本記事では、日本の主要建設会社や関連企業が実際に導入し、具体的な成果を上げているAI活用事例を20件厳選してご紹介。

施工効率の向上から安全管理の強化、設計業務の最適化、維持管理コストの削減まで、建築プロジェクトの全工程にわたる革新的な取り組みを分かりやすく解説します。

なお、以下の記事ではAIの活用事例を網羅的に取り上げています。ぜひ合わせて参考にしてみてください。

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目次

施工効率を大幅向上した事例

この分野では以下の5つの事例をご紹介します。

  • 鹿島建設のAI×ドローン資機材管理システム
  • 竹中工務店とプライムライフテクノロジーズのAI配筋検査システム
  • 大成建設の自律鉄筋結束ロボット
  • 大成建設のAI打継面評価技術
  • コマツのスマートコンストラクション技術

鹿島建設がドローンとAIで資機材管理を75%効率化した事例

AIとドローンによる新たな資機材管理システムで作業時間を75%削減 | プレスリリース | 鹿島建設株式会社

項目内容
企業名鹿島建設
業界ゼネコン(総合建設)
ビフォー資機材の所在確認を作業員が徒歩で巡回(約120分/回)
アフタードローン空撮+AI画像認識で30分に短縮(75%削減)

鹿島建設では、広大な河川工事現場で散在する資機材の管理に課題を抱えていました。従来は作業員が徒歩で現場を巡回し、資機材の位置や在庫を確認していたため、1回あたり約120分もの時間を要していました。この作業は安全パトロールとも重複し、残業の要因となっていたのです。

そこで同社はAI insideと共同開発したシステムを導入。ドローンによる空撮とAI画像認識技術を組み合わせることで、資機材の自動検出を実現しました。BIM(建築情報モデリング)の3Dモデルと連携し、発見した資機材の位置を自動的にマッピング。モバイル回線経由でクラウド解析を行うため、現場でも即座に結果を閲覧できます。

この革新的なシステムにより、従来120分かかっていた作業がわずか30分に短縮され、75%の大幅な効率化を達成しました。さらに3Dモデル上で履歴比較が可能となり、資機材紛失リスクも低減。国交省のPRISM(革新的技術導入プロジェクト)2022年度採択技術としても認められ、2025年度以降は鉱山・プラント現場への横展開を計画しています。

竹中工務店が配筋検査システムで60%の時間短縮を実現した事例

AIで配筋検査するシステム「CONSAIT(コンサイト)」の活用事例について|深堀り取材【毎月更新】 – BuildApp News

項目内容
企業名竹中工務店/プライムライフテクノロジーズ
業界ゼネコン/建設DXサービス
ビフォー配筋検査を人手+巻尺+帳票作成で実施(1フロアあたり約8時間)
アフターAIカメラとクラウド照合で検査・帳票を自動化し60%時間短縮

建設現場において、鉄筋の配置が設計図通りになっているかを確認する配筋検査は、品質管理上極めて重要な工程です。しかし竹中工務店では、この作業を人手で行っていたため、1フロアあたり約8時間という長時間を要していました。職人・監督の高齢化により検査要員不足も顕在化し、検査結果を紙帳票に転記する二重業務が残業の要因となっていました。

この課題を解決するため、同社はプライムライフテクノロジーズと共同で「CONSAIT(コンサイト)」を開発。ゼネコン21社協議会での共同開発により、業界標準仕様を目指しました。専用の「CONSAIT Eye」カメラが3分毎に自動撮影を行い、撮影画像は即座にクラウドで解析されます。BIMデータと連携した自動判定により、検査結果はCSVやPDF形式で自動生成され、電子押印にも対応。

この革新により検査時間を60%短縮し、検査帳票の作成業務も完全自動化を実現しました。ゼネコン横断での仕様統一により、全国40現場以上への展開を見込んでおり、2024年11月には工程内検査機能を追加して一般提供を開始しています。

大成建設が自律鉄筋結束ロボットで作業効率を20%向上した事例

自律型鉄筋結束ロボット「T-iROBO Rebar」を開発 | 大成建設株式会社

項目内容
企業名大成建設
業界ゼネコン/建設ロボティクス
ビフォー鉄筋結束(配筋全体の20%)を熟練工が手作業、負担大
アフターロボが自動走行し結束、作業全体で10–20%効率向上

鉄筋コンクリート造の建物では、鉄筋同士を針金で結束する作業が必要です。この鉄筋結束作業は配筋全体の約20%を占める重要な工程ですが、熟練工による手作業に依存していました。高齢技能者への依存と若手不足により工程遅延リスクが高まり、さらに手結束作業は腰痛などの労災リスクも抱えていました。

大成建設が開発した「T-iROBO Rebar」は、この課題を自動化で解決する自律鉄筋結束ロボットです。レーザー画像で鉄筋の交点を認識し、正確にワイヤ結束を行います。20kgの軽量機体には4輪と平行リンク機構を搭載し、凹凸のある配筋上でも安定走行が可能。ロボットが作業している間、作業員は他の業務を並行して行えるため、工程の圧縮効果も実現しています。

2018年以降30現場に導入し、継続的な仕様改良を実施。労務費換算で1日あたり約1.5人分の削減効果があり、作業全体で10–20%の効率向上を達成しました。人手不足と労働安全の両方の課題を同時に解決する革新的なロボット技術として注目されています。

大成建設がAI画像認識でコンクリート打継面を1秒判定する事例

AIを活用したコンクリート打継面評価技術を開発 | 大成建設株式会社

項目内容
企業名大成建設
業界総合建設(ゼネコン)
ビフォー打継面の粗さを監督員が目視チェック。属人的で時間もばらつきも大きい
アフタータブレットで撮影→AIが1秒で良否判定。専用機材不要、記録も自動保存

コンクリート工事では、先に打設したコンクリートと新しく打設するコンクリートの接合部分である「打継面」の処理が重要な品質管理項目です。従来は監督員が目視でチェックしていましたが、判定基準が属人的で時間のばらつきも大きく、定量的な評価が困難でした。打継面処理不足は漏水やひび割れの原因となるため、専門作業員不足と長時間労働是正のプレッシャーの中でも品質確保が求められていました。

大成建設が開発したAI画像認識システムは、タブレット端末での撮影だけで打継面の良否を瞬時に判定します。10,000件超の学習データにより高精度化を図り、わずか1秒で判定結果を表示。専用機材が不要で、判定結果は画像に重畳表示されるため、トレーサビリティも確保されます。

ダム現場での実証を経て、2025年3月にリリース。他のコンクリート工種への展開も可能で、同社の「生産プロセスDX」ロードマップの重要な一環として位置づけられています。品質管理の標準化と生産性向上を同時に実現する画期的な技術として評価されています。

コマツがスマートコンストラクション技術で測量を30分に短縮した事例

コマツスマートコンストラクション、最新製品に人工知能を統合

項目内容
企業名コマツ
業界建設機械製造/ICT施工サービス
ビフォードローン測量後、PCで障害物を手作業で除去。解析に半日~1日
アフターEdge端末がAIで重機・建物などを自動マスキングし、その場で点群生成。30分で成果物を共有

建設現場では、i-Construction(建設現場の生産性向上を目指す国土交通省の取り組み)の普及により、ドローン測量から3D化、出来形比較までの一連の流れが標準化されています。しかし従来は、ドローン測量後にパソコンで障害物を手作業で除去する必要があり、解析に半日から1日を要していました。この工程がボトルネックとなり、若手測量技能者不足の問題も相まって、工程管理に支障をきたしていました。

コマツの「Smart Construction Edge」は、AI技術により現場での即時処理を実現します。Edge端末に搭載されたAIセグメンテーション機能が、重機や建物などの不要点群をリアルタイムで自動除去。オフライン処理により現場ネットワークに依存せず、わずか30分で点群データの生成から成果物の共有まで完了します。

GNSS(全球測位衛星システム)不要の簡易ワークフローにより、地形更新を従来の日次から随時更新に短縮し、工程遅延の可視化も可能。2024年秋版EdgeソフトでAI機能を正式搭載し、現場の測量業務を劇的に効率化しています。

安全管理・労災リスクを低減した事例

この分野では以下の5つの事例をご紹介します。

  • 大林組の人物検知システム「クアトロアイズ」
  • 鹿島建設の危険予知支援システム「K-SAFE®」
  • 清水建設の遠隔タワークレーン操作システム
  • コマツのAIバケット爪脱落検知システム
  • 清水建設とSafieの侵入検知システム

大林組が人物検知システムで97%超の検知率を実現した事例

作業員の接近を検知して建設重機との接触を防止する安全装置「クアトロアイズ™」を開発しました | ニュース | 大林組

項目内容
企業名大林組
業界ゼネコン
ビフォーRFIDや超音波方式は屈み姿勢などで検知漏れ・誤警報
アフターAI画像認識で多姿勢でも97%超の検知率、誤警報激減

建設現場における重機と作業員の接触事故は、年間数件発生する深刻な安全課題でした。従来のRFIDや超音波センサー方式では、作業員が屈んだ姿勢を取った際の検知漏れや誤警報が多発し、運用が停止されがちという問題を抱えていました。

大林組が開発した「クアトロアイズ」は、AI画像認識技術により人物検知の精度を大幅に向上させたシステムです。カメラ4台とAI推論ユニットを組み合わせることで重機の全周監視を実現。ヘルメット形状も学習データに含めることで、様々な姿勢の作業員を高精度で特定します。検知率は97%超を達成し、誤警報も大幅に削減しました。

警報は重機モニターとウェアラブル端末の双方に表示され、他社作業員も含むヘルメット色の学習により汎用性も確保。特許出願済みで、国土交通省の「新技術情報提供システム」NETISにも登録されています。現場実証を経て実用化され、建設現場の安全性向上に大きく貢献している革新的な技術です。

鹿島建設が10万件の事故データをAI解析で危険予知を支援する事例

安全・環境 | ICT・DX | 鹿島建設株式会社

項目内容
企業名鹿島建設
業界ゼネコン
ビフォー危険予知活動(KY)が経験則頼みで災害事例検索に長時間
アフターAIが10万件超の災害データを自然言語解析→類似事例を即提示

建設現場では危険予知活動(KY活動)が安全管理の基本とされていますが、従来は作業員の経験則に頼る部分が大きく、新人中心のチームでは形骸化しがちでした。また、過去の災害事例をPDFから検索するのに時間を要し、対策立案が遅延するという課題もありました。

鹿島建設の「K-SAFE®」は、AIが10万件超の災害データを自然言語解析し、現場作業内容に応じた類似事例を即座に提示する危険予知支援システムです。BERT派生モデルによる文章分類技術を活用し、作業タグを自動付与。現場作業内容を入力するだけで、リスクスコアと過去の類似事例が可視化されます。

モバイル端末で現場朝礼に活用でき、導入後はヒヤリハット件数が20%増加し、作業員の安全意識向上が確認されています。2024年度からは協力会社にもライセンス提供を開始し、国土交通省「建設DXセレクション2024」で優秀賞を受賞。豊富な災害データをAIで活用することで、経験に依存しない体系的な危険予知を実現しています。

清水建設が遠隔タワークレーン操作で高所作業リスクを解消した事例

タワークレーン遠隔操作システム「TawaRemo®(タワリモ)」を自社現場に展開 | 企業情報 | 清水建設

項目内容
企業名清水建設
業界ゼネコン
ビフォー高所キャビンでの操作は熱中症・転落リスク、技能者確保も困難
アフター地上操作室から遠隔操縦、作業時間同等で安全性・快適性向上

都市再開発の進展により100m超の高層タワークレーンが増加する中、操作員の高所作業には様々なリスクが伴っていました。キャビンまでの上り下りだけで毎回15分超を要し、熱中症や転落の危険性があります。さらにハーネス装着義務化により作業負担が増大し、技能者確保も困難になっていました。

清水建設が開発した「TawaRemo®(タワリモ)」は、地上の操作室からタワークレーンを遠隔操縦するシステムです。4Kカメラとライダー(LiDAR)により死角をAI補正し、視認性を確保。操作員は空調付きコックピットで快適に作業でき、作業員の高所常駐はゼロになりました。作業時間は従来と同等を維持しながら、安全性と快適性を大幅に向上させています。

8現場での適用実績があり、主要3社のタワークレーンにマルチ対応。遠隔室1室で複数クレーンの切替操作も可能で、将来の省人化への布石としても注目されています。2025年度からはIHI製クレーンにも正式対応予定で、建設現場の働き方改革を推進する画期的な技術として評価されています。

コマツがAI画像解析でバケット爪脱落を自動検知する事例

-安全で生産性の高いスマートでクリーンな未来の現場の実現を目指す- 大型ホイールローダー向けにAI画像解析を用いた自動検知支援システムを開発 | ニュースルーム | コマツ 企業サイト

項目内容
企業名コマツ
業界建設機械製造
ビフォー爪の欠損に気付かずクラッシャーを損傷、操業停止・重大事故のリスク
アフターカメラ+AIが爪脱落と転石を自動検知し、モニタと警報音で即時通知

採石場などでホイールローダーを使用する際、バケット爪の脱落は深刻な問題でした。爪の欠損に気付かずにクラッシャーへ投入すると、設備損傷による操業停止や重大事故のリスクが発生します。従来は爪の捜索作業が危険を伴い、タイヤ損傷等でコスト増加の要因にもなっていました。高齢オペレーターの増加により、視認性にも限界がありました。

コマツが開発したAI画像解析システムは、前方・側方の2系統カメラで死角をなくし、バケット爪脱落と転石を自動検知します。AIがサイズ判定を行うことで誤報を最小化し、検知時はモニタ表示と警報音で即座に通知。2025年度の量産を予定しており、安全と稼働率を同時に向上させる「デュアルバリュー」技術として位置づけられています。

画像AIは自社GPUプラットフォームに実装し、機上での推論処理を実現。ESG経営の観点から安全性向上とダウンタイム削減を両立する技術として、建設機械業界の新たなスタンダードを目指しています。

清水建設とSafieがデジタルツインで立入禁止エリアを自動監視する事例

建設現場におけるリアルタイムデジタルツインの実現と活用 | セーフィー株式会社 – Safie Inc.

項目内容
企業名清水建設・Safie・コルクほか
業界建設+映像IoT
ビフォー広範囲現場を巡視員が巡回。死角多くヒューマンエラー
アフターAIカメラの侵入検知+位置情報をデジタルツイン上にリアルタイム投影。遠隔から即対応

大規模建設現場では、立入禁止エリアの監視が安全管理の重要課題でした。従来は巡視員による巡回に依存していましたが、人手不足により24時間監視が困難で、死角が多くヒューマンエラーも発生しやすい状況でした。特に多層立体交差工事では、墜落・接触事故のリスクが高まっていました。

清水建設とSafie、コルクなどが共同開発したシステムは、エッジAIカメラ「Safie GO PTZ AI」の侵入検知機能とデジタルツイン技術を組み合わせています。立入禁止エリアをシステム上で柔軟に定義でき、侵入検知時の位置情報をデジタルツイン上にリアルタイム投影。作業員数や侵入履歴を時系列で「見える化」し、危険挙動パターンの分析も可能です。

衛星通信「Eutelsat OneWeb」により山間部でも対応でき、遠隔からの即座な対応を実現しています。2024年8月から11月まで相鉄鶴ヶ峰連立事業で実証を実施し、侵入検知後はスマートフォン通知と音声放送を自動発報。将来的にはロボット巡視との統合も視野に入れており、建設現場の安全監視を革新する包括的なソリューションとして注目されています。

設計・意匠・環境性能を最適化した事例

この分野では以下の5つの事例をご紹介します。

  • 清水建設のSinGAN外壁パネル生成システム
  • トヨタと日建設計のWoven Cityジェネレーティブ設計
  • 大林組のファサード生成AI「AiCorb」
  • 竹中工務店の設計BIMツール
  • 日建設計とソフトバンクの自律ビルシステム

清水建設がSinGANで外壁パネル50案を自動生成した事例

⼿彫りのパターンをAIで蘇らせ、外装パネルのデザインに|CASE10 温故創新の森 NOVARE−AIとたどる、⼆代清⽔喜助の想い−|Shimz DDE

項目内容
企業名清水建設
業界ゼネコン/設計・施工一括
ビフォー大判外壁パネル(55m×11m)の連続柄を手作業でパターン化
アフター画像生成AI SinGANで50案を自動生成→VR検証→4案採用

大型建築物の外壁デザインでは、巨大なパネルサイズに対応した連続パターンの作成が重要な課題でした。清水建設の「温故創新の森 NOVARE」プロジェクトでは、55m×11mという大判外壁パネルのデザインパターンを人手で作成すると、品質のばらつきと時間超過が懸念されていました。

同社が採用したSinGAN(Single Image Generative Adversarial Network)は、既存モチーフを16倍スケールに高解像度拡張する画像生成AIです。少量の画像データでも高品位な生成が可能で、50案の自動生成を実現。生成されたデザインはVR環境で検証し、最終的に4案を採用しました。

生成AI→3Dモック→VR検証の高速ループ化により、意思決定プロセスを大幅に短縮。若手デザイナーのスキル差を吸収し、品質の均一化も達成しています。採択案はアルミ鋳造パネルとして実施工済みで、2025年竣工予定。AI技術を活用した設計業務の効率化と品質向上を同時に実現する先進的な取り組みとして評価されています。

トヨタと日建設計がWoven Cityで都市動線を最適化した事例

トヨタ、ビャルケ・インゲルスの「Woven City」の第1期完成を発表

項目内容
企業名トヨタ自動車/日建設計(Phase 1)
業界デベロッパー/設計
ビフォー従来マスタープランはCAD+手動試行錯誤、数ヶ月単位
アフターAIが三層モビリティ網と歩行者動線を多目的最適化、Phase 1設計を短縮

静岡県裾野市の元・東富士工場跡地70haに建設される「Woven City」は、多用途・多交通モードを収める実証都市として、従来の設計手法では対応困難な高難度プロジェクトでした。モビリティ実証都市として将来拡張を加味した設計が求められ、CADと手動試行錯誤による従来手法では数ヶ月単位の時間を要していました。

BIG(ビャルケ・インゲルス・グループ)と日建設計が共同開発したAIシステムは、3種類のストリートを「織り込む」生成アルゴリズムにより、三層モビリティ網と歩行者動線を多目的最適化します。AI生成した街区案をVR環境で反復評価することで、設計期間を大幅に短縮。

Phase 1(360住戸)は2025年CESで完成を発表し、2026年の一般公開を予定しています。データ基盤「Arene OS」と連携したリアルタイム交通シミュレーションも実現し、日本初のLEED for Communities Platinum認証を獲得。AI技術による都市設計の新たな可能性を示す画期的なプロジェクトとして世界的に注目されています。

大林組がスケッチから瞬時にファサード案を生成するAIを開発した事例

建築設計の初期段階の作業を効率化する「AiCorb®」を開発 | ニュース | 大林組

項目内容
企業名大林組
業界総合建設
ビフォーファサード検討を設計者が手動モデリング。初期案提示に数日
アフタースケッチ/テキストを入力→AIが数秒で多様な立面を生成し、Hypar上で3Dモデルへ自動変換

建築設計の初期段階では、ファサード(建物の正面や外観)検討において、デザインの幅を確保しつつスピードも求められるという相反する要求がありました。従来は設計者が手動でモデリングを行い、初期案の提示までに数日を要していました。この反復作業が設計者のクリエイティブな時間を圧迫していたのです。

大林組がSRIインターナショナルと共同開発した「AiCorb®」は、「デザイナーAI」と「モデラーAI」の2段構成システムです。スケッチやテキストを入力するだけで、AIが数秒で多様な立面デザインを生成。さらにHyparプラットフォーム上で3Dモデルへの自動変換も可能で、数量算出まで自動化されています。

顧客との合意形成をその場で実現でき、将来的にはコスト・施工性の同時最適化への拡張も予定。2022年の開発発表後、社内プロジェクトで検証を拡大中です。生成AI×パラメトリック設計の日本版ユースケースとして、設計業務の生産性向上に大きく貢献する革新的な技術です。

竹中工務店が設計BIMツールで初期検討期間を60%短縮した事例

付加価値の高い提案を早期に実現する「設計BIMツール」を開発 より高度なシミュレーションの早期実施、多角的視点での設計検証が可能に|プレスリリース2024|情報一覧|株式会社 竹中工務店

項目内容
企業名竹中工務店
業界ゼネコン/設計
ビフォー基本設計段階の案出しとシミュレーションを個別ソフトと手作業で繰り返し、数週間を要した
アフター社内開発のBIMツールで要求条件を入力→数分で複数案+各種シミュレーション結果を自動生成

複合用途ビルの設計では、形状検討、コスト算出、環境性能評価を個別に実施していたため、基本設計段階で数週間を要していました。手戻りによるスケジュール遅延と設計者の長時間労働が常態化し、早期提案への対応が困難な状況でした。

竹中工務店が開発した社内BIMツールは、要求条件を入力するだけで数分で複数案と各種シミュレーション結果を自動生成します。温熱、光環境、構造の多目的最適化をワンパスで実行し、形状・コスト・環境性能を同時に評価。クラウド-BIM連携により遠隔共同編集も可能で、クライアントの意思決定を早期化しています。

2024年3月から全プロジェクトに適用し、初期検討期間を60%短縮する成果を上げています。現在は生成AIプラグインの追加により、意匠バリエーション提案の拡充も予定。設計プロセス全体のDX化を推進する先進的な取り組みとして業界から注目されています。

日建設計とソフトバンクが自律進化するスマートビルを構築する事例

ソフトバンクと日建設計、データを活用して自律的に進化し続けるスマートビルの構築に向けて「SynapSpark株式会社」を設立 ~スマートビルの構築支援により、人と建築と都市をデータでつないで社会課題を解決~ | PRESS RELEASE | News | NIKKEN SEKKEI LTD

項目内容
企業名日建設計/ソフトバンク
業界設計事務所+通信
ビフォー設備ごとにデータが分断し、省エネ・快適性の全体最適が困難
アフタービルOS+AIがリアルタイムで設備を協調制御、設計段階から最適運用を前提化

従来のビル設計では、空調、照明、セキュリティなどの設備ごとにデータが分断され、省エネルギーと快適性の全体最適化が困難でした。脱炭素と働き方多様化により、ビルに求められる機能が複雑化する中、個別チューニングには限界がありました。

両社が2023年12月に設立した合弁会社SynapSpark(資本金4億円)は、「SynapSpark Autonomous Building」を開発。ビルOSとAIがリアルタイムで設備を協調制御し、デジタルツインで設計→運用→改善を自律ループ化します。設計段階で「AI向けデータモデル」を標準化し、建物竣工後はアプリを追加インストールして機能拡張が可能。

エネルギー消費量の最大30%削減を試算しており、2026年竣工予定の大規模再開発での実装を計画しています。設計段階から最適運用を前提とした建築設計の新しいパラダイムを提示する革新的なプロジェクトです。

維持管理コストを削減した事例

この分野では以下の5つの事例をご紹介します。

  • 三井不動産の日本橋スマートエネルギープロジェクト
  • 日立ビルシステムとNTTデータのAI空調最適化
  • JR東日本の新幹線トンネルAI検査システム
  • NTTファシリティーズの画像異常検知AI
  • 森ビルのIoT耐震リスク格付けシステム

三井不動産が日本橋でAI最適運転によりCO₂を25%削減した事例

三井不動産 | 「日本橋一丁目スマートエネルギープロジェクト」が着工

項目内容
企業名三井不動産
業界デベロッパー
ビフォーエネルギーセンター運転を熟練者の経験則で手動制御
アフター3種AIが30時間先まで最適運転を自動立案→CO₂25%削減

大規模再開発地区では、複数用途が混在するため需給予測が複雑化し、従来は熟練者の経験則による手動制御に依存していました。技術者不足の顕在化と環境負荷低減の要求が高まる中、効率的なエネルギー管理システムの構築が急務でした。

三井不動産の「日本橋一丁目スマートエネルギープロジェクト」では、3種類のAIが30時間先までの最適運転を自動立案します。AIが30分周期でスケジュールを再生成することで需要変動に追随し、77.8%の総合効率を実現。街区50万㎡への電熱面的供給を担うEMS(エネルギーマネジメントシステム)により、CO₂排出量を25%削減しています。

災害時はCGS(コージェネレーションシステム)による自立運転でBCP(事業継続計画)も強化。保存文化財ビルにも系統供給し、環境価値を可視化しています。東京電力EPとの共同事業として2027年運開予定で、都市エネルギーシステムの新たなモデルケースとして期待されています。

日立ビルシステムとNTTデータがAI空調制御で16%省エネを実証した事例

AIを活用した空調最適化により、ビルの快適性と省エネの両立を実証 | 日立ビルシステムのプレスリリース | 共同通信PRワイヤー

項目内容
企業名日立ビルシステム(実証サイト)
業界ビルメンテナンス/設備
ビフォーセンサー値を後追い調整するフィードバック制御中心
アフターAIが人流・天候を先読みするフィードフォワード制御で空調エネ消費16%削減(1週間実証)

ビル電力の約半分を占める空調負荷の削減は、2030年業務部門CO₂半減目標への対応において重要な課題でした。従来のフィードバック制御では、センサー値を後追いで調整するため、エネルギー効率に限界がありました。

日立ビルシステムとNTTデータが共同開発したシステムは、IoTプラットフォーム「BuilMirai」、AIサービス「HUCAST」、映像解析技術を組み合わせています。人流カメラと外気データをAIで同時学習し、人流・天候を先読みするフィードフォワード制御を実現。1週間の実証実験で空調エネルギー消費量を16%削減しました。

快適性指標PMV(予想平均申告)±0.5を維持しつつ省エネを達成し、既設BAS(ビル自動制御システム)に追加センサー無しで後付け可能。2025年度から複数テナントビル向けの商用提供を予定しており、AI技術による建物エネルギー管理の新たなスタンダードを目指しています。

JR東日本がAIひび割れ検出で新幹線トンネル検査を20%効率化した事例

新幹線のトンネル検査で日本初となる新技術を導入してDX を進めます︕

項目内容
企業名東日本旅客鉄道
業界インフラ運輸
ビフォー夜間に人手で展開図を作成、変状抽出に約5時間/1km
アフター画像AIがひび割れ検出+二時期比較を自動化、夜間作業を20%削減

新幹線の安全運行には、トンネル内壁面の定期検査が不可欠です。従来は夜間に作業員が人手で展開図を作成し、変状抽出に1kmあたり約5時間を要していました。人手不足と夜間作業の長時間化が安全輸送のボトルネックとなっていました。

JR東日本が富士フイルムと共同開発したAI画像認識システムは、ひび割れ検出と二時期比較を自動化します。特許出願中の二時期比較技術により、検査精度を向上させて見落としリスクを低減。年間約1万時間の夜間作業削減を見込んでいます。

2025年度から東北・上越新幹線への順次展開を予定し、現在は路盤まで含めた全景画像検査装置も開発中。DX化により検査効率を大幅に向上させると同時に、作業員の労働環境改善と安全性向上を実現。鉄道インフラの維持管理において、AI技術活用の先進的なモデルケースとなっています。

NTTファシリティーズが画像異常検知AIで点検工数を60%削減した事例

NTTファシリティーズとリルズが共同検証開始 | 2024年 | ニュースリリース | 企業情報 | NTTファシリティーズ

項目内容
企業名NTTファシリティーズ
業界ビルメンテナンス
ビフォー技術者が目視で多様設備を巡回点検、労務費高騰
アフターLiLz Guardが異常検知率97%で代替、点検時間60%削減

ビル設備の維持管理では、熟練技術者による目視点検が基本でしたが、高齢化と若手不足により品質維持が困難になっていました。多様な設備の巡回点検には長時間を要し、労務費高騰も課題となっていました。

NTTファシリティーズがLiLzと共同開発したシステムは、画像異常検知AI「LiLz Guard」により設備点検の97%自動化を実現しています。東京・大阪13棟での実証を経て、異常検知率97%、点検時間60%削減を達成。既設カメラ画像を活用し後付け可能で、異常発生時はクラウド経由で即座にアラートを発報します。

移動縮減効果により年間約120トンのCO₂削減も実現し、2025年度から本格運用を開始予定。2026年までに管理棟数100超への拡大を計画しており、ビルメンテナンス業界のDX化を牽引する革新的なソリューションとして注目されています。

森ビルがIoT耐震リスク格付けで投資判断を迅速化した事例

IoT技術による「土地建物格付けシステム」の研究開発が完了|ニュースリリース一覧|プレスルーム|企業情報|森ビル株式会社

項目内容
企業名森ビル
業界デベロッパー
ビフォー耐震診断は個別構造計算+現地調査が必須、コストと工期が大きい
アフター無線センサ+AI解析で揺れ特性をランキング化、対応優先度を即時提示

都心部の老朽ビル更新・補強においては、従来の耐震診断が個別構造計算と現地調査を必要とし、多大なコストと工期が都心再生の足かせとなっていました。建物の地震リスクを迅速かつ効率的に評価する手法が求められていました。

森ビルが開発した「IoT土地建物格付けシステム」は、無線センサとAI解析により建物の揺れ特性をランキング化し、対応優先度を即時提示します。超低電力センサによる長期常時計測を実現し、地盤と建物を一体評価する国内初のスキームを構築。クラウド格付け結果により投資判断を迅速化し、都市全体の震災リスク低減に寄与しています。

特許取得済みアルゴリズムでデータ互換性を確保し、2025年度から虎ノ門・麻布台ヒルズ全棟への導入を予定。従来の耐震診断手法を革新し、都市の防災力向上と効率的な資産管理を同時に実現する画期的なシステムです。

建設業界にAIを導入する時の注意点

建築AIの導入を成功させるためには、以下の5つの注意点を押さえておく必要があります。

データ品質を確保する

AIの精度は、学習に使用するデータの品質に大きく左右されます。不正確なデータや偏ったデータでAIを学習させると、期待した結果を得ることができません。

データの収集段階から品質管理を徹底しましょう。例えば、図面データに古い情報や間違った情報が混入していないか、写真データの画質や撮影条件は適切かなどをチェックする必要があります。

ニューラルオプト編集部

継続的にデータの精度を監視し、問題があれば修正する仕組みも重要です。

法規制・ガイドラインを確認する

建築業界は厳格な法規制があるため、AI導入前に関連する規制やガイドラインを確認することが不可欠です。特に安全性に関わるシステムでは、法的責任の所在を明確にしておく必要があります。

建築基準法、労働安全衛生法などの既存法規に加え、AI活用に関する新しいガイドラインも随時確認しましょう。業界団体が発行する指針や、国土交通省のDX推進に関する方針なども参考になります。

ニューラルオプト編集部

不明な点があれば、法務担当者や専門家に相談することが大切です。

現場抵抗をマネジメントする

新しい技術の導入には、現場からの抵抗が生じることがあります。特に経験豊富な職人や技術者ほど、従来の方法への信頼が強く、変化を受け入れにくい傾向があります。

導入前から現場スタッフとのコミュニケーションを密に取り、AI導入の目的やメリットを丁寧に説明しましょう。「仕事を奪うもの」ではなく「作業を支援するもの」として位置づけることが重要。

ニューラルオプト編集部

段階的な導入により、小さな成功体験を積み重ねることで、徐々に受け入れられるようになります。

セキュリティ・プライバシーに配慮する

建築プロジェクトでは、顧客情報や設計図面など機密性の高いデータを扱います。AIシステムでこれらのデータを処理する際は、十分なセキュリティ対策が必要です。

データの暗号化、アクセス権限の管理、ログの監視など、情報漏洩を防ぐ仕組みを構築しましょう。クラウドサービスを利用する場合は、データの保存場所や管理体制についても確認が必要です。

ニューラルオプト編集部

プライバシーポリシーの整備と、関係者への周知も忘れずに行うことが大切です。

ベンダーロックインを避ける

特定のベンダーの技術に過度に依存すると、将来的に選択肢が狭まるリスクがあります。技術の進歩が早いAI分野では、柔軟性を保つことが重要です。

オープンスタンダードに対応したシステムを選択し、データの移行やシステムの変更が容易にできる設計にしておきましょう。契約時には、データの所有権やシステム変更時の対応についても明確にしておくことが必要。

ニューラルオプト編集部

複数のベンダーとの関係を維持し、常に最適な選択肢を検討できる体制を整えることが大切です。

パートナー選定のコツ

建築AI導入を成功に導くパートナー選びでは、以下の5つのポイントを重視しましょう。

建築業界実績を見る

AI技術に優れていても、建築業界特有の課題や制約を理解していないパートナーでは、期待した結果を得ることが困難です。建築分野での導入実績や成功事例を重視して選定しましょう。

具体的な導入事例の内容、効果測定の結果、トラブル時の対応などを詳しく聞き取ることが重要。可能であれば、実際に導入した企業に話を聞いたり、稼働中のシステムを見学させてもらうことで、パートナーの実力を正確に把握できます。

技術スタックの柔軟性を評価する

建築プロジェクトは案件ごとに要件が大きく異なるため、様々な技術に対応できる柔軟性が求められます。特定の技術にこだわりすぎるパートナーよりも、複数の選択肢を提案できるパートナーを選びましょう。

機械学習、深層学習、画像認識、自然言語処理など、幅広い技術分野への対応力を確認。また、既存システムとの連携や、将来的な機能拡張への対応可能性についても事前に相談しておくことが大切です。

保守サポート体制を確認する

AIシステムは導入後の運用・保守が重要です。トラブル発生時の対応速度や、定期的なメンテナンスの体制を事前に確認しておきましょう。

24時間365日対応の可否、障害時の復旧目標時間、定期的なシステム更新の頻度などを具体的に確認。現場で問題が発生した際の連絡体制や、緊急時の対応フローについても明確にしておくことが必要です。

コストの透明性を確保する

AI導入には初期費用だけでなく、運用費用、保守費用、機能追加費用など様々なコストが発生します。後から想定外の費用が発生しないよう、コスト構造を明確にしておきましょう。

見積もりの内訳を詳細に確認し、どの作業にどの程度の費用がかかるかを把握。特に、データ量の増加やユーザー数の増加に伴う追加費用については、事前に取り決めをしておくことが重要です。

長期アップデート方針を確認する

AI技術は日進月歩で進化しているため、導入したシステムも継続的なアップデートが必要です。パートナーの長期的な技術開発方針や、アップデート提供の考え方を確認しましょう。

新機能の提供頻度、セキュリティアップデートの対応、技術の陳腐化への対策などについて具体的に相談。また、パートナー企業の経営安定性や事業継続性についても、長期的な視点で評価することが大切です。

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著者・監修者

合同会社ニューラルオプト代表。
東京外国語大学卒業後、大規模言語モデルBERTなどの機械学習を活用したマーケティングツールの研究開発を目的にニューラルオプトを創業。

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