YouTubeはスクレイピング禁止?できる自動化や企画への活用方法
YouTubeは動画共有プラットフォームの中でも圧倒的なシェアを誇り、多くの企業がマーケティングや情報発信の場として活用しています。そんなYouTubeのデータを自動で収集したいと考える方も少なくないでしょう。そこで注目されるのがスクレイピングです。
しかし、YouTubeの利用規約を見ると、スクレイピングを禁止しているような記載があります。では実際のところ、YouTubeのスクレイピングは可能なのでしょうか。本記事では、YouTubeのスクレイピングについて詳しく解説します。
なお、スクレイピングについては以下の記事も合わせてご覧ください。

【結論】YouTubeはスクレイピングよりAPIを使うべき
YouTubeのデータを自動取得する際は、スクレイピングよりもAPIの利用がおすすめです。
YouTubeの利用規約を確認すると、スクレイピングは禁止されていると解釈できます。また、YouTubeは動的なWebサイトなので、スクレイピングの実装は技術的に難しくなります。
一方、YouTube Data APIを使えば、動画の情報を安定的に取得できます。APIから得られるデータは、動画のパフォーマンス分析やコンテンツ企画にも活かせるでしょう。
スクレイピングは規約違反・安定しない
まず、YouTubeの利用規約を見てみると、次のような一文があります。
「本サービスまたはコンテンツのいずれかの部分に対しても、アクセス、複製、ダウンロード、配信、送信、放送、展示、販売、ライセンス供与、改変、修正、またはその他の方法での使用を行うこと。」
この記述から、YouTubeはスクレイピングを禁止していると解釈できます。
さらに、YouTubeは動的なWebサイトであり、JavaScriptを多用しています。そのため、スクレイピングの難易度は高くなります。HTMLソースコードを解析するだけでは必要なデータが取得できないケースが多々あるでしょう。
以上の点から、YouTubeに対してスクレイピングを行うのはおすすめできません。規約違反であるうえ、安定的にデータを取得し続けるのは容易ではないのです。
YouTube Data APIを利用する
YouTubeからデータを取得する場合は、スクレイピングではなくAPIを利用するのが賢明です。YouTubeは公式のData APIを提供しており、これを使えば動画の情報を取得できます。
以下のようなデータをAPIから取得可能です。
- 動画の基本情報(タイトル、説明文、再生回数、いいね数など)
- チャンネルの情報(登録者数、総再生回数など)
- 再生リストの情報
- コメントのデータ
APIの利用には審査がありますが、一度承認されれば安定的にデータを取得し続けられます。利用制限はありますが、個人で利用する分には十分な量と言えるでしょう。
高再生数を狙える企画提案にも活用できる
YouTubeのData APIで取得したデータは、コンテンツ企画にも役立てられます。
例えば、ある検索キーワードでどのようなトピックの動画が人気なのかを把握したいとします。その場合、APIを使って検索結果の動画情報を取得し、それらの再生回数を分析すれば良いのです。
このように検索キーワードの結果を出せるので、投稿する前からそのテーマの検索結果をスクレイピングし、ある程度の再生回数を推測したうえで制作することが可能になります。テーマAの動画の平均再生回数とテーマBで比較すれば、どちらのテーマで動画を作るべきかの判断材料になるでしょう。
APIを活用すれば、再生回数が期待できるテーマを選んでコンテンツを制作できます。ヒット作を生み出す確率が高まると言えそうです。
YouTubeで自動取得できる情報(API利用含め)
YouTube Data APIを利用すると、様々な情報を自動で取得できます。ここでは、APIから取得可能な主要な情報について解説します。
動画関連の公開情報
APIから取得できる動画関連の情報は以下の通りです。
- 動画ID:動画を一意に識別するID
- タイトル:動画のタイトル
- 説明文:動画の説明文
- サムネイルURL:動画のサムネイル画像のURL
- 公開日:動画が公開された日付
- カテゴリ:動画が属するカテゴリ
- 再生回数:動画の再生回数
- いいね数:動画のいいね数
- コメント数:動画のコメント数(publicデータ)
- 動画のステータス:非公開、限定公開、公開(自分の動画の場合は要認証)
- 関連付けられた再生リストやチャンネル情報
これらの情報を取得・分析することで、動画のパフォーマンスを把握したり、人気の動画の特徴を見出したりできます。再生回数やいいね数は動画の評価指標として特に重要でしょう。
チャンネル関連の公開情報
チャンネルに関しては、以下のデータを取得可能です。
- チャンネル名:チャンネルの名称
- チャンネルID:チャンネルを一意に識別するID
- チャンネル概要:チャンネルの説明文
- 登録者数:チャンネルの登録者数(公開範囲であれば取得可能)
- チャンネルの再生リスト:チャンネルに紐づく再生リスト
- チャンネルセクション:おすすめ動画リストなど
チャンネル情報からは、そのチャンネルの人気度や傾向を知ることができます。登録者数は影響力の大きさを示す指標の1つと言えるでしょう。
再生リスト
再生リストについては次の情報が取得できます。
- 再生リストのタイトル:再生リストの名称
- 説明:再生リストの説明文
- 公開状況:再生リストの公開範囲
- 再生リストに含まれる動画の一覧:動画IDや順番
- プレイリストの作成・更新・削除:自分のアカウントの場合
再生リストを分析すれば、関連性の高い動画をまとめて把握できます。人気の再生リストを参考にすれば、トレンドの動画を見つけられるかもしれません。
検索結果
APIを使えば、検索結果も取得可能です。対象は以下の通りです。
- 特定キーワード、チャンネル、再生リストなどの検索結果
- 動画、チャンネル、再生リストを対象にした検索(search result)
- ガイドカテゴリ、動画カテゴリなどのメタ情報
ユーザーがどのようなキーワードで検索しているのかを知れば、ニーズを捉えた動画を作れます。検索結果から関連動画を見つけるのにも役立つでしょう。
コメント
コメントに関しては、次のことができます。
- コメントのリスト取得、新規書き込み、編集、削除
- 自チャンネルの動画コメントに限り書き込み操作が可能
- チャンネルの購読状況(subscription)
- 認証済みユーザーの「購読しているチャンネル」一覧、購読解除など
視聴者の生の声であるコメントは、動画の評価を知る手がかりになります。自チャンネルのコメントは、視聴者とのコミュニケーションを図る際に重要です。
以上のように、YouTube Data APIを活用すれば、様々な情報を自動で取得し、分析に役立てられます。目的に合わせてうまくAPIを使いこなしていきましょう。
YouTubeでは自動取得が難しい情報
YouTube Data APIは多くの情報を提供してくれますが、全てのデータを取得できるわけではありません。ここでは、APIでは自動取得が難しい情報について説明します。
非公開データ
APIから取得できない非公開データは以下の通りです。
- 限定公開・非公開の動画情報:所有者以外のアカウントからは取得不可
- ユーザー個人の視聴履歴やアルゴリズム上の推奨動画
- ユーザー個人のチャンネル登録者リスト:相手が公開範囲を限定している場合
限定公開や非公開に設定されている動画の情報は、所有者アカウント以外からは取得できません。
ユーザーのプライバシーを守るためです。
また、各ユーザーへのおすすめ動画は、個人の視聴履歴やYouTubeのアルゴリズムに基づいて提示されます。そのため、他人のおすすめ動画を知ることは難しいでしょう。
さらに、チャンネル登録者リストは、相手が公開範囲を限定している場合は取得できません。これもユーザーのプライバシー保護が理由と言えます。
詳細なアナリティクスデータ
YouTubeチャンネル運営者向けに提供されるアナリティクスデータの中には、APIでは取得が制限されているものがあります。
- チャンネルの詳細な視聴維持率、地域別視聴データ、推定収益
- リアルタイムな詳細視聴状況(何秒視聴されたか等の生ログ)
これらは、YouTube Analytics APIの範囲内ではありますが、より詳細な指標は公開範囲やポリシーにより取得が制限されています。
例えば、推定収益や詳細な視聴維持率などの情報は、一般には公開されていません。YouTubeとしては、クリエイターのビジネス情報を保護する必要があるためです。
また、ユーザーがどの部分まで視聴したかといった秒単位の生ログは、プライバシーの観点から取得が制限されています。
以上のように、ユーザーのプライバシーやYouTubeのポリシーにより、APIで自動取得が難しいデータも存在します。非公開情報を無理に取得しようとすると、規約違反になりかねないので注意が必要です。
APIから取得できる情報を最大限活用しつつ、制限があることも理解しておくことが大切と言えるでしょう。YouTubeマーケティングを行う際は、これらの点を踏まえて適切なデータ取得・分析を心がけましょう。
【体験談込】YouTubeスクレイピングの活用例
ここまで、YouTubeのデータ取得についてスクレイピングとAPIの比較を中心に解説してきました。ここからは、私の体験も交えながら、YouTubeデータの具体的な活用例をいくつか紹介したいと思います。
再生数が多くなるテーマの事前予測
YouTubeのData APIでは、特定のキーワードで検索した動画の情報を取得できます。つまり、ある動画のテーマについて、事前にどの程度の再生回数が見込めるかを予測できるのです。
例えば、テーマAの動画の平均再生回数とテーマBの平均再生回数を比較してみましょう。統計学的には厳密な方法とは言えませんが、実際にやってみると、かなりの精度でどちらのテーマが人気を集めそうかが分かります。実際にこの方法を活用し、再生数の伸びが期待できるテーマを選んで動画制作に役立てられます。
アナリティクスレポートの自動生成
YouTubeのデータを活用する目的の1つに、どの動画が人気なのか、どの時間帯で再生数が伸びているのかを把握し、次回のコンテンツ計画に生かすことが挙げられます。
そこで活用したいのが、YouTube Data APIとYouTube Analytics APIです。これらのAPIを使って、動画の再生回数、いいね数、コメント数などのデータを取得し、BIツールやスプレッドシートと連携させれば、アナリティクスレポートの自動生成が可能になります。
また、視聴者の反応(コメントや高評価など)を追跡し、コミュニティとの相性や改善点を探ることもできます。コメントに関しては、Data APIのcommentやcommentThreadのlistメソッドを使って最新のコメントを取得し、感情分析やキーワード抽出を行うのが有効でしょう。
外部サービスとの連携(SNS告知など)
YouTubeチャンネルを運営する上で、SNSとの連携は欠かせません。新しい動画を投稿したら、自動でTwitterやFacebookなどにシェアし、視聴者を呼び込むことが理想です。
そこで役立つのが、YouTube Data APIのvideos.insertです。これを使えば、動画のアップロードが完了したことを検知できます。そこからWebhookやIFTTT/Zapierを利用してSNSに自動通知を送れば、手間なく動画の告知ができるようになります。
以上のように、YouTubeのデータを活用する方法は多岐にわたります。APIを駆使すれば、マーケティング戦略の精度を高められるでしょう。もちろん、先に述べたようにAPIにも制限はあるので、過度な期待は禁物です。しかし、APIから得られる情報を最大限に生かすことで、YouTubeチャンネルの運営を大きく前進させられると私は考えています。
皆さんも、本記事で紹介したデータ活用例を参考に、YouTubeマーケティングに取り組んでみてはいかがでしょうか。データに基づいた意思決定を行うことで、チャンネル運営の質を高められるはずです。YouTubeの可能性を広げるためにも、APIを賢く使いこなすスキルを身につけていきましょう。
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