【業界別】生成AIの活用事例27選!ChatGPT開発に携わる会社が解説
生成AIは、企業の業務効率化やコスト削減、新たな価値創出に大きく貢献しています。本記事では、さまざまな企業が生成AIを活用して成功した事例を紹介します。これらの事例を参考に、あなたの企業でも生成AIの活用を検討してみてはいかがでしょうか。
なお、このサイトを運営する合同会社ニューラルオプトは、海外企業との協業のもとChatGPTそのものの開発にも携わっている企業です。日本・韓国で展開されているChatGPTは弊社も開発に関与しており、本記事ではその知見も踏まえて解説を行っていきます。

ChatGPTは英語で処理を行い、それを日本語などローカル言語に翻訳しています。その学習(AIの品質を高める工程)に弊社が携わっております。
生成AIができること4つ

生成AIは、従来のAIと比較して、新しいコンテンツを自ら創造・生成できる技術です。具体的には以下のようなことが可能です。
- 情報を読み取り、文章化できる
- 画像を生成する
- 音声を生成する
- 動画を生成する
1. 情報を読み取り、文章化できる
生成AIは与えられた情報を理解し、新しい文章として出力することができます。人間の会話を読み取って対話することはもちろん、ドキュメントを読み込んでその内容を要約したり、議事録から重要なポイントだけを抽出したりすることも可能です。
例えば、東北大学病院では生成AIが電子カルテの情報を読み取り、医療文書を自動作成することで記録作成時間を47%削減することに成功しています。

なお、単なるテキストだけではなく、コードを書くこと(プログラミング)も可能です。
2. 画像を生成する
テキストによる指示から、全く新しい画像を生成することができます。パルコの「HAPPY HOLIDAYSキャンペーン」では、実際のモデル撮影は行わず、生成AIによって人物から背景まですべてを作成しました。このように、デザイナーのイメージをプロンプトとして入力するだけで、広告やウェブサイト用の画像、製品イメージなどを短時間で生成できます。
3. 音声を生成する
テキストから自然な人間の声を生成したり、特定の話者の声色を模倣したりすることができます。
サントリーや伊藤園のようなメーカーは、CMのナレーションに生成AIを活用しています。また、Z会では生成AIによる音声教材を作成し、学習者が自分のペースで勉強できる環境を提供しています。
4. 動画を生成する
テキスト指示から短い動画やアニメーションを生成したり、静止画に動きを加えたりすることができます。
日本コカ・コーラの「Create Real Magic」キャンペーンでは、ユーザーが生成した画像をもとに動画コンテンツを作成し、屋外広告やSNSで展開しました。また、企業のプロモーション動画や製品デモなど、さまざまな用途で活用されています。
業務・ビジネスにおける生成AI活用事例
まず取り上げる業務・ビジネスにおける生成AI活用事例10つは以下の通りです。
事例の概要 | 業界 | 企業名 |
---|---|---|
企画期間90%短縮 | 小売業/商品開発 | セブン&アイ |
社内情報検索効率化 | 飲料メーカー/KM | アサヒビール |
作業時間2時間削減 | IT/ソフト開発 | LINE |
月22万時間削減 | 金融/バックオフィス | 三菱UFJ銀行 |
研究開発効率向上 | 化学/R&D | 住友化学 |
職務経歴書自動作成 | 転職サービス/CS | ビズリーチ |
監査業務1900h削減 | 製薬/品質管理 | KMバイオロジクス |
コール業務効率化 | BPO/CS | ベルシステム24 |
エスカレ6割削減 | BPO/CC | トランスコスモス |
自由研究テーマ支援 | 教育/学習支援 | ベネッセ |
1. 商品企画の期間を90%短縮した事例|小売業、商品開発

1つ目の事例はセブンイレブンの事例です。従来の商品企画では市場調査から企画立案まで数ヶ月を要していましたが、生成AIを導入して大幅な時間短縮に成功しました。
店舗の販売データやSNS上での消費者の反応を分析し、市場のトレンドや消費者ニーズを把握するのに多くの時間がかかっていました。また、新商品のPR用コピーや画像制作も手作業で行っていたため、全体の企画プロセスに時間がかかっていました。
生成AIを活用して市場分析から企画立案までのプロセスを効率化。その結果、商品企画にかかる時間が最大で90%削減され、市場のトレンドや顧客のニーズに迅速に対応できるようになりました。生成AIによるコピーや画像の制作も活用し、スピーディな市場投入が可能になっています。
2. 社内情報検索の効率化に成功|飲料メーカー、ナレッジマネジメント

商品開発力強化やグループ間のイノベーション創出を目指す
2つ目の事例はアサヒビールの事例です。社内の膨大な情報を効率的に検索・活用するために生成AIを導入し、研究開発のスピードと効率を向上させました。
ビールの醸造技術や商品開発に関する情報を見つけるには、複数の部署や資料に問い合わせる必要があり、多くの時間と労力がかかっていました。そのため、研究開発の進行が遅くなることもありました。
生成AIを活用した社内情報検索システムを導入し、社内の膨大な情報データベースを瞬時に横断検索できるようになりました。これにより、研究開発に必要な資料やデータへ迅速にアクセスが可能となり、業務効率が向上。さらに、AIが蓄積された社内の知見を分析し、類似事例を提案できるようになったことで、新商品開発のスピードも向上しています。
3. エンジニアの業務を1日2時間効率化|IT企業、ソフトウェア開発

3つ目の事例はLINEの事例です。ソフトウェア開発の効率を高めるために生成AIツールを導入し、エンジニアの業務時間を大幅に削減しました。
エンジニアは複雑なコードの作成やデバッグに多くの時間を費やしていました。また、繰り返し行う作業も多く、開発効率に課題がありました。
GitHubが提供する生成AIツール「GitHub Copilot」を導入。このツールはエンジニアが実装したい機能や動作に必要なコードを自動生成し、コーディングの効率化を実現しました。約7,000人のエンジニアが活用した結果、平均で1日当たり約2時間の作業時間削減に成功。
空いた時間を新サービスの考案など高付加価値の業務に充てられるようになり、競争力向上につながっています。

ちなみに弊社は開発会社ですが、GitHub Copilotは有効活用しています。
4. 月22万時間の労働時間削減|金融業、バックオフィス業務

4つ目の事例は三菱UFJ銀行の事例です。生成AI「ChatGPT」を導入し、業務プロセスを革新することで大幅な労働時間削減を実現しました。
社内文書のドラフト作成や稟議書の作成、企画のアイデア出し、アンケートの分析など、多くの業務に時間がかかっていました。約3万人の従業員が行う業務時間は膨大で、効率化が課題でした。
生成AIの導入により、社内文書作成や稟議書作成が効率化され、顧客との対話やサービス提供の質の向上に時間を割けるようになりました。全従業員が行内の幅広い業務で生成AIを活用する体制を整え、月22万時間分の労働時間削減が可能になりました。
また、ウェルスマネジメント業務においても、顧客の詳細なニーズに基づいたパーソナライズされた提案ができるようになっています。
5. 研究開発の効率化に成功|化学メーカー、R&D

5つ目の事例は住友化学の事例です。生成AIを活用した「ChatSCC」を導入し、研究開発の効率化と生産性向上を実現しました。
研究開発や技術アイデアの創出、データ分析などに多くの時間と人的リソースを要していました。また、文書作成や校正、プログラムコード生成などの一般的なオフィス業務も効率化が必要でした。
ChatGPTを自社の事業に合わせて改良した「ChatSCC」を約6,500名の全従業員に展開。一般的なオフィス業務だけでなく、技術アイデアの創出や研究・製造データの分析にも活用し、約200の業務パターンをテストした結果、最大で50%以上の効率化を達成しました。
また、社内の専門知識をAIが学習することで、より効果的に利用できる特化型モデルの構築も進めています。
6. 職務経歴書の自動作成でスカウト率40%向上|転職サービス、キャリア支援

6つ目の事例はビズリーチの事例です。転職活動をサポートするために生成AIを活用した「職務経歴書の自動作成」機能を導入し、転職希望者の活動効率向上を実現しました。
転職希望者は職務経歴書の作成に時間がかかり、自己のスキルや経験を効果的にアピールするのが難しいという課題がありました。また、職種やポジションごとに適切な表現を考える必要があり、転職活動のハードルが高くなっていました。
生成AIを活用した新機能により、職種やポジションなどの簡単な入力だけで、最短30秒でプロフェッショナルな職務経歴書が作成できるようになりました。効果検証の結果、本機能を活用して職務経歴書を作成したユーザーは、スカウト受信率が40%向上。
転職活動のハードルが大きく下がり、より多くの企業にアプローチできる環境が整備されました。
7. 監査業務を年間1,900時間削減|製薬業、品質管理

STiV開発へのリクエストで品質管理業務における「経験・知識の標準化」を実現
7つ目の事例はKMバイオロジクスの事例です。医薬品の監査業務に生成AIを活用し、大幅な業務効率化と人材育成の両立を実現しました。
医薬品が法令や省令に沿って作られているかを監査する業務は、膨大な量の情報収集と理解が必要でした。経験の長い社員に業務負荷がかかり、人材育成にも課題がありました。
AIチャットボットサービス「OfficeBot」を導入し、社員が情報をリサーチするツールとして活用。AIが質問パターンを自動学習し、不足している情報を収集・学習するシステムにより、社内資料を簡単に参照できるようになりました。その結果、監査業務にかかる時間を年間1,900時間削減。
さらに、これまで経験者に依存していた業務知識が共有されるようになり、業務の中で人材を育てる環境構築にも成功しています。
8. コールセンター業務の効率化と問い合わせ負担軽減|BPO、カスタマーサポート

8つ目の事例はベルシステム24の事例です。生成AIと人の力を融合させたハイブリッド型コールセンター運営サービスを提供し、人材不足の解決と顧客サービスの向上を実現しました。
コールセンター業界では深刻な人材不足が課題となっていました。オペレーターは様々な問い合わせに対応する必要があり、簡単な質問から複雑な問題まで一律に対応するため、業務効率に課題がありました。
生成AIと人間のオペレーターを組み合わせたハイブリッド型コールセンターを構築。簡単な質問にはAIが即座に回答し、複雑な問い合わせには人間のオペレーターが対応する体制にしました。このアプローチにより、顧客サービスの迅速化と効率化を図り、高品質な顧客対応を実現。
同時に企業側の大幅なコスト削減にも貢献し、人材不足の中でもサービス品質を維持できる体制を確立しています。
9. カスタマーサポートのエスカレーション6割削減|BPO、コンタクトセンター

9つ目の事例はトランスコスモスの事例です。生成AIを活用してコールセンターの生産性と対応品質を向上させる取り組みを進め、顧客の待ち時間短縮に成功しました。
顧客からの難しい質問に対して、最初に電話を受けたオペレーターが対応できず、専門知識を有する別の担当者に質問を引き継ぐ「エスカレーション」が多発。顧客の待ち時間が長くなる課題がありました。
オペレーターが直接生成AIに問い合わせ、過去の社内ドキュメントから最適な回答を得る仕組みを導入。これにより、オペレーターは専門知識にすぐにアクセスでき、その場で回答できるようになりました。
この取り組みにより、エスカレーションの件数を6割削減することに成功し、顧客の待ち時間が大幅に短縮。顧客満足度の向上とオペレーターの業務効率化の両立を実現しています。
10. 自由研究のテーマ選びをAIがサポート|教育、学習支援

10個目の事例はベネッセの事例です。小学生とその親をターゲットに「自由研究おたすけAI」をリリースし、子どもの学習体験の向上とデジタルリテラシー教育を両立させました。
夏休みの自由研究のテーマ選びに悩む子どもたちと親が多く、適切なテーマ選定や研究の進め方について相談できる場が限られていました。
ChatGPTの技術を利用した「自由研究おたすけAI」を提供。子どもたちが自由研究にかけられる時間や興味のあるジャンルを入力することで、AIキャラクター「ラボリー」から具体的なテーマやアイデアを受け取れるようになりました。
この取り組みはデジタルリテラシー教育の観点からも保護者から好評で、子どもたちの学習をサポートする新しい形として注目されています。利用者の8割以上が「自由研究の役に立った」と回答するなど、高い満足度を達成しました。
業界別の生成AI活用事例
次に取り上げる、業界別の事例15つは以下の通りです。
事例の概要 | 業界 | 企業名 |
---|---|---|
独自対話AI開発 | 金融業界/効率化 | SMBCグループ |
モーター設計AI活用 | 製造業界/設計 | パナソニック |
店長業務AI支援 | 小売業界/店舗運営 | ファミリーマート |
広告クリエイティブ改善 | 広告業界/マーケ | 電通 |
モーツァルト曲AI創作 | 音楽業界/作曲 | Project Z |
資料作成自動化 | コンサル業界/文書 | デロイト トーマツ |
診療記録効率化 | 医療業界/効率化 | 東北大学病院 |
構造設計最適化 | 建設業界/設計 | 安藤ハザマ |
配送網最適化 | 物流業界/ルート | ファミリーマート |
個別最適化学習 | 教育業界/学習 | 野田塾 |
多言語AI対応強化 | 観光業界/インバウンド | 大阪観光局 |
創作活動効率化 | エンタメ業界/開発 | レベルファイブ |
デザイン開発効率化 | 自動車業界/開発 | BMW |
11. 金融業界における独自対話AIの開発|SMBCグループ、業務効率化

SMBCグループは、独自の対話AI「SMBC-GAI」を開発し、業務の生産性向上に取り組んでいます。
社内での文書作成や翻訳、コード生成などの業務は手作業で行われており、時間と労力がかかっていました。また、情報漏洩のリスクを防ぐため、外部のAIツールの利用に制限を設けざるを得ない状況でした。
専用環境上でのみ動作する従業員専用AIアシスタントツール「SMBC-GAI」を開発。文章作成、要約、翻訳、ソースコード生成などの業務を支援し、従業員の生産性向上に貢献しています。
情報が社外に流出しない仕組みを構築し、セキュリティを確保した上でAIの活用を進めることが可能になりました。開発からルール作りまで、わずか4カ月で実用化を実現した点も注目されています。
12. 電気シェーバーのモーター設計に生成AIを活用|製造業界、設計プロセス

2つ目の事例はパナソニックの事例です。電動シェーバー「LAMDASH」シリーズのモーター設計に生成AIを活用し、革新的な成果を上げました。
モーター設計は熟練技術者の経験と知識に依存しており、設計プロセスに多くの時間と労力がかかっていました。また、性能向上のためには複雑な設計の最適化が必要で、試行錯誤のプロセスが不可欠でした。
生成AIがゼロベースで新構造のモーターを設計し、熟練技術者による最適設計と比較して出力が15%高いモーターの開発に成功しました。
AIの設計手法の有効性が確認され、今後は電動工具や車載用のモーター、シーリングファンなどにも適用範囲を拡大する計画です。これにより、製品設計の効率化と性能向上が実現し、技術革新の先駆者としての立場を強化しています。
13. 小売業界における店長業務支援|ファミリーマート、店舗運営

ファミリーマートは、店長業務をサポートするために人型AIアシスタント「レイチェル/アキラ」を導入し、店舗運営の効率化を実現しています。
店長は売上や客数の分析、在庫管理など多岐にわたる業務を担当しており、人手不足や業務の複雑化により大きな負担を抱えていました。店舗ごとの状況に合わせた最適な運営を行うためには、データ分析や意思決定に多くの時間と労力を要していました。
生成AIを活用した人型AIアシスタント「レイチェル/アキラ」が、店舗や店長に合わせた情報提供を行い、売上や客数などのデータを分析して有益な洞察を提供するようになりました。
2023年度末までに約5,000店舗への導入を目指すこの取り組みにより、店長業務の省力化と店舗運営力の向上を同時に実現することが可能になっています。人手不足に悩む小売業界において、生成AIによる業務支援は大きな効果を発揮しています。
14. 広告クリエイティブの無限改善を実現|広告業界、マーケティング

4つ目の事例は電通の事例です。生成AI「∞AI」を用いてデジタル広告のクリエイティブ制作と改善を自動化し、広告効果の最大化を実現しました。
広告の訴求軸の発見からクリエイティブの生成、効果予測、改善提案までのプロセスは人の手で行われており、時間と労力がかかっていました。また、クリエイティブの効果を事前に予測するのは難しく、効果測定に時間を要していました。
「∞AI」の導入により、AIが市場データや競合データ、自社データを解析し、最適な訴求キーワードを自動抽出。キーワードをもとに、クリエイティブ生成AIが多様なキャッチコピーやビジュアルを生成するようになりました。
さらに、AIが過去の広告データを学習し、クリエイティブの効果を予測したり、具体的な改善案を提示したりすることで、広告効果の最大化が可能になりました。結果として、広告のクリック率やコンバージョン率が大幅に向上し、広告効果の継続的な改善が実現しています。
15. AIによるモーツァルトの新曲創作|音楽業界、作曲

5つ目の事例は「Project Z」の事例です。AIを活用してモーツァルトの新曲を生み出す取り組みで、テクノロジーとクリエイティブの融合によって新たな芸術表現を実現しました。
伝統的な作曲は人間のクリエイティビティと専門知識に依存しており、古典派の作曲家のスタイルを正確に模倣するのは困難でした。モーツァルトの曲の特徴や作曲技法を完全に理解し再現できる人材は限られていました。
AIがモーツァルトの楽曲を学習し、そのスタイルを模倣した新曲を作曲することに成功。100曲ほどのメロディーラインを抽出し、転調部分を調整することで、80個ほどのストリーミングデータを作成してAIに学習させました。
この取り組みにより、現代にモーツァルトをよみがえらせることができ、超高精細な8K映像とリアルタイムレンダリングを組み合わせた革新的な映像表現も実現しました。これにより、テクノロジーと芸術の新たな可能性を示す先駆的な事例となりました。
16. 提案資料作成の自動化による業務効率化|コンサル業界、ドキュメント作成

6つ目の事例はデロイト トーマツ コンサルティングの事例です。生成AIを活用した提案資料作成支援ツールを導入し、コンサルタントの業務効率化を実現しました。
クライアント向け提案資料の作成は、コンサルタントが多くの時間をかけて行う必要があり、資料の骨子作成やスライドの内容生成などに多大な労力を要していました。この作業に時間を取られることで、クライアントとの対話など本来集中すべき業務に十分な時間を割けないという課題がありました。
生成AIを活用することでクライアント向け資料の骨子作成やスライド内容生成を自動化し、コンサルタントの作業時間を大幅に短縮。これにより、クライアントとの対話やより高度な分析など、より付加価値の高い業務に時間を割けるようになりました。
提案の質が向上し、より効果的な経営課題の解決が可能になったことで、クライアント満足度の向上にもつながっています。また、ESG指標データの収集などにも生成AIを活用し、データ収集や比較分析の効率化も実現しています。
17. 医療業界における診療記録作成の効率化|東北大学病院、業務効率化

東北大学病院は、日本語大規模言語モデルを活用し、電子カルテなどの情報をもとに医療文書を自動作成する実証実験を行いました。
医師は診療後に詳細な医療文書を作成する必要があり、この事務作業に多くの時間を費やしていました。診療時間の確保が難しく、医師の負担が大きな課題となっていました。
生成AIによって医療文書の作成時間が平均47%削減され、文章の表現や正確性についても高い評価を得ました。医療文書作成などの単純な事務作業が省力化され、医師は診療サービスに集中できるようになり、医療の質の向上につながっています。
18. 建設業界における構造設計の最適化|安藤ハザマ、建築設計

安藤ハザマなど複数の企業は、AIを活用した構造設計支援システム「部材グルーピングシステム」を開発し、建築物の構造設計を効率化しました。
熟練した構造設計者でなければ高度な構造計算や最適設計を行うことが難しく、限られた期限内で最適な構造設計を実現することに課題がありました。
誰でも熟練した構造設計者と同等の提案が可能になり、設計資料作成の時間も大幅に短縮されました。設計資料作成業務の効率化により、従業員の作業負担も軽減され、より創造的な設計に注力できるようになっています。
19. 物流業界における配送網の最適化|ファミリーマート、ルート計画

ファミリーマートは、全国の物流センターにおける配送網の作成にAIを活用し、配送の効率化とコスト削減を実現しました。
商品を決まった時間に正確に届けることが非常に重要ですが、配送網の作成は手作業で行われており、多くの時間と労力を要していました。また、配送ルートの最適化も課題となっていました。
自社開発したAIによって配送網の作成時間が8分の1に短縮され、ルートの数も1割減少しました。
これにより、輸送費を年間10億円以上削減でき、二酸化炭素排出量も年間1300トン削減できる見込みです。また、ドライバー不足に対応するための効率的なルート設計も可能になりました。
20. 教育業界における個別最適化学習|野田塾、学習指導

東海地方の大手学習塾である野田塾は、中学生向けの数学の授業にatama plus社のAI学習教材「atama+」を導入し、個別最適化学習を実現しました。
集団授業では生徒一人ひとりの理解度や苦手分野を把握することが難しく、個々に合わせた指導が十分に行えませんでした。また、生徒の学習状況をリアルタイムで確認することも困難でした。
生徒がタブレット端末で問題を解くと、AIが正解不正解の状況から苦手分野を分析し、一人ひとりに合わせた学習プランを提供するようになりました。
また、コーチング機能によって学習状況がリアルタイムで確認でき、先生は適切な声がけが可能になりました。授業時間の3〜4割をAI学習に充て、残りの時間で集団授業を行うことで、効果的な学習サイクルを構築しています。
21. 観光業界における多言語対応の強化|大阪観光局、インバウンド対応

大阪観光局は、2025年の大阪万博に向けて、多言語AIチャットボット「Kotozna laMondo」を導入し、観光案内の効率化と質の向上を実現しました。
増加する外国人観光客からの多言語での問い合わせに対応するには、多くの人員と時間が必要で、十分なサービスを提供することが難しい状況でした。
GPT-4を活用した多言語AIコンシェルジュにより、様々な言語での問い合わせに対して正確で信頼性の高い回答が提供できるようになりました。
大阪公式観光ウェブサイト「OSAKA-INFO」に導入され、今後は公式観光アプリ「Discover Osaka」でも利用可能になる予定です。これにより、多言語での観光情報提供が24時間365日可能となり、訪日外国人の満足度向上につながっています。
22. エンタメ業界における創作活動の効率化|レベルファイブ、ゲーム開発

『妖怪ウォッチ』や『イナズマイレブン』を手がけるゲーム会社のレベルファイブは、業務の様々な場面で生成AIを活用し、創作活動の効率化を実現しています。
ゲーム開発では、背景美術やキャラクター設定、コーディングなど多岐にわたる作業が必要で、これらの創作活動に多くの時間と労力を要していました。
画像生成AI「Stable Diffusion」を用いて群衆や建物などの背景美術の制作やゲームタイトル画面のレイアウト案出し、マップレイアウトの案出しなどを効率化。
また、LLM搭載チャット「ChatGPT」でキャラクターの設定案出しやクエスト・依頼の設定案出し、コーディングの補助を行い、音声生成AI「VOICEVOX」では仮ボイスの生成を行っています。これにより、開発工程の効率化と創造性の向上を同時に実現しています。
23. 自動車業界におけるデザイン開発の効率化|BMW、プロダクト開発

BMWは、デザイン工程において生成AIを積極的に活用し、車両部品のデザイン最適化を行っています。
複雑な部品デザインには多くの時間がかかり、手動での修正を何度も繰り返す必要がありました。また、美学と機能性を両立させた設計も困難でした。
「Data & AI Initiative」の一環として約400種類のAIアプリケーションを導入。生成AIがパターンや美学、機能性を考慮してデザインを生成することで、複雑な部品デザインを短期間で完了させることが可能になりました。
エンジニアとデザイナーがより協力しやすい環境が整い、デザイン段階のリードタイムが大幅に短縮されています。また、生成AIは従来の手動デザインでは難しかった精密で均整のとれた形状を短期間で提案するため、革新的なデザインの創出にも貢献しています。
業務領域別の生成AI活用事例
最後に取り上げる、業務領域別の事例は以下の通りです。
事例の概要 | 業務領域 | 企業名 |
---|---|---|
広告画像AI生成 | マーケティング/PR | コカ・コーラ |
応接記録自動化 | 営業 | 横浜銀行・東日本銀行 |
請求書処理自動化 | 経理 | 弥生会計 |
車載映像説明生成 | システム開発 | 日立製作所 |
24. マーケティング業務におけるAI活用事例|広告・PR、クリエイティブ生成

日本コカ・コーラは独自の画像生成AIツール「Create Real Magic」を一般公開し、消費者参加型の広告キャンペーンを実現しました。
専門のデザイナーによる一方通行の広告制作が主流で、消費者との双方向コミュニケーションに課題がありました。
消費者がテーマやスタイルを選ぶだけでオリジナルのクリスマスカードを生成できるようになり、生成された画像は屋外広告やSNSで紹介されました。
クリスマスカード生成コンテストでは12万点以上の画像が集まり、ブランドへの親近感とロイヤリティ向上に成功しています。
25. 営業業務における業務効率化事例|横浜銀行、応接記録管理

横浜銀行は営業応接記録の管理にAIを導入し、確認作業の効率化と品質向上を実現しました。
金融商品販売時の営業応接記録確認は人手に頼っており、役職者の負担が大きく、チェック品質にもばらつきがありました。
CRM「F3」と自然言語処理エンジン「KIBIT」を連携させ、記録内容の一次チェックを自動化。AIが文章を観点ごとにスコア付けし、役職者の負担を削減するとともに、確認作業の品質も標準化されました。人間が確認すべきポイントが明確になり、効率的な業務遂行が可能になっています。
26. 経理業務における労働時間削減事例|弥生会計、請求書処理

弥生会計と請求書AIクラウド「LayerX INVOICE」の連携により、経理業務の効率化を実現しました。
中小企業の経理担当者は様々な形態の請求書を手作業で処理し、会計ソフトに入力する必要があり、入力ミスのリスクも高い状況でした。
AI-OCRが請求書を自動でデータ化し、仕訳や振込データを自動作成。このデータが弥生会計に自動反映され、会計帳簿や決算書も自動生成されるようになりました。請求書の受領から会計処理までが効率化され、経理担当者はより付加価値の高い業務に時間を割けるようになっています。
27. システム開発における生成AIの活用|日立製作所、自動車関連

日立製作所は、生成AIを活用した高度な説明文自動生成システムを開発し、車載カメラ映像からの情報抽出を効率化しました。
自動車メーカーや車載器ベンダーはソフトウェア開発の際、車載カメラの映像・走行データなどをもとに開発を行っていましたが、膨大なデータから交通状況を把握するための部分抽出作業に長時間を要していました。この作業は専門知識と高い集中力が必要で、開発期間の長期化やコスト増加の要因となっていました。
生成AIと日立の自動車分野のナレッジを組み合わせて、車載カメラ映像から交通状況に関する高度な説明文を自動生成するシステムを開発しました。これにより、従来は手作業で行っていた映像データからの情報抽出作業が不要になり、必要な情報を瞬時に検索できるようになりました。
開発期間の短縮やコスト低減を実現し、2024年9月までの実用化を目指しています。生成AIの特性を活かした自然言語処理によって、大量の映像データを有用な情報へと変換する技術は、システム開発の効率化に大きく貢献しています。
生成AIとその他のAIの違い

AIという概念は非常に広範です。基本的には膨大な情報を読み取って「判断を行う」(分類問題)であったり、「予測する」(回帰問題)ことができます。
従来の非AI系システムでは、あらかじめ人間が「AであればB」のように処理のロジックを決めておく必要がありました。しかし、需要予測や人間の顔認識など複雑なタスクの場合、明確なロジック化が難しいケースが多く存在します。これらの複雑な判断をデータから学習して処理するのが従来のAIの強みでした。
生成AIは、こうした従来のAIとは一線を画しています。従来のAIが主に与えられたデータから「分類」や「予測」を行うのに対し、生成AIは学習したデータから全く新しいコンテンツを「創造」することができます。
例えば、従来のAIが画像を「猫」か「犬」か判断するのに対し、生成AIは「青い目のメインクーンの猫」といった具体的な指示から、そのような猫の画像を新たに作り出せるのです。
この「生成」能力により、文章作成、画像生成、コード開発、製品デザインなど、これまでAIが不得手だった創造的業務への適用が可能になりました。
生成AIを企業が活用する時のポイント

生成AIを企業が活用する際は、以下の4つのポイントに注意しましょう。
- 生成AIで解決したい課題を明確にする
- 上手くいくのか小規模検証(PoC)を行う
- 業務への定着など運用面まで管理する
- 活用データを見て継続的に改善していく
1. 生成AIで解決したい課題を明確にする

生成AIの導入を成功させるためには、まず解決したい課題を具体的に特定することが重要です。単に「AIを導入したい」という動機では効果を最大化できません。
「社内文書作成や翻訳業務の効率化」といった明確な目標を設定し、それに合わせた生成AIの活用方法を検討しましょう。また、課題解決によってどれくらいの効果(時間短縮、コスト削減、品質向上など)が見込めるかも試算しておくことで、投資対効果を測定できます。
2. 上手くいくのか小規模検証(PoC)を行う
大規模な導入の前に、小規模な検証(Proof of Concept)を実施することが重要です。特定の部門や限られたユースケースで試験運用を行い、実際の業務での有効性を確認しましょう。
また、PoCでは技術面だけでなく、ユーザー体験や既存システムとの連携、セキュリティ面など様々な観点から検証することが重要です。

検証結果をもとに問題点を洗い出し、本格導入前に対策を講じることで、スムーズな展開が可能になります。
3. 業務への定着など運用面まで管理する

生成AIの導入は技術的な実装だけでなく、組織への定着も重要な課題です。生成AIのシステム開発手法やツールを社内で整備し、全社的に展開する計画を立てることで、組織全体への浸透を図ることができます。
また、利用者向けのトレーニングやサポート体制の構築、適切な利用ガイドラインの整備も不可欠です。特に、生成AIの出力結果の品質チェックやセキュリティリスクへの対応など、運用面での管理体制を整えることが重要です。
4. 活用データを見て継続的に改善していく
生成AIの活用は導入して終わりではなく、継続的な改善が必要です。利用状況や効果測定のデータを収集・分析し、さらなる改善につなげることが重要です。
パフォーマンスのモニタリング、ユーザーからのフィードバック収集、最新の生成AI技術の動向把握などを通じて、常に進化し続けるシステムを目指しましょう。
また、業務プロセスそのものの見直しも並行して行うことで、AIとヒトの最適な協働体制を構築することができます。
生成AIシステムの開発・導入ならニューラルオプト
弊社ニューラルオプトは、Open AIが展開するChat GPTの日本向け開発にも携わっているなど、AI開発については深い知見を持っているのが強みです。
DXの重要性が高まる中、画像認識システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。お客様のビジネス成長に貢献するため、全力でサポートいたします。