営業活用における生成AIの活用事例!成約率3倍や9割の工数削減など
営業業務における生成AI活用が、日本企業で急速に広がっています。資料作成の時間短縮から売上向上まで、その効果は多岐にわたります。
本記事では、パナソニックやNEC、ソフトバンクなど大手企業8社の生成AI営業活用事例を、4つの成果軸に分けて詳しく解説。各社が公式発表した具体的な数値とともに、導入前後の変化を明らかにします。営業部門でのAI導入を検討している方にとって、実践的な参考情報となるでしょう。
なお、以下の記事では生成AIの活用事例について詳細にまとめています。ぜひ合わせて参考にしてみてください。

業務効率化・コスト削減事例

営業活動における時間的負担を大幅に軽減し、コスト削減を実現した事例をご紹介します。以下の3社が該当します。
- パナソニック コネクト「ConnectAI」による時間削減事例
- ソフトバンク法人営業GPT環境による定着成功事例
- 三井住友FG「SMBC-GAI」による社内標準化事例
パナソニック コネクトが年間18.6万時間削減した事例

パナソニック コネクト、生成AI導入1年で労働時間を18.6万時間削減、製品設計の品質管理にも活用 | IT Leaders
項目 | 内容 |
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企業名 | パナソニック コネクト |
業界 | 製造業 |
ビフォー | 営業資料作成・情報検索に平均20分/タスク |
アフター | 1年間で18.6万時間削減を実現 |
パナソニック コネクトでは、多品種商材を扱う営業現場で資料作成が大きな負担となっていました。特に若手営業担当者にとって、膨大な商品情報から適切な提案資料を構成することは時間のかかる作業でした。
同社が開発した社内生成AI「ConnectAI」は、Azure OpenAIをベースとしたRAG(Retrieval-Augmented Generation)システムです。全社員1.24万人が安全に利用できるセキュアな環境を構築し、社内データベースと連携することで、営業担当者が必要な情報を瞬時に取得・加工できるようになりました。
導入後の成果は劇的で、部門横断でプロンプト(AIへの指示文)を棚卸し、再利用率60%を実現。Teamsに常駐するボット形式で提供することで、利用申請の手続きを不要とし、全社での定着を促進しました。KPIを「創出時間」に一本化することで、経営層への報告も明確化しています。
ソフトバンクが定着率7割を達成した法人営業GPT事例

生成AIを使いこなすことがお客さまへの提案力強化に。数千人が活用する営業活動支援ツール – ITをもっと身近に。ソフトバンクニュース
項目 | 内容 |
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企業名 | ソフトバンク |
業界 | 通信業 |
ビフォー | 商材拡大により商談準備作業が肥大化 |
アフター | 導入3か月で数千人利用・定着率7割達成 |
ソフトバンクの法人営業部門では、従来の回線サービスに加えて複合的なITソリューション提案が増加し、営業担当者の情報収集・資料作成負荷が増大していました。提案書の下書き作成だけで60分程度を要していたのが課題でした。
同社は、Azure OpenAIベースの社内GPT環境を構築し、50種類のプロンプトをプリセットしたTeams連携ツールとして提供。営業担当者が用途に応じて適切なプロンプトを選択できる仕組みを整備しました。
結果として、提案書作成時間を15分まで短縮し、導入から4か月後には定着率70%を達成。部署独自のプロンプトライブラリを公開することで、ノウハウの共有も促進されています。生成された資料は自動的にBoxに保存され、バージョン管理も効率化されました。
三井住友FGが「2秒に1回」利用される社内標準ツール化した事例

SMBCグループが独自に生み出したAIアシスタント「SMBC-GAI」開発秘話 | DX-link(ディークロスリンク)- 三井住友フィナンシャルグループ
項目 | 内容 |
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企業名 | 三井住友フィナンシャルグループ |
業界 | 銀行業 |
ビフォー | 社内検索・翻訳機能が分散、外部GPT利用禁止 |
アフター | Teams常駐AIが「2秒に1回」呼び出される標準ツールに |
三井住友フィナンシャルグループでは、個人情報保護の観点から外部のGPTサービス利用を禁止していました。しかし、社員の情報検索・翻訳作業が断片化し、業務効率の低下が課題となっていました。
同社が開発した「SMBC-GAI」は、Microsoft 365と連携したTeams常駐型のAIアシスタントです。ガイドライン策定を先行して行い、全社員が安心して利用できる環境を4か月で構築しました。
導入後は「2秒に1回」という高頻度で呼び出される社内標準ツールとなり、参照URLの自動表示機能によってファクトチェックも徹底。コールセンター向けFAQ生成など、営業以外の業務での活用も拡大しています。
売上を伸ばした事例
生成AIを活用して直接的な売上向上を実現した事例をご紹介します。以下の2社が該当します:
- NEC「BestMove」による施策立案サイクル短縮事例
- 三井住友海上「MS1 Brain」による成約率向上事例
NECが提案サイクル70%短縮を実現したBestMove事例

NEC、生成AIと消費者購買データを活用したマーケティング施策立案ソリューション「BestMove」を提供開始 (2025年5月27日): プレスリリース | NEC
項目 | 内容 |
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企業名 | 日本電気(NEC) |
業界 | IT・マーケティング支援 |
ビフォー | 顧客クラスタリングと施策検討に2~3週間 |
アフター | 生成AIで比較可視化し提案サイクル70%短縮 |
NECでは、マーケティング施策の立案において経験則に頼った提案が多く、確度の低い施策によってPDCAサイクルが回らない課題を抱えていました。顧客データの分析から施策検討まで2~3週間を要していたのが実情です。
同社が2025年6月に提供開始した「BestMove」は、購買データと生成AIを組み合わせたマーケティング施策立案ソリューション。フェルミ推定を自動的にグラフ化し、最適な施策をワンストップで提示する仕組みを構築しました。
月額30万円からのSaaSモデルで提供し、候補施策の即日比較・可視化を実現。5年間で150社への導入を目指し、30億円の売上目標を掲げています。PoC(概念実証)から正式版リリースまでわずか4か月で完了させたスピード感も特徴的です。
三井住友海上が成約率3倍を達成したMS1 Brain事例

三井住友海上火災保険 AIがパーソナライズした保険で成約率が3倍に | dotData
項目 | 内容 |
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企業名 | 三井住友海上火災保険 |
業界 | 保険業 |
ビフォー | 代理店営業が経験則頼みで成約率低迷 |
アフター | AIレコメンドで成約率3倍を実現 |
三井住友海上では、全国の代理店による保険提案が属人化し、個別のニーズ発掘が遅延する課題がありました。経験豊富な営業担当者とそうでない担当者の間で提案品質に大きな差が生じていたのが実情です。
同社が導入した「MS1 Brain」は、全国3.8万の代理店が利用するAIレコメンド基盤。AWS上でスケールするシステムを構築し、リアルタイム学習によって顧客ニーズの兆候を自動検知します。
結果として成約率が3倍に向上し、顧客体験も同時に改善。ニーズ兆候の自動検知によってタイムリーな提案通知を実現し、顧客本位の提案プロセスを全体最適化しました。2020年2月の稼働開始以降、2024年には機能拡張版もリリースされています。
顧客体験を向上した事例
顧客との接点において、より良い体験を提供することに成功した事例をご紹介します。以下の2社が該当します。
- Sansan「AI人物プロフィール」による商談準備効率化事例
- 富士通「Kozuchi AI Agent」による会議運営自動化事例
Sansanが準備工数を大幅削減したAI人物プロフィール事例

営業DXサービス「Sansan」、Sansan Labsに「AI人物プロフィール」を実装~Web上の情報をAIが収集し、商談相手の経歴や仕事内容を要約~ | Sansan株式会社
項目 | 内容 |
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企業名 | Sansan |
業界 | SaaS(営業DX) |
ビフォー | 商談相手調査に平均20分/件の手作業 |
アフター | 氏名+企業名入力で1分要約、準備工数95%削減 |
Sansanでは、営業担当者が商談前に行う顧客情報調査において、Web上に散在する情報の収集・整理に多大な時間を要していました。特に若手営業担当者にとって、事前調査の負荷が商談準備の大きなボトルネックとなっていました。
同社がSansan Labsに実装した「AI人物プロフィール」は、氏名と企業名の入力だけで人物要約を自動生成する機能。GPTを活用して名刺データとWeb情報を組み合わせ、商談相手の詳細なプロフィールを1分で作成します。
追加コスト0円のLabs機能として提供し、β版から正式版まで3か月で完了。利用社数は公開時点で8,000社以上に達し、提案シナリオの自動生成など追加機能も毎四半期ごとに拡充されています。名刺データと生成AIの組み合わせにより、顧客理解の解像度を大幅に向上させました。
富士通が1日17万回利用される会議AI環境を構築した事例

項目 | 内容 |
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企業名 | 富士通 |
業界 | ICT |
ビフォー | 会議メモ・意思決定が人海戦術で非効率 |
アフター | 会議AIが課題抽出~タスク分解まで自動化、1日17万回利用 |
富士通では、部門横断での知見共有が進まず、会議での課題抽出や意思決定プロセスが人海戦術に依存していました。結果として提案速度が低下し、顧客への迅速な対応が困難になっていました。
同社が開発した「Kozuchi AI Agent」は、ナレッジグラフ拡張RAGとトラスト監査機能を標準装備したAI会議アシスタント。会議中の課題抽出からタスク分解、次回提案の準備まで自動化を実現しています。
社内ユーザー数3.5万人が利用し、1年間で利用頻度が10倍に増加。1日17万回という高頻度での利用を達成し、ガバナンス機能として回答根拠の検証機能も標準装備しています。コンシューマー向け案件での外販も予定されており、社内利用からビジネス展開への発展も期待されています。
新サービス・新市場を開拓した事例
生成AIを活用して新たなサービス創出や市場開拓を実現した事例をご紹介します。該当事例は以下の通りです。
- NTTデータ「LITRON Sales」による自律型エージェント開発事例
NTTデータが稼働30%削減を見込む自律型エージェント事例

AIエージェントを活用した新たな生成AIサービスを提供開始 | NTTデータグループ – NTT DATA GROUP
項目 | 内容 |
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企業名 | NTTデータ |
業界 | ITサービス |
ビフォー | SFA入力・提案準備が手作業で非効率 |
アフター | 自律型エージェントが入力代行~提案草案まで自動化、稼働30%削減見込み |
NTTデータでは、SFA(営業支援システム)を導入した企業において、データ入力の負荷が定着の阻害要因となっていました。商談記録の入力から提案書の準備まで、多くの作業が手作業に依存している状況が続いていました。
同社が2024年11月にローンチした「LITRON Sales」は、SmartAgent™第1弾として提供される自律型AIエージェント。Salesforce APIと連携してリアルタイム更新を行い、入力代行から提案書の草案作成まで幅広い業務を自動化します。
年額600万円からの価格設定で、大手製造業3社でのPoC(概念実証)を実施中。2027年までに関連売上1,000億円の計画を掲げ、バックオフィス全体の自動化に向けたロードマップも公開。営業業務の自動化から始まり、企業の業務プロセス全体のDX化を目指す戦略的な取り組みとして注目されています。
生成AIを営業活動に活用するメリット
生成AI導入による営業活動への効果を、具体的な観点から整理します。以下の4つのメリットについて解説します。

売上・利益への直接的な影響を数値化できる
生成AI導入による営業成果は、定量的な測定が可能です。前述の三井住友海上では成約率が3倍に向上し、パナソニック コネクトでは年間18.6万時間の削減を実現しました。
重要なのは、時間削減効果を金額換算すること。営業担当者の平均時給を4,000円と仮定した場合、パナソニックの事例では年間約7.4億円相当の効果となります。

成約率向上は直接的な売上増加につながるため、ROI(投資収益率)の算出も容易になります。
人員採用よりもAI投資が費用対効果に優れる
営業人員の増員と比較して、生成AI投資の費用対効果は非常に高くなっています。新卒営業担当者1名の年間コストを600万円(給与・教育・管理費込み)とした場合、NTTデータのLITRON Salesと同等の年額費用で、複数名分の作業効率化が実現可能です。さらに、AI導入には採用リスクや離職リスクがなく、24時間稼働が可能です。

人材不足が深刻化する中で、持続可能な営業力強化手段として注目されています。
データ活用レベルに応じて段階的な成果が期待できる
企業のデータ活用成熟度に応じて、生成AI導入効果も段階的に向上します。基本レベルでは資料作成の時間短縮、中級レベルでは顧客分析の高度化、上級レベルでは予測分析による提案精度向上が期待されます。

ソフトバンクの事例のように、まずは既存のTeams環境でプロンプト活用から始め、段階的に高度な機能を追加していく アプローチが現実的です。
競合他社との差別化が加速度的に進む
生成AI活用企業と非活用企業の差は、時間経過とともに拡大します。NECのBestMoveのように、提案サイクルを70%短縮できれば、同じ期間で約3倍の提案機会を創出可能になります。

この差は累積的に拡大し、市場シェアに大きな影響を与えることになります。
営業における生成AI活用で成果を最大化するポイント
生成AI導入の効果を最大化するための重要なポイントを整理します。以下の4つの観点から解説します。

効果的なユースケースから段階的に展開する
成功確率を高めるためには、効果測定が容易で、かつ業務負荷が高い領域から導入することが重要です。パナソニックやソフトバンクの事例では、資料作成という明確で頻度の高い業務から開始しています。
推奨される導入順序は、①資料作成支援、②情報検索・要約、③顧客分析、④予測・レコメンド機能の順番。各段階での成果を確認しながら、次のレベルに進むアプローチが効果的です。
営業プロセス全体との一貫した連携を図る
単発的な業務効率化ではなく、営業プロセス全体を通じた一貫した顧客体験向上が重要になります。Sansanの事例では、商談前の情報収集から提案書作成まで、一連のプロセスでAI活用を統合しています。
CRM(顧客関係管理)システムやSFA(営業支援システム)との連携により、データの一元管理と活用の最適化を実現。営業担当者の作業負荷を減らしながら、顧客への提案品質を向上させることが可能です。
データ品質とプロンプト設計を継続的に改善する
生成AIの精度は、投入するデータの品質とプロンプト(指示文)の設計に大きく依存します。三井住友FGでは、ガイドライン策定を先行して実施し、全社での品質担保を実現しました。
定期的なプロンプトの見直しと、利用ログの分析による改善が必要。特に、業界特有の専門用語や商談パターンを反映したカスタマイズが、実用性向上の鍵となります。
継続的な改善のためのKPI設定と監視体制を構築する
導入効果を持続的に向上させるためには、適切なKPI設定と定期的な監視が不可欠です。パナソニックでは「創出時間」を主要KPIとして設定し、経営層への報告体制も整備しています。
推奨KPIは、利用率・時間削減効果・品質スコア・顧客満足度の4つ。月次でのモニタリングと四半期での改善施策検討により、持続的な成果向上を実現できます。
営業活動に生成AIを導入する時の注意点
生成AI導入を成功させるために、事前に把握しておくべき重要な注意点を解説します。以下の3つの観点から対策を整理します。

顧客データ漏洩リスクを事前に防止する
生成AI活用において最も重要なのは、顧客データの安全性確保です。三井住友FGが外部GPTサービスの利用を禁止したように、機密情報の取り扱いには細心の注意が必要になります。対策として、①社内環境での生成AI構築、②データの暗号化・アクセス制御、③利用ログの監視体制構築が基本です。

特に、Azure OpenAIのような企業向けサービスを活用し、データの外部流出を防ぐことが重要です。
著作権・ガイドライン遵守を徹底する
生成AIが作成したコンテンツには、著作権侵害のリスクが潜んでいます。特に、営業資料や提案書において、既存の著作物と類似した内容が生成される可能性があります。社内ガイドラインの策定と、生成コンテンツの事前チェック体制が必要です。

生成AIの出力結果をそのまま使用するのではなく、人間による最終確認と修正を必須とする運用ルールの整備が重要です。
ブラックボックス化を避け説明責任を担保する
生成AIの判断プロセスが不明確だと、顧客への説明責任を果たせません。富士通のKozuchi AI Agentでは、回答根拠の検証機能を標準装備することで、この課題に対応しています。推奨対策は、①参照データソースの明示、②判断ロジックの可視化、③人間による最終判断の確保。

特に、重要な提案や契約判断においては、AIの出力を参考情報として活用し、最終決定は人間が行う体制の維持が必要です。
営業課題解決ならニューラルオプト
生成AI営業活用の成功には、技術導入だけでなく課題起点での戦略設計が重要です。合同会社ニューラルオプトは、世界的生成AIであるChatGPTの開発に携わるAI開発企業として、「失敗リスクを最小化する」をコンセプトに総合的な支援を提供しています。
単なる開発依頼ではなく、営業プロセスの課題分析から解決策の提案、組織への定着支援、運用改善まで一貫してサポート。データサイエンスの知見を活かしたデータマイニングやテキストマイニングにも対応し、eBayの価格自動設定AIや手書き文字認識システムなど、実績豊富な開発力を保有しています。