社内向けチャットボット導入事例10選|社内問い合わせ対応を効率化
近年、社内業務の効率化を目指す企業において、チャットボットの導入が急速に進んでいます。従来の電話やメールによる問い合わせ対応から、AIを活用した自動応答システムへの転換により、多くの企業が劇的な業務改善を実現しています。
本記事では、実際にチャットボットを導入し、具体的な成果を上げた日本企業10社の事例を、5つの成果軸に分けてご紹介します。問い合わせ対応時間の削減、投資回収の実現、ナレッジの一元化、グローバル展開、現場主導の継続改善など、それぞれの企業が直面した課題と解決策を詳しく解説いたします。
なお、以下の記事ではチャットボットも含めたAIの活用事例を網羅的にまとめています。ぜひ合わせてご覧ください。

社内からの問い合わせ対応時間を大幅削減した事例
この軸では、以下の2社の事例をご紹介します。
- ダイキン工業株式会社:電話工数を1/3に削減した事例
- 株式会社エス・エム・エス:月400時間の削減を実現した事例
ダイキン工業が電話工数を1/3に削減した事例

項目 | 内容 |
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企業名 | ダイキン工業株式会社 |
業界 | 製造業(空調機器) |
ビフォー | ITヘルプデスクが電話・メール応対に追われ、問い合わせログも分散していた |
アフター | AIチャットボットが月3,700件を自動応答し、電話工数を1/3に削減。正答率は70-80% |
ダイキン工業では、働き方改革の一環として情報探索時間の短縮が急務となっていました。同社が導入したAIチャットボット「CAIWA Viii」は、IT・経理など6つの部門で活用され、現場スタッフが自走で運用を行っています。
特筆すべきは、わずか2か月という短期間で安定稼働を実現した点。これは事前のPoC(概念実証)から本格導入まで、現場の声を反映しながら段階的に進めた結果です。
また、問い合わせログを分析してFAQの改善を継続的に行う高速PDCAサイクルを構築し、社員のユーザーエクスペリエンス向上と属人化防止を両立させました。国内従業員約3万人という大規模組織での成功事例として、他の製造業企業にとって参考価値の高い取り組みといえるでしょう。
エス・エム・エスが月400時間の削減を実現した事例

項目 | 内容 |
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企業名 | 株式会社エス・エム・エス |
業界 | 人材・介護ソリューション |
ビフォー | 月4,000件超の社内問い合わせが経営管理部に集中し、月666時間の工数ロスが発生 |
アフター | チャットボット導入で問い合わせ25%削減、月400時間の工数削減を達成 |
エス・エム・エスでは、働き方改革により「問い合わせ削減」が経営指標として設定される中、部門ごとに散在するマニュアルが情報探索の阻害要因となっていました。同社の成功要因は、管理部門の既存オペレーションを変更せずにスモールスタートを実現した点にあります。
導入期間はPoC開始から全社展開まで約2か月という短期間で、社内満足度は90%を超える高い評価を獲得。現場スタッフがFAQの自走改善を行う仕組みを構築し、継続的な効果向上を実現しています。
さらに、蓄積されたFAQログを活用して営業向けナレッジの拡充も計画しており、チャットボットを起点とした組織全体の情報共有改善に取り組んでいます。連結従業員約4,500名という規模での成功事例として、人材サービス業界での展開可能性を示した事例です。
半年以内に投資回収 & コストを圧縮した事例
この軸では、以下の2社の事例をご紹介します。
- 日新火災情報システム株式会社:6か月でROIを達成した事例
- リコージャパン株式会社:3か月で電話1,000件削減した事例
日新火災情報システムが6か月でROIを達成した事例

項目 | 内容 |
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企業名 | 日新火災情報システム株式会社 |
業界 | 保険ITサービス |
ビフォー | 定型FAQでも有人対応が常態化し、1件あたり平均5分の対応工数が発生 |
アフター | チャットボットが問い合わせの75%を自動回答、一次対応コストを約50%削減 |
日新火災情報システムでは、DX予算に対して「半年以内に効果証明」というCFOからの厳しい要件が設定されていました。同社の成功要因は、導入から効果測定まで一貫したROI重視のアプローチを採用した点にあります。
約4か月という短期間での導入を実現し、チャットボットの自然言語処理機能により複数の意図を正確に判定する仕組みを構築。特に注目すべきは、ダッシュボード機能を活用してFAQ更新の優先度を自動提示する仕組みです。
これにより、ITヘルプデスク担当者の負荷軽減と同時に、問い合わせ傾向の可視化による継続的なROI確保を実現しました。社員1,500名規模での導入事例として、中堅企業におけるチャットボット活用の実践的なモデルケースといえるでしょう。
リコージャパンが3か月で電話1,000件削減した事例

項目 | 内容 |
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企業名 | リコージャパン株式会社 |
業界 | OA機器・ICT |
ビフォー | 経理部に1日30〜40件の電話が集中し、在宅勤務への移行も困難な状況 |
アフター | リリース後3か月で電話1,000件削減を達成、約100時間相当の工数削減 |
リコージャパンでは、機能集約により問い合わせが集中し、働き方改革の阻害要因となっていました。同社の特筆すべき点は、投資決定から稼働まで約2か月、実装期間はわずか2週間という驚異的なスピードでのカットオーバーを実現したことです。
チャットボット導入により在宅勤務率50%達成を後押しし、6か月以内の投資回収見込みを実証。この成功を受けて、総務・人事版ボットの派生展開も計画されており、全社横展開への道筋を築きました。連結社員18,000名という大規模組織での迅速な導入事例として、OA機器業界をはじめとする幅広い業界での応用可能性を示しています。
経理部門での成功をテンプレートに、他部門への水平展開を視野に入れたPoC(概念実証)の進め方は、多くの企業にとって参考になる手法です。
複数部門のナレッジを一元化した事例
この軸では、以下の2社の事例をご紹介します。
- 富士通株式会社(人事部門):FAQ3,000件を一元化し電話窓口を廃止した事例
- パーソルテンプスタッフ株式会社:部門横断FAQで確認電話95%減を実現した事例
富士通がFAQ3,000件を一元化し電話窓口を廃止した事例

項目 | 内容 |
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企業名 | 富士通株式会社(人事部門) |
業界 | ICT |
ビフォー | 国内8万人から毎月16,000件の人事問い合わせが電話・メール中心で寄せられていた |
アフター | ChatAIがFAQ3,000件を一元化。一次応答100%をボット化し、電話窓口を廃止 |
富士通では、人事DXの一環として「問い合わせゼロ窓口」を目指す経営KPIが設定されていました。同社の成功要因は、超大規模なHRチャネルシフトとナレッジマネジメントの高度化を同時に実現した点にあります。
段階展開により12か月をかけて慎重に導入を進め、Teams連携によるマルチチャネル化を実現。特に注目すべきは、FAQカテゴリを1年間で10倍に拡充したことです。
これにより年間4万人時の削減効果を生み出し、国内従業員80,000名という超大規模組織での電話窓口完全廃止という画期的な成果を達成しました。人事部門での成功モデルとして、大企業におけるデジタル変革の実践例として高い参考価値を持つ事例といえるでしょう。
パーソルテンプスタッフが部門横断FAQで確認電話95%減を実現した事例

項目 | 内容 |
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企業名 | パーソルテンプスタッフ株式会社 |
業界 | 人材派遣 |
ビフォー | 部門ごとにバラバラのマニュアルが存在し、電話確認が常態化していた |
アフター | 自己解決率向上で問い合わせ時間95%以上短縮、検索時間も30分の1に短縮 |
パーソルテンプスタッフでは、拠点・部門間のナレッジ共有不足が大きな課題となっていました。同社の特徴的な取り組みは、社内システム「ジョブチェキ」にチャットボット機能を組み込み、部門横断FAQの一元化を実現したことです。
約3か月という比較的短期間での本番投入を実現し、AI FAQ型システムにより類義語にも強い検索機能を構築。カスタマイズ可能なUIにより、社内スタッフ向けの用途にも転用できる柔軟性を確保しました。
社内6,000名規模での導入により、従来30分かかっていた情報検索を1分に短縮し、確認電話を95%削減という劇的な改善効果を実現。人材派遣業界特有の多拠点・多部門運営における情報共有課題の解決策として、業界全体への展開可能性を示した事例です。
多言語・グローバル展開を成功させた事例
この軸では、以下の2社の事例をご紹介します。
- 日本航空株式会社(JAL):iPad連携ボットで自己解決率90%を達成した事例
- 株式会社LIXIL:60,000名150ヵ国対応の多言語チャットボット事例
日本航空がiPad連携ボットで自己解決率90%を達成した事例

項目 | 内容 |
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企業名 | 日本航空株式会社(JAL) |
業界 | 航空 |
ビフォー | 社内ポータルが肥大化し、情報探索に平均7分/件を要していた |
アフター | ChatPlusベースのボットでカバー率90%を達成、総務系問い合わせ30%削減 |
日本航空では、「JAL SMART AIRPORT」構想において現場のデジタル武装が急務となっていました。同社の成功要因は、多言語UIとiPad活用により、グローバル乗務員が即時自己解決できる環境を構築した点にあります。
トライアル3か月から全社展開へとスムーズに移行し、iPad×チャットボットによるモバイル完結型の運用を実現。特に注目すべきは、コロナ禍での顧客体験(CX)変動に柔軟に追従できた点です。
FAQ更新を1名体制で継続運用できる効率的な仕組みを構築し、国内外スタッフ3万人超という大規模な組織での安定運用を達成しました。航空業界特有の24時間365日体制と多国籍スタッフへの対応という課題を、モバイルファーストのアプローチで解決した先進事例といえるでしょう。
LIXILが60,000名150ヵ国対応の多言語チャットボットを導入した事例

項目 | 内容 |
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企業名 | 株式会社LIXIL |
業界 | 建材・住宅設備(グローバル) |
ビフォー | 月1,700件超のIT問い合わせが電話集中し、FAQ検索ヒット率が低迷 |
アフター | 緊急事態宣言下で1日500〜600件を自動応答、時間外対応も実現 |
LIXILでは、グローバル従業員の在宅勤務移行に伴い、サポート体制の24時間365日化が必要となっていました。同社の特筆すべき点は、60,000名・150ヵ国という超大規模なグローバル展開を、わずか3か月という短期間で実現したことです。
スマートフォン対応と多言語を前提とした設計により、地域や時間帯を問わない情報アクセスを可能にしました。FAQテキストマイニングによる継続的なチューニング機能を搭載し、キャラクター「あかりさん」による親しみやすい社内浸透策も効果的でした。
特に運用面では、3名体制かつ在宅でも回る低コスト運用を実現し、グローバル企業における持続可能なチャットボット運用モデルを確立。建材・住宅設備業界のみならず、多国籍企業全般にとって参考価値の高い国際展開事例です。
現場主体で継続改善できた事例
この軸では、以下の2社の事例をご紹介します。
- 島村楽器株式会社:問い合わせ95%自己解決、24/7対応を実現した事例
- 三井不動産商業マネジメント株式会社:14本のボットを1か月単位で展開した事例
島村楽器が問い合わせ95%自己解決、24/7対応を実現した事例

項目 | 内容 |
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企業名 | 島村楽器株式会社 |
業界 | 小売業(楽器・音楽教室) |
ビフォー | 店舗→本社の問い合わせが週50件発生し、営業時間外は翌日対応となっていた |
アフター | チャットプラス導入で問い合わせ95%減を達成、夜間も24時間365日自己解決を実現 |
島村楽器では、新サービス拡大に合わせて本社負荷を抑えながら、店舗の顧客体験向上が求められていました。同社の成功要因は、現場スタッフ主体でQ&A更新を行い、オペレーション適合率を維持する仕組みを構築した点にあります。
準備期間2か月で運用を開始し、2017年から継続的に改善を重ねています。特に注目すべきは、店舗スタッフがFAQ更新を担当することで、現場のリアルな課題に即したコンテンツ改善サイクルを実現したことです。無人対応と有人対応のハイブリッド運用により、カスタマーサティスファクション(CS)指標の向上も達成しました。
店舗スタッフ2,000名超という規模での現場主導型運用として、小売業界における持続可能なチャットボット活用モデルを示した事例といえるでしょう。
三井不動産商業マネジメントが14本のボットを1か月単位で展開した事例

項目 | 内容 |
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企業名 | 三井不動産商業マネジメント株式会社 |
業界 | 商業施設運営 |
ビフォー | 各施設・テナント・本社間の問い合わせがばらつき、窓口が混在していた |
アフター | 14本のチャットボットを1か月単位で素早くリリース、問い合わせを自動振り分け |
三井不動産商業マネジメントでは、71施設を支えるヘルプラインの負荷軽減と、現場の声を即時反映できる仕組みの構築が課題となっていました。同社の特徴的な取り組みは、現場(オペレーションセンター)が主体となってQ&A更新を行い、DX推進課が水平展開をサポートする体制を確立したことです。
部署・施設からの要望を受けて約1か月で個別ボットを公開する迅速な対応力を実現し、3シーン(顧客/社内/テナント)を「ChatPlus」で共通運用する効率性を追求。継続的なKPIとして満足度スコアとFAQヒット率を併用し、定量的な改善管理を行っています。
社内・テナント含む数万人規模での利用において、標準リードタイム1か月/ボットという機動力は、商業施設運営業界における現場主導型DXの成功モデルとして高く評価できる事例です。
社内チャットボット導入を成功へ導くポイント
チャットボット導入を成功させるためには、以下の5つのポイントが重要です。
目的を明確化する
チャットボット導入において最も重要なのは、導入目的を明確に定義することです。単に「業務効率化」という漠然とした目標ではなく、「問い合わせ対応時間の削減」「コスト圧縮」「ナレッジの一元化」など、具体的な課題解決を目指す必要があります。
前述の事例でも、ダイキン工業では「情報探索時間の短縮」、日新火災情報システムでは「半年以内の効果証明」といった明確な目的設定が成功につながりました。目的が曖昧なままでは、導入後の効果測定や改善方針の決定が困難になるため、関係者間での目的共有は必須といえるでしょう。
KPIを設定する
目的の明確化と合わせて、数値で測定可能なKPI(重要業績評価指標)の設定が不可欠です。問い合わせ件数の削減率、対応時間の短縮、自己解決率の向上など、定量的な指標を設定することで、導入効果を客観的に評価できます。
富士通の事例では「年間4万人時削減」、エス・エム・エスでは「月400時間削減」といった具体的な数値目標が設定され、実際に達成されています。KPIは導入前後の比較だけでなく、継続的な改善活動の指針としても機能するため、測定しやすく改善可能な指標を選ぶことが重要です。
利用部門を巻き込む
チャットボットの成功には、利用する現場部門の積極的な参画が欠かせません。IT部門主導の一方的な導入では、現場のニーズに合わないシステムになりがちです。
島村楽器や三井不動産商業マネジメントの事例では、現場スタッフがFAQの更新を担当する体制を構築し、継続的な改善を実現。パーソルテンプスタッフでも、部門横断での情報共有により実用性の高いナレッジベースを構築しました。

利用部門を巻き込むことで、システムの実用性向上と組織への定着促進を両立できます。
ナレッジの更新体制を整備する
チャットボットの効果を継続的に向上させるには、FAQやナレッジの更新体制整備が重要です。導入時に作成したコンテンツをそのまま放置していては、新しい問い合わせや業務変更に対応できません。
LIXILでは3名体制での運用、JALでは1名体制でのFAQ更新など、各社とも持続可能な更新体制を構築。ダイキン工業では問い合わせログを活用した高速PDCAサイクルにより、継続的な改善を実現しています。

更新担当者の明確化と定期的な見直しプロセスの確立が、長期的な成功の鍵となります。
小規模PoCを実施する
本格導入前の小規模なPoC(概念実証)実施により、リスクを最小化しながら効果を検証することが重要です。一部の部門や機能に限定してテスト運用を行い、課題を洗い出してから全社展開することで、失敗リスクを大幅に軽減できます。
リコージャパンでは経理部門でのPoC成功を受けて全社横展開を計画し、エス・エム・エスでも1か月のテスト運用を経て全社公開を実現。小規模PoCにより現場の反応や技術的課題を事前に把握し、本格導入時の品質向上と期間短縮を両立させることが可能になります。
社内チャットボット導入支援ならニューラルオプト
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