海外マーケティングとは?まずやる施策3つ、成功の鉄則、落とし穴
海外マーケティングは、市場の大きい海外への進出にあたり欠かすことのできない施策。
しかし言語や文化、法律の違いが多く存在する海外マーケティングを成功させるには、どのようなポイントに気をつければ良いのでしょうか。
日本企業の海外進出支援や海外企業との国際取引を行い、国際マーケティングに知見を持つニューラルオプト代表の鈴木が、日本企業が海外に進出する際に留意すべきポイントについて解説していきます。法務・税務についても代表的な落とし穴を3つ取り上げますので、ぜひ参考にしてみてください。
海外マーケティングとは?国内向けと何が違う?
海外マーケティングとは、自社の製品やサービスを海外市場で販売するための戦略。国内市場とは異なる言語、文化、商習慣などを理解し、現地のニーズに合わせた価値を提供することが求められます。
近年では越境ECや訪日外国人向けインバウンドマーケティングがトレンドですが、それらも海外マーケティングに含まれる領域です。
国内・海外のマーケティングで大きく異なる点は3つ
・商品が与える便益:日本では必要とされる機能が、海外では不要だったり、逆に海外では重視される機能が日本では軽視されていたりすることがあります。例えば、日本ではシンプルなデザインが好まれる家電でも、中国では豪華な装飾が施された製品が人気です。
・各種規制:商品の安全基準や表示ルールなど、国ごとに規制が異なります。日本の基準をクリアしていても、進出先の国の規制に適合しない場合があるため注意が必要です。
・訴求すべき強み:日本製品の品質の高さは世界的に知られていますが、コストの高さがネックになることもあります。一方、デザイン性やブランドイメージで訴求できる場合もあるでしょう。自社製品の強みを再定義する必要があります。
海外マーケティングでまず行うこと3選
どのようなケースであれ、海外マーケティングでほぼ必ず行うことを3つ紹介していきます。まずは以下から着手すればよいでしょう。
- 市場調査・自社分析を行う
- 海外向けサイトを制作する
- 短期・顕在層向けの施策から行う
やること1. 市場調査・自社分析を行う
海外マーケティングを始める前に、進出先の市場環境を詳しく調査する必要があります。市場規模、競合他社、顧客ニーズ、規制などを把握しましょう。調査にあたってはSWOT分析やPEST分析といったフレームワークを活用すると良いでしょう。
なお、リサーチにおいてはまず以下のような情報は調べておきましょう。
調査項目 | 目的 | 調べ方 |
---|---|---|
人口・首都などの概況 | 概要を把握する | JETROの「概況・基本統計」 |
年齢別人口 | 市場規模を把握する | World Population Prospects |
GDP(国内総生産) GNI(国民総所得) PPP(購買力平価) など経済指標 | 市場規模・購買力を把握する | World Bank Open Data IMF DataMapper |
貿易投資動向 | ジェトロ世界貿易投資報告 | |
現地の競合の売上 | 市場規模を把握する | “社名 revenue”などで検索 |
現地の市場規模 | 市場規模を把握する | “国 業界 market share”や”国 商品 market share”などで検索 |
また自社の強み弱みを再確認し、現地市場で通用するかを見極めます。日本での強みが海外でも通用するとは限りません。3C分析で自社・顧客・競合を整理するのも有効です。
自社の現状を分析する際には、以下の項目は確認すべきです。
項目 | 詳細 |
---|---|
製品・サービスの特徴 | 現地の顧客ニーズに照らして、自社の製品・サービスの強みと弱みは何か。 |
価格競争力 | 現地の競合他社と比べて、自社の価格設定は適切か。 |
ブランド力 | 現地での自社ブランドの認知度や評価はどの程度か。 |
販売チャネル | 現地の顧客が利用するチャネルに適した販売体制が整っているか。 |
やること2. 海外向けサイトを制作する
実店舗ビジネスやBtoB、製造業など業種に関わらず、海外顧客からの問い合わせを受け付けるサイトは必須です。現地語での情報発信はもちろん、現地の文化や習慣に合わせたデザインやコンテンツ設計が求められます。
例えばサウジアラビアでは神聖な意味を持つ緑色をサイトで多用すると好印象です。お問い合わせフォームも国ごとに最適なフォーマットを用意しましょう。諸外国では「名・姓」の順番が逆であったり、州名の入力が必要だったりします。
海外向け多言語サイト制作については以下の記事でも詳しく解説しています。
やること3. 短期・顕在層向けの施策から行う
海外マーケティングですぐに成果を出すためには、すでに自社製品に興味を持っている顕在層にアプローチするのが効果的です。
例えば、現地のポータルサイトに企業情報を登録したり、リスティング広告で自社製品名の検索需要を取り込んだりするのがおすすめです。
また、現地パートナーとの提携も検討しましょう。代理店を通じた販売は、言語の壁や商習慣の違いを乗り越える近道になります。展示会への出展で代理店候補を見つけたり、日本貿易振興機構(JETRO)の支援を活用するのも一案です。
海外マーケティングは言語や文化の違いに悩まされるのが常ですが、市場調査を入念に行い、顕在化した層へしっかりアプローチすることで、成功への道筋が見えてきます。まずは一歩を踏み出すことが肝心です。
海外マーケティングで役立つ施策まとめ
海外マーケティングにおいて特に役立つ施策をまとめて紹介していきます。
取り組むべき時期 | |
---|---|
海外進出する前 | 階段状のコンバージョン設計 |
現地エージェント探し | |
物流の仕組み構築 | |
海外進出した初期 | リスティング広告 |
顕在層向けの海外SEO対策 | |
コンバージョン直前の導線整理 | |
O2Oマーケティング | |
顧客インタビュー作成 | |
事業成長・拡大段階 | 口コミ/レビューマーケティング |
潜在層向けの海外SEO対策 | |
SNS広告 | |
SNSアカウント運営 | |
OMOマーケティング |
海外進出の前にすべきマーケティング準備
海外進出を本格的に始める前に行っておくべきマーケティング準備は以下のとおりです。
- 階段状のコンバージョン設計
- 現地エージェント探し
- 物流の仕組み構築(有形商材の場合)
階段状のコンバージョン設計
海外マーケティングで成果を上げるには、コンバージョンの設計が鍵となります。
特に、購入という最終的なコンバージョンに至るまでに、メルマガ登録や資料請求などのハードルの低い中間コンバージョンを設けることが重要です。
この階段状のコンバージョン設計により、見込み客を段階的に育成し、最終的な購入へと導くことができます。
海外だとメールマーケティングが強いケースも多いので、メルマガ登録は積極的に検討しましょう。
現地エージェント探し
海外マーケティングを効果的に進めるには、現地のエージェントとの連携が欠かせません。展示会への出展や、日本貿易振興機構(JETRO)の支援を活用するなどして、信頼できるパートナーを見つけましょう。
現地エージェントは、言語の壁や商習慣の違いを乗り越える助けになるだけでなく、ローカルでのプロモーション活動にも貢献してくれます。
物流の仕組み構築(有形商材の場合)
有形商材を海外で販売する場合、物流の仕組み構築が重要な課題となります。
現地の税制や規制に適合した輸出手続きを行うとともに、在庫管理や配送の効率化を図る必要があります。
また、返品・交換対応など、アフターサービスの体制づくりも欠かせません。物流の仕組みは、海外顧客の満足度に直結するため、入念な準備が求められます。
海外進出した初期で行うマーケティング
海外進出をスタートしてすぐの頃は、以下のような施策に積極的に取り組みましょう。
- リスティング広告
- 顕在層向けの海外SEO対策
- 物流の仕組み構築(有形商材の場合)
リスティング広告
海外進出初期は、即効性のあるリスティング広告を活用し、自社製品・サービスの認知度を高めることが効果的です。
現地の検索エンジンで、自社のターゲットキーワードに対して広告を配信することで、興味を持つ潜在顧客を自社サイトに誘導します。
広告文やランディングページ(LP)は現地語で作成し、地域ごとの検索ボリュームに応じた予算配分を行うことが重要です。
顕在層向けの海外SEO対策
リスティング広告と並行して、自社製品・サービスに関連する顕在キーワードで検索上位表示を目指す海外SEO対策も必要です。
現地語でのキーワード選定、コンテンツ最適化、多言語サイト構造の改善などを通じて、検索エンジンからの自然流入を増やします。海外SEOは長期的な取り組みになりますが、安定的な集客チャネルとして育成しましょう。
海外SEO対策については下記の記事もご参考ください。
コンバージョン直前の導線整理
海外マーケティングで成果を上げるには、コンバージョン直前の導線を整理し、見込み客を確実に購入へと導く必要があります。
BtoBの場合は、商談資料の整備や費用対効果シミュレーション資料の作成など。これらの資料を通じて、自社製品・サービスの価値を明確に伝え、途中で顧客が離脱してしまわないようにしましょう。
O2Oマーケティング
オンラインとオフラインを連携させるO2Oマーケティングは、海外市場でも効果的な手法。
例えば、自社サイトやSNSで現地のイベント情報を発信し、実店舗への来店を促進したり、オンラインで製品を購入した顧客に店舗でのサービスを提供したりするなど、オンラインとオフラインの相乗効果を狙います。
顧客インタビュー作成
海外進出初期は、自社製品・サービスを実際に利用した顧客の声を積極的に収集することが大切です。
顧客インタビューを実施し、満足度や改善点などを聴取しましょう。
インタビュー内容は、自社サイトやSNSで発信することで、他の潜在顧客の信頼獲得にも役立ちます。また、顧客の声を製品・サービス改善にフィードバックすることで、現地ニーズにより適合した訴求を目指していきましょう。
事業成長・拡大段階で行うマーケティング
口コミ/レビューマーケティング
事業が成長・拡大段階に入ると、顧客からの口コミやレビューを活用したマーケティングが効果的です。
満足度の高い顧客に、SNSや購入サイトでの評価投稿を依頼し、サイトに記載するなどして自社製品・サービスの信頼性を高めましょう。優れた口コミやレビューは、新規顧客獲得の強力な武器となります。
また、ネガティブな意見も真摯に受け止め、改善につなげることが重要です。
潜在層向けの海外SEO対策
事業の成長に合わせて、海外SEO施策もより広範囲に展開します。自社製品・サービスに関連する潜在キーワードを開拓し、多様なコンテンツを制作することで、検索流入の増加を目指します。
なお「今すぐ購入したい人が検索する顕在キーワード」だけを対策する「顕在層向けの海外SEO」は比較的早い段階で実施しておくのがおすすめです。
なお、海外SEO対策については下記の記事でも解説しています。
SNS広告
事業拡大期は、SNS広告を活用して、ターゲット顧客へのリーチを強化します。
海外マーケティングにおいては、国・地域によって使用するSNSが異なるということ。基本的には日本と同じSNSのケースが多いですが、以下のようなSNSを利用します。
SNS名 | 対象地域 | 備考 |
---|---|---|
ほぼ全域 | ||
X (Twitter) | ほぼ全域 | |
TikTok | アメリカ大陸、アジア圏など | |
ほぼ全域 | 求職者にリーチしやすい | |
ほぼ全域 | ||
Red | 中国 | 中国のInstagramのようなSNS |
中国 | 中国のXのようなSNS |
なおSNS広告は潜在層にリーチするため、「コンバージョンのハードルは下げておく」「メルマガなどで別で育成(ナーチャリング)を行う」などのポイントに留意しましょう。
SNSアカウント運営
OMOマーケティング
オンラインとオフラインの垣根を越えて、シームレスな顧客体験を提供するOMO(Online Merges with Offline)マーケティングは、事業拡大期に有効な手法です。
例えば、実店舗での購買データをオンラインサイト上でのおすすめ機能に活用したり、オンラインで注文した商品を実店舗で受け取れるサービスを提供したりするなど。オンラインとオフラインを融合させた施策で、顧客満足度と利便性を高めることが可能です。
ただほとんどの場合では「OMOをやる前にやるべきことがある」ので、優先順位は高くありません。
効果的な海外マーケティング戦略を作る手順
効果的な海外マーケティング戦略を練るには、基本的には以下のような手順で行うとよいでしょう。
- 市場調査を行う
- バケツの穴をふさぐ
- 短期・顕在向け施策から行う
手順1. 市場調査を行う
効果的な海外マーケティング戦略を作るには、まず進出先の市場環境を徹底的に調査することが不可欠。
市場規模、競合他社、顧客ニーズ、規制などの情報を収集・分析し、自社製品・サービスの現地での可能性を見極めます。
まずはリスティング広告など短期的に流入を獲得できる方法で「本当にこの商品が現地ユーザーに買ってもらえるのか」を検証するなども有効です。時間はかかりますが、後々の失敗確率を下げてくれます。
手順2. バケツの穴をふさぐ
市場調査で得た知見を基に、自社の海外マーケティング施策における「バケツの穴」を特定し、対策を講じます。バケツの穴とは、コンバージョン間際の顧客が離脱してしまうポイントのこと。
例えば、サイトのフォームが使いづらい、LPの訴求力が弱い、コンバージョンの設計が不適切などの要因が考えられます。
これらの課題を一つ一つ解決することで、見込み客を確実にコンバージョンへと導くことができます。
バケツの穴を塞がないまま広告などを行っても、入れた水がそのまま穴から流れる(離脱する)ことになりお金を無駄にすることになります。
手順3. 短期・顕在向け施策から行う
海外マーケティング戦略の実行にあたっては、まず短期的な成果が期待できる施策から着手するのが効果的です。特に、自社製品・サービスに興味を持つ顕在層をターゲットにすることで、スピーディーな成果創出が可能になります。
具体的には、リスティング広告や顕在キーワードの海外SEO対策などが有効です。これらの施策により、自社の認知度を高め、問い合わせや購入などのコンバージョンを増やします。
逆に、最初のうちからSNS広告などの潜在層向け施策や、YouTubeチャンネル運営など時間がかかる長期施策をやるのはできる限り避けましょう。
海外マーケティングを成功させる鉄則3つ
海外マーケティングを成功させるには、以下3つの鉄則を意識しておくと良いでしょう。
- 商材が現地で売れそうか調査しておく
- 長期・潜在向け施策は後で行う
- ネイティブチェックを活用する
鉄則1. 商材が現地で売れそうか調査しておく
海外マーケティングを成功させるには、自社の商材が現地市場で受け入れられるかどうかを事前に見極めることが大切。
商材の需要や競合状況、価格帯などを綿密に調査し、現地での売れ行きを予測します。具体的には、現地の消費者アンケートや、競合他社の製品分析、価格比較などを実施します。
また、現地パートナーからの情報収集も有効です。現地への適合性を確認することで、無駄な投資を避け、効果的なマーケティング戦略を立てることができます。
鉄則2. 長期・潜在向け施策は後で行う
海外進出初期は、まず事業の基盤を確立し、キャッシュを獲得することが優先事項。そのため、短期的な成果が見込める顕在層向けの施策から着手するのが賢明です。
SEOやSNSアカウント育成のような長期施策や、潜在層をターゲットにしたSNS広告などは、効果が出るまでに時間がかかります。
そういった長期・潜在向けの施策は顧客が認知から購入に至るまでのプロセスが長いため、初期段階では優先順位を下げても問題ありません。事業基盤が安定してきたら、徐々に注力していけば十分です。
鉄則3. ネイティブチェックを活用する
海外マーケティングでは、現地の言語や文化に適合したコミュニケーションが不可欠です。
特にWebサイトやランディングページは、現地ユーザーの目に留まる重要な接点となります。ネイティブスピーカーによるチェックを受けることで、表現の自然さや、文化的な配慮が行き届いているかを確認します。
とりわけ広告の費用対効果を大きく左右するランディングページ(LP)については、重点的にネイティブチェックを行いましょう。
また、デザインや配色、画像の選定なども、現地の感覚に合っているかをネイティブの視点で見直すことが大切です。ネイティブチェックを活用することで、現地ユーザーに違和感を与えない、高品質なコンテンツを提供できます。
海外マーケティングにおける法務・税務の注意点
海外マーケティングにおいては、さまざま法務・税務の注意点があります。ここでは特に落とし穴になりそうなものを3つ取り上げます。
- 契約書は英語とは限らない
- 商標登録を行っておく
- 国に応じた税金の申告が必要
知らなかった時のリスクが大きいので、基本的には専門家に依頼しましょう。
1. 国に応じた税金の申告が必要
越境ECを行う場合、現地の間接税(付加価値税やセールスタックス等)を顧客に対して課税し、申告を行う必要があります。例えば、EUでは付加価値税(VAT)、オンラインマーケットプレイス税制などの対応が求められます。一方、アメリカではセールスタックスの申告が必要になります。
このように、販売するプラットフォームや進出先の地域によって、適用される税制度が異なりますので、事前に確認し、サイト上での表記変更など、必要な対応を行う必要があります。
また、支払った消費税額が受け取った消費税額よりも上回った場合に差額と還付金として受け取れる「消費税還付」を受けるためには、輸出証明書を保管しておく必要があります。
2. 商標登録を行っておく
模倣品対策と自社ブランドの確立のために、商標登録を行っておくことも重要です。
例えば「ウォシュレット」は商標登録されているため、類似品が出回っていても「ウォシュレット」ブランドは守られています。つまり、製品が「ウォシュレット」として認識されるため、単なる「類似品」として扱われるだけで済み、自社のオリジナルブランドを確立できるのです。
商標には製品の形状や動き、匂いなど、思っている以上に多様なものが登録できます。これらを活用することで、自社の製品やサービスをより効果的に差別化することができます。
進出する国ごとに商標登録を行う必要があるため、現地の代理店と連携して一括して登録する方法が良いでしょう。
3. 契約書は英語とは限らない
基本的に、現地法人との取引では英語で契約書を作成することが多いですが、必ずしも英語であるとは限りません。
例えばインドネシアなどの一部の国では、英語で書かれた契約書が認められない可能性があるため、現地語での作成が求められる場合があります。
このように、進出先の国によって法的要件が異なることを念頭に置き、適切な対応を取る必要があります。
海外進出に注意が必要な業界・業種とその対策
海外市場への進出を検討する際は、業界や業種ごとに特有のリスクがあることに留意する必要があります。特に以下の2つの業界では、慎重な対応を行いましょう。
製造業|代理店探しと知的財産権の保護がキー
製造業の海外展開では、販売やメンテナンスなどを担う信頼できる現地の代理店を見つけることが重要。
しかし、単に代理店に任せきりにするのではなく、現地パートナーが自社の技術を盗用して類似品を製造するリスクがあるため、事前に特許権や意匠権などの知的財産権を取得しておく必要があります。
具体的な対策としては以下が考えられます。
- 現地市場を十分に調査し、信頼できる代理店を慎重に選定する
- 製品の核となる技術について特許を取得する
- 意匠権を取得し、製品の外観デザインを保護する
- 代理店との契約書に技術流出防止条項を盛り込む
- 製造のすべてを現地で行うのではなく、組み立てのみ現地で行う
これらの対策を講じることで、技術流出のリスクを最小限に抑えつつ、海外市場でのビジネスを展開することができます。
BtoBビジネス|交渉・契約周りの粘り強さが必要
BtoBの海外取引では、契約書の締結と交渉が特に重要です。取引条件を細かい点まで十分に取り決める必要があり、自社に有利な条件を盛り込むことが肝心です。
弊社では韓国・インドなど海外の企業との取引も行っていますが、基本的に海外企業は「あちらの有利になることをさらっと契約に盛り込む」のが得意です。
また、異文化を背景にした取引では、交渉力も重要なファクターとなります。日本人は交渉に苦手意識を持つ傾向がありますが、相手の立場に立って柔軟に対応しつつも、妥協せずに粘り強く交渉を続ける必要があります。スピーディな意思決定も重要です。
具体的な対策としては以下が考えられます。
- 契約書は自社側で作成し、細かい取り決めを盛り込む
- 相手の要求を丁寧に聞き取りつつ、自社の主張も粘り強く主張する
- 相手の文化的背景を理解した上で、柔軟に交渉する
- 問題を先送りにせず、迅速な意思決定を心がける
これらの対策により、BtoBの海外取引においても、自社に有利な取引条件を引き出すことができます。
進出にあたり特に注意が必要な地域・国
海外市場への進出を検討する際は、対象国の特徴をよく理解しておく必要があります。特に以下の地域や国では、独特の事情に注意を払う必要があります。
中国 | グレートファイアウォール
中国では、政府による検閲である「グレートファイアウォール」の影響で、マーケティング活動が特殊な様相を呈します。まず、中国向けのウェブサイトは中国国内(上海など)のサーバーに設置する必要があります。また、中国国外のサイトへのリンクは避けるようにします。
さらに、検索エンジンはGoogle ではなくBaiduを、SNSはInstagramではなくRed、TwitterではなくWeiboなどを活用する必要があります。これらのプラットフォームは日本とは大きく異なるため、使い分けに注意が必要です。
また、日本企業が中国に進出する際の障害となる可能性のある法律や規制については、事前に十分な調査が不可欠です。
韓国 | ローカル検索エンジンNaver
韓国では、検索エンジンシェアの約半分を占めるNaverが特徴的です。一般的なウェブサイトは検索結果に表示されにくく、Naverブログが上位に表示される傾向にあります。
このため、韓国進出の際は、Naverでの最適化やNaverブログの活用など、ローカルのプラットフォームに合わせた施策が重要となります。
その他、日本企業が韓国に進出する際の障壁となる可能性のある法律や規制についても、事前に確認しておく必要があります。
各国・地域の特性を十分に理解し、それに合わせたマーケティング活動を行うことが、海外進出の成功につながります。
インド | 多様な言語と宗教
インドは、言語や宗教が非常に多様な国です。効果的なマーケティングを行うには、地域ごとの文化的背景を理解し、ローカライゼーションを徹底する必要があります。
インドは人口も大きく近年輸出先としても注目されている国。英語でもリーチできるのが特徴的です。
特に言語面では、英語以外にもヒンディー語、ベンガル語、マラーティー語などの主要言語がありますので、商品説明やウェブサイト、広告などの制作には注意が必要です。
宗教面でも、ヒンドゥー教、イスラム教、シク教など、多様な信仰が共存しています。商品・サービスの内容や広告表現には、宗教的な配慮が求められます。
アメリカ | 広大な市場と激しい競争
アメリカは世界有数の大規模市場ですが、同時に激しい競争も繰り広げられています。現地に精通したマーケティング力が不可欠で、単なる日本国内の取り組みをそのまま適用するのは難しいでしょう。
Webマーケティングはアメリカが本場で、あちらのほうが「徹底的で強引」な傾向があります。特にSEOは顕著で、日本では文化的に憚られるような施策(強引な被リンク営業)も普通に行われています。