テキストマイニングの活用事例8選!ビフォー・アフターを紹介
企業経営において、顧客の生の声は何よりも貴重な情報源であり、羅針盤と言えるでしょう。
しかし、日々膨大に生み出されるテキストデータから、いかにして価値ある知見を引き出すか。その有力な手段として注目を集めているのが「テキストマイニング」です。
本記事では、航空、金融、食品など様々な業界のテキストマイニングの活用事例を紹介。分析手法の概要から、具体的な適用場面、導入効果に至るまで体系的に解説していきます。
OpenAIが展開するChat GPTの開発プロジェクト(日本語の強化学習)にも参画している合同会社ニューラルオプトの知見をもとに解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
参考になるテキストマイニングの導入事例
本記事で取り上げるテキストマイニングの事例は以下のとおりです。
企業・団体名 | 概要 | 業界 |
---|---|---|
グローバル家電メーカー | 低評価の要因を発見 | 家電 |
Fitbit | 不具合の傾向を把握 | ウェアラブルデバイス |
医療機器メーカー | 自社の強みを発見 | 医療機器 |
ノースカロライナ州人身売買対策委員会 | 人身売買の犯罪パターンを発見 | 行政 |
江崎グリコ | キャンペーン効果を可視化 | 食品 |
大手銀行 | ブランドイメージを把握 | 金融 |
アジアの航空会社 | 乗客のニーズを発見 | 航空 |
Gillette | CM賛否の理由・割合を分析 | 日用品 |
1. 低評価の要因を発見|家電メーカー、製品レビュー
1つ目の事例は、あるグローバル家電メーカーのBluetoothスピーカーの製品レビューを分析した事例です。
導入前:競合他社との差別化要因が分からない
同社は新製品を市場投入するにあたり、自社製品の強みと弱みを把握し、競合他社との差別化を図りたいと考えていました。
しかし膨大な量の製品レビューを目視で確認するのは非効率的で、レビューの真の意味を読み取ることが難しい状況でした。
導入後:機能面の改善ポイントを特定し、製品開発に反映
テキストマイニングツールを導入後、製品レビューから高評価・低評価の理由となるトピックを自動的に抽出。音質、バッテリー、防水性、低音など一定の評価を得ている機能を把握する一方、ノイズの多さや価格の高さが低評価の主な要因であることが分かりました。
分析結果をもとに、ノイズ対策と適正価格の設定を行い、顧客ニーズに合致した魅力的な新製品の開発につなげることができました。製品の差別化ポイントを的確に訴求することで、ブランドロイヤリティの向上にも貢献しています。
2. 不具合の傾向を把握|ウェアラブルデバイスメーカー、カスタマーサポート
2つ目は、フィットネストラッカーで知られるFitbit社の事例です。同社は自社製品に関する不満や不具合の傾向を知るため、Twitterのサポートアカウントに寄せられた声を分析しました。
導入前:製品別の不具合傾向が分からない
同社のサポートアカウントには、利用者から1分に1件のペースで不満や質問のツイートが寄せられていました。しかし膨大な量のツイートを目視で確認し、製品別の不具合傾向を把握するのは困難を極めました。
導入後:不具合を製品別に可視化し、改善につなげる
テキストマイニングの導入後、ツイートを活動量計測、デザイン、スペックなどのカテゴリに自動分類。世代別の製品で発生している不具合を可視化したところ、特定モデルのベルトに不具合が多発していることが判明しました。
分析結果から優先的に対処すべき不具合を特定し、以降の製品改良につなげています。また新製品の不具合を早期検知し、迅速なフォローを行うことで、顧客満足度の低下を未然に防ぐことができるようになりました。
参考:Using SAS® Enterprise Miner for Categorization of Fitbit’s Customer Complaints on Twitter
3. 自社の強みを発見|医療機器メーカー、規制当局のレポート
3つ目は医療機器メーカーがFDA(米国食品医薬品局)のレポートを分析した事例です。FDAには医療機器の不具合や副作用に関する膨大なレポートが蓄積されており、分析の格好の材料となります。
導入前:競合の実態が把握できていない
医療機器業界は規制が厳しく、他社の状況を把握するのが難しい業界です。とりわけ競合他社の不具合実態については、公表されることが少なく、情報が乏しい状況でした。
導入後:自社の優位性を発見し、営業に活用
FDAのレポートをテキストマイニングで分析したところ、競合他社の機器で患者の死亡につながる重大な不具合が多発している実態が明らかになりました。
一方、自社の製品は競合と比べて機器の装着成功率が極めて高いことが判明。自社製品の優位性を営業活動でアピールすることで、シェア拡大に成功しています。
参考:Do Your Customers Love You? Find Out with Text Analytics
4. 人身売買の犯罪パターンを発見|行政機関、警察レポート
4つ目は、ノースカロライナ州の人身売買対策委員会が、テキストマイニングを活用して人身売買の犯罪パターンを分析した事例です。
導入前:膨大な警察レポートを人力で調査
同州では人身売買が深刻な問題となっており、これまでは関連する犯罪の警察レポートを人力で1件ずつ確認し、犯罪の手口や発生場所などの傾向を把握していました。
しかし膨大な量のレポートを目視で分析するのは非効率的で、人身売買の全体像を掴むのが難しい状況でした。
導入後:テキスト分析で犯罪パターンを可視化
テキストマイニングツールの導入後、過去の事件レポートをカテゴリ分類し、人身売買に関連する記述を自動抽出。
犯罪が発生しやすい場所をツリーマップで可視化したところ、ニューヨークやニュージャージーなど特定の地域に事件が集中していることが判明しました。
さらに、犯罪者によく使われる勧誘方法や、被害に遭いやすい人物像なども浮かび上がってきました。分析結果をもとに、重点的なパトロールや注意喚起を行うことで、人身売買の摘発と抑止につなげることができています。
参考:Countering human trafficking using text analytics and AI
5. キャンペーン効果を可視化|食品メーカー、広告効果測定
5つ目は、お菓子で知られる江崎グリコ株式会社が、テキストマイニングを活用して広告キャンペーンの効果測定を行った事例です。
導入前:CM効果の定量的な把握が課題
同社は、新商品の販促のため多額の費用をかけてテレビCMを放映していましたが、CMの効果を定量的に把握する手段がなく、キャンペーンの最適化が課題となっていました。
CMの内容を変更した場合の反応も把握しにくく、闇雲にCMを打ち続けているような状況でした。
導入後:CM露出とクチコミ数の関係を可視化
テレビメディア検索機能付きのテキストマイニングツールを導入後、CMが流れたタイミングとクチコミ数の関係を時系列で可視化。
CM放映後のSNS上の反応を詳細に分析したところ、CM内容とクチコミの関係性が明らかになり、CM制作の改善ポイントが見えてきました。
例えば、あるCMではレシピ動画を盛り込んだところ、「作ってみたい」という前向きな反応が増加。逆に、あるCMでは商品の魅力が十分に伝わっておらず、クチコミ数が伸び悩んでいることも判明しました。
分析結果をもとに、訴求力の高いCM制作とメディア出稿の最適化を進めています。
6. ブランドイメージを把握|金融機関、顧客のセンチメント分析
最後は、ある大手銀行が、センチメント分析を活用して顧客の声を把握した事例です。南アフリカの銀行業界は競争が激しく、顧客離れが課題となっています。
導入前:膨大な顧客の声を分析できない
同行では、口座やローン、クレジットカードなど、様々な金融サービスを提供。
しかし、SNSやコールセンターなどに寄せられる膨大な顧客の声を分析し、サービス改善に役立てることができずにいました。
ポジティブな評価なのかネガティブな評価なのか、評価の理由は何なのか。そういった具体的な声を把握し、業務に反映する必要に迫られていました。
導入後:不満の理由を特定し、業務改善
センチメント分析を導入後、200万件を超える顧客の声を収集し、感情の度合いとその理由をカテゴリ分類。手数料やモバイルバンキング、店舗サービスなど、7つの評価項目について、ポジティブ・ネガティブの割合を可視化しました。
分析の結果、ネガティブな評価が目立ったのは手数料の高さ。利用明細の分かりにくさや店舗の長い待ち時間なども不満を招いていることが判明しました。
分析結果をもとに、ウェブサイトの刷新や店舗スタッフの増員など、業務全般の改善を進めています。約半年後に同様の調査を行ったところ、多くの項目で顧客満足度の向上が確認できました。
参考:Is anybody really happy with their bank?
7. 乗客の隠れたニーズを発見|航空会社、オンラインレビュー
7つ目は、アジアの航空会社がテキストマイニングを活用して、乗客の隠れたニーズを発見した事例です。
アジアの航空市場は世界最大規模に成長しており、各社は顧客を獲得するための激しい競争を繰り広げています。
導入前:アンケートでは本音が見えない
これまで各社は、乗客の満足度やニーズを把握するため、アンケート調査を実施してきました。しかし選択式の質問では、乗客の本音を引き出すのが難しい状況でした。
自由回答欄を設けても、そこから有用な情報を得られるかどうかは担当者次第。体系的に分析する方法がなく、せっかくの声を十分に活用できていませんでした。
導入後:膨大なレビューから重要トピックを抽出
そこで航空各社は、Skytraxのような大規模な航空レビューサイトに投稿された、膨大な数の乗客の声をテキストマイニングで分析。
トピックモデリングにより、機内食、エンターテイメント、座席などのトピックごとに、乗客の関心や不満が集中しているポイントが明らかになりました。
例えば、機内食のトピックでは「おいしい」というポジティブな言葉とともに、「冷めている」「味気ない」といったネガティブな言葉が並んで抽出され、改善の余地があることが分かりました。
エンターテインメントでは「充実している」という声がある一方、「古い」「使いにくい」という不満も見られました。
センチメント分析の結果からは、「遅延」に対する強い不満と、「客室乗務員の対応」への高い評価が浮き彫りになりました。
分析結果をもとに、機内食の質の向上や、古い機材の更新、接客サービス教育の強化など、優先順位の高い課題に重点的にリソースを投入。顧客の声を経営やサービス改善に直結させることで、顧客満足度の向上と差別化を図っています。
参考:Topic Modeling and Sentiment Analysis of Online Review for Airlines
8. 賛否の理由を探る|日用品メーカー、SNS分析
最後は、Gillette社が広告に対する反響をSNS上で分析した事例です。
同社は男性の古い価値観を問う内容の動画広告を公開し、賛否両論の議論を巻き起こしました。
導入前:伝統的メディアが論争を過剰に演出
ニュースメディアの多くは、「大炎上」「大バッシング」といったセンセーショナルな見出しで広告を取り上げ、否定的な反応ばかりを強調して伝えました。
匿名のアカウントのつぶやきを引用して、批判の声を殊更に大きく見せる向きもありました。SNS上の反応が正しく伝えられているのか、同社には確認する術がありませんでした。
導入後:支持派が多数派と判明、若年層に好感触
そこで同社は、TwitterやYouTubeに寄せられた40万件以上のコメントをテキストマイニングで分析。すると、実際には広告への好意的な反応が圧倒的多数を占めていることが判明しました。
センチメント分析の結果、若年層を中心に多くのユーザーが「感動した」「勇気づけられた」と共感を示していたのです。
一方、批判的なユーザーの多くは、広告が特定の人種や性別を不当に攻撃していると反発。ボイコットを呼びかける声もありました。
しかしセンチメント分析では、そうしたネガティブな投稿は全体の一部にとどまることが分かりました。トピック分析でも、批判的なハッシュタグは全体の2.7%しか使われていませんでした。
同社は分析結果をもとに、社会的な対話を生み出すことこそが広告の狙いだったと説明。物議を醸した手法でしたが、話題を呼ぶことで若年層の共感を得ることに成功したようです。
参考:Gillette Ad Controversy: Social Media Insights
テキストマイニングにできること
ここまではテキストマイニングの活用事例を紹介してきました。
改めてテキストマイニングにできることを紹介すると、主に以下が挙げられると思います。
- 感情や評価を見える化できる
- 顧客の声から改善点を抽出する
- マーケティング・企画への活用
- FAQ・マニュアルの整備
- 学術分野で知識を抽出する
SNSや顧客からのお問い合わせデータなど、データが数百〜数千件溜まっていれば、おおよそ上記のようなことが可能になるのがテキストマイニングです。
詳しくは以下をご覧ください。
テキストマイニングとは?できることや手法、事例をAI開発会社が解説
テキストマイニングの分析手法
テキストマイニングには様々な分析手法があります。それぞれ目的や状況に応じて使い分けることが大切です。ここでは代表的な6つの手法について、わかりやすく解説していきましょう。
- 頻出語分析(何が一番語られているか)
- 共起分析(関連する疑問・課題はなにか)
- センチメント分析(感情や評判はどうか)
- 対応分析(複数の要素間の関係はどうか)
- 主成分分析(少数の軸にグループ化する)
- クラスタリング(類似度をもとにグループ化する)
それぞれの手法でできること・目的が全く異なりますので、必要に応じて使い分ける必要があります。詳しくは以下でも解説しています。
テキストマイニングとは?できることや手法、事例をAI開発会社が解説
テキストマイニングの開発ならニューラルオプト
テキストマイニングの活用でお困りの方は、ニューラルオプトにご相談ください。弊社は、OpenAIが展開するChatGPTの強化学習プロジェクトにも携わっており、自然言語処理分野に高い専門性を有しています。
弊社はコンサルティング会社でもあるため、そもそもAIを使う必要があるのか、どのような課題解決を目指すのか、そうした大局観を持って、分析の目的や手法・体制づくりまで丁寧にアドバイスいたします。
まずはお気軽にご相談いただければ幸いです。