Facebookはスクレイピングできる?取得できる情報・自動化例

Facebookはソーシャルメディアの中でも圧倒的なシェアを誇っており、マーケティングや調査目的で活用したいと考える企業は多いでしょう。特にFacebook上のデータを自動で収集する「スクレイピング」に興味がある方もいるかもしれません。

しかし、Facebookのデータを無断で収集することは規約違反になる可能性が高く、トラブルに巻き込まれるリスクがあります。ではFacebook上のデータを安全に、そして合法的に入手するにはどうすればよいのでしょうか。

なお、スクレイピングについては以下の記事も合わせてご覧ください。

目次

【結論】FacebookのスクレイピングにはAPIを使うべき

Facebookからデータを取得したい場合、スクレイピングという選択肢を真っ先に思いつく人も多いかもしれません。確かにスクレイピングを使えばFacebookの膨大なデータを自動で収集できるというメリットがあります。

しかし、Facebookの利用規約では無断でのスクレイピングが明確に禁止されているのです。リスクを冒してまでスクレイピングを行うのは得策とは言えません。では、Facebookのデータを合法的に入手するにはどうすればよいのでしょうか。

結論から言えば、Facebookが公式に提供するAPIを利用するのが最も賢明な方法だと言えます。APIを使えば、利用規約に違反することなく安全にデータを取得できます。またAPIを通じて得られるデータは、スクレイピングで得られるデータよりも鮮度が高く、網羅性も十分です。

本記事ではFacebookのスクレイピングが禁止されている理由や、APIを利用するメリットについて詳しく解説します。Facebookのデータ活用を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。

利用規約で明確に禁じられている

多くの人はスクレイピングツールを使えばFacebookのデータを自由に収集できると思っているかもしれません。しかし残念ながら、Facebookの利用規約では明確にスクレイピングが禁止されているのです。

Facebookのrobots.txtファイルには以下のような記述があります。

“Facebookのスクレイピングは、事前に書面で許可を得ない限り、明示的に禁止されています。”

つまり、Facebookから書面で許可をもらわずにスクレイピングをした場合、利用規約違反となってしまうのです。無断でデータ収集を続けていると、アカウント停止などのペナルティを受ける可能性もあります。

ちなみにrobots.txtとは、クローラーに対してどのページへのアクセスを許可/拒否するかを指示するためのファイルです。一般的にはクローラーに優しいサイトほどrobots.txtの制限が緩やかですが、Facebookの場合は全面的にスクレイピングを禁止する厳しい内容になっています。

APIを使えば安全・合法にスクレイピング可能

ではFacebookのデータを入手する方法は全くないのでしょうか。そんなことはありません。Facebookが公式に提供しているAPIを利用すれば、安全かつ合法的にデータを取得することができます。

APIとは「Application Programming Interface」の略で、あるアプリケーションの機能を外部から利用するためのインターフェースのことです。Facebookの場合は、アプリ開発者がFacebook上のデータにアクセスしたり、Facebookの機能を利用したりするためのAPIを提供しています。

APIを使ってデータを取得する最大のメリットは、Facebookの利用規約に違反せずにすむことです。適切な手続きを踏んでAPIの利用申請をすれば、Facebookから許可を得てデータを入手できるので、アカウント停止などのペナルティを受けるリスクがありません。

またFacebookは自社のAPIを通じてデータを提供する以上、そのデータは基本的に最新のものだと考えられます。一方で違法なスクレイピングで得られるデータは古いものである可能性が高く、鮮度の点でもAPIを利用する方が有利と言えるでしょう。

FacebookのAPIは複数存在する

では具体的にどのようなAPIがあるのでしょうか。主要なFacebook APIは以下の2つです。

APIの名称概要
グラフAPIFacebookのコアとなるAPI。ユーザー情報や投稿、写真など各種データへのアクセスが可能
ページAPIFacebookページの投稿や設定を管理するためのAPI。自動投稿やインサイト取得などに利用可能

グラフAPIはFacebookのほぼすべての機能がカバーされており、非常に多機能なAPIです。一方でページAPIはFacebookページに特化しているため、ページの分析や運用管理に適したAPIと言えます。

目的に合わせてこれらのAPIを使い分けることで、Facebookのデータを幅広く収集することができるでしょう。ただしアクセス権限の申請が必要になるなど、APIの利用にはある程度の手間がかかることも覚えておく必要があります。

Facebookから自動で取得できる情報(API利用時)

Facebookが提供するAPIを利用することで、ユーザーやページに関する様々な情報を自動で取得できます。ここでは、APIから取得可能な主要な情報をカテゴリごとに見ていきましょう。 <h3>公開されているページ・ユーザー情報</h3>

APIを使えば、公開範囲に応じてユーザーやFacebookページの基本情報を取得可能です。ページ管理者権限があれば、より詳細な情報も得られます。主な取得可能情報は以下の通りです。

対象取得可能な情報の例
ユーザー基本情報(公開範囲内)名前、ユーザーID、プロフィール画像URL、メールアドレス(ユーザーから明示的に承諾された場合) など
Facebookページの基本情報ページ名、ページID、カテゴリ、説明文、カバー写真 など
ページの管理情報(要ページ管理者権限)ページ設定・権限の更新、アドミンやエディタなどのロール取得・設定、タブ情報の取得 など

ここで注意したいのは、ユーザー情報の多くはプライバシー設定によって公開範囲が制限されている点です。メールアドレスのように、ユーザーから明示的に承諾を得ないと取得できない情報もあります。

一方、ページの情報は基本的に公開されているため、認証なしでも取得可能なものが多いです。ただしページ設定の変更やロール管理など、より高度な権限が必要な操作は、ページ管理者権限とアクセストークンがないと実行できません。

投稿・コメント・アナリティクス

APIを活用すれば、Facebook上の投稿やコメント、そして分析データも自動で収集できます。主な取得可能情報は次の通りです。

対象取得可能な情報の例
投稿の作成・取得・更新・削除ページ投稿、写真、動画のアップロード・情報取得
コメントの作成・取得・削除ページ投稿へのコメント・返信・リアクション情報
アナリティクス投稿ごとのリーチ数、エンゲージメント数などの基本的な統計データ、ページ全体のフォロワー数推移、インプレッションなどのメトリクス

投稿関連のAPIを使えば、ページの投稿を自動化したり、投稿に関する詳細情報を取得したりすることが可能です。アップロードできるメディアの種類は、テキストだけでなく写真や動画など多岐に渡ります。

また投稿だけでなくコメントやリアクションのデータも取得できるため、エンゲージメントの分析に役立てられるでしょう。アナリティクス系のAPIからは、投稿やページのパフォーマンスを表す各種指標を得ることができます。

検索結果

APIを使った検索機能も提供されています。現在利用可能な検索系APIとしては、ページ検索が代表的です。

対象取得可能な情報の例
ページ検索特定のキーワードでページを検索し、該当ページのリストを取得

ページ検索APIを使えば、任意のキーワードに一致するFacebookページの一覧を取得可能です。例えば「ピザ」というキーワードで検索すれば、ピザ関連のページが一括で得られるでしょう。

以上のように、FacebookのAPIは実に様々な情報を自動で取得できる強力なツールだと言えます。上手に活用すれば、マーケティングやデータ分析の精度を大きく高められるはずです。

Facebookの自動化でできること

APIを活用することで、Facebookの様々な運用を自動化できます。ここでは、主要な自動化の事例を5つ紹介しましょう。

アカウント運営の自動化

Facebookページへの投稿を、あらかじめ設定しておいた日時に自動で行うことができます。

活用例
  • キャンペーン告知、連載コンテンツ、商品情報などを定期的に発信する。
  • 社内SNS管理ツールや独自スクリプトを使い、複数プラットフォームへの同時投稿が可能。
メリット
  • 投稿時間を最適化し、担当者の手動作業を削減できる。
  • 時差がある海外向けページでも24時間体制で投稿を行える。

APIを使えば、決まったスケジュールでの投稿を自動化できるため、人的リソースを大幅に節約可能です。また、投稿のベストタイミングを狙って自動投稿することで、リーチ率や反応率のアップも期待できるでしょう。

アナリティクス収集・レポートの生成

Facebookページのインサイト(リーチ数、エンゲージメント率、投稿別反応など)を定期的に取得し、自動でレポートを作成できます。

活用例
  • 毎週や毎月のアクセス・反応率を自動集計し、GoogleスプレッドシートやBIツールに連携。
  • 担当者へのレポートメールをスケジュール送信。
メリット
  • 効率的にデータを可視化でき、改善ポイントの発見が容易になる。
  • 担当者が都度データを手動で収集する手間を削減し、分析業務に専念できる。

インサイトデータをAPIで自動収集し、レポート生成までワンストップ化すれば、運用改善のPDCAサイクルを素早く回せるようになります。手作業によるデータ収集のミスも防げ、より戦略的な分析に注力できるでしょう。

コメント・メッセージの分類・返信

ページへのコメントやメッセージに対し、一定のキーワードや条件に基づいて自動で対応・振り分けできます。

活用例
  • 問い合わせが多い質問に対して自動返信(Messengerボット連携)。
  • スパムコメントや不適切な内容を検知し、自動非表示・通知する。
メリット
  • 24時間受付対応が可能になり、ユーザーの待ち時間を削減。
  • スパム対策のコストが下がり、担当者のモデレーション負担を軽減。

APIとMessengerボットを組み合わせれば、FAQへの自動応答が可能になります。またコメントの内容をAIで判定し、不適切なものを自動で非表示にするなどの対応も可能です。運用の自動化とユーザー対応の高速化を両立できるでしょう。

リード獲得・管理

FacebookのLead Ads(リード獲得用広告)で取得したユーザー情報を自動でCRMやメール配信システムに送ることができます。

活用例
  • 資料請求・メルマガ登録などに応じた自動メール送信、顧客管理システムへのデータ反映。
  • 広告クリック→問い合わせフォーム入力→営業担当にSlack通知までを一気通貫で自動化。
メリット
  • リード情報の抜け漏れを防ぎ、すぐにフォローアップできるためコンバージョン率向上。
  • 担当者が手動でデータをダウンロード・アップロードする工数を削減。

リード獲得からナーチャリングまでの一連の流れをAPIで自動化することで、リードの逃失を防ぎつつ、担当者の作業負荷も大幅に下げることができます。広告とCRM・MAツールとのAPI連携を進めることが肝要です。

市場分析・口コミ収集

APIを活用すると、自社ページや競合ページの情報を自動収集し、市場の動向把握に役立てられます。ただし他者の情報を扱う場合は、利用規約に十分注意が必要です。

自社ページを中心とした分析
  • コメント・レビューの自動取得
    • FacebookのGraph APIで自社ページの投稿に付くコメントや、レビュー機能での星評価・口コミを取得。
    • 定期的に取得してテキストマイニング(ポジ・ネガ判定、キーワード抽出)を行うことで、自社商品やサービスへの評価を可視化。
  • インサイト(リーチ数・反応など)の解析
    • グラフAPIを使って、各投稿のエンゲージメント(いいね、コメント、シェア)やインプレッションなどを連携し、Excel/BIツール等で可視化。
    • 投稿内容との関連やキャンペーン効果との関連を分析してマーケティング施策を最適化。
公開されている他社ページ・関連コミュニティの情報
  • 競合ページの公開投稿のメトリクス収集
    • 競合企業のFacebookページが「公開設定」で行っている投稿の反応数(いいね!やコメント数)をウォッチし、相対比較する。
    • コメント本文をクロールする場合はAPI権限や利用規約に注意しつつ、公開情報のみを正しく扱う。
  • 業界関連オープングループのウォッチ
    • 業界に関連するオープングループで話題になっているトレンドやトピックを手動またはスクレイピング(ただし利用規約に注意)で収集し、ユーザーの声を把握する。
    • APIでグループの公開投稿を取得できる場合もあるが、基本的にはグループIDや投稿取得権限が必要なケースが多い。

自社ページの分析は比較的行いやすいですが、競合ページの情報収集はグレーゾーンも多いので慎重に行う必要があります。Facebookの利用規約を守りつつ、公開情報の範囲内でユーザーの声に耳を傾けることが大切だと言えるでしょう。

以上のように、FacebookのAPIを活用することで、運用の自動化から分析の高度化まで、様々なユースケースが実現可能です。ただしユーザープライバシーへの配慮を忘れず、Facebook社の定めるルールをしっかり守ることが何より重要だと覚えておきましょう。

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著者・監修者

合同会社ニューラルオプト代表。
東京外国語大学卒業後、大規模言語モデルBERTなどの機械学習を活用したマーケティングツールの研究開発を目的にニューラルオプトを創業。

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