RAG(検索拡張生成)の開発費用!内訳や失敗しない会社の選び方
最近、企業のAI活用が加速する中で「RAG(検索拡張生成)」という技術が注目を集めています。
この技術は生成AIの精度と信頼性を大幅に向上させるもので、多くの企業が導入を検討しています。しかし、導入を検討する際に気になるのが「費用」ではないでしょうか。
本記事では、RAG開発にかかる費用相場を規模別、目的別、機能別、開発工程別に詳しく解説します。導入を検討している方はぜひ参考にしてください。
なお、RAG以外のAIの開発費用相場については、以下の記事でも解説しています。

【結論】RAGの開発費用は500万円〜3000万円

RAG(検索拡張生成)システムの開発費用は、規模や目的によって大きく異なりますが、一般的な相場は500万円から3000万円程度です。
小規模なプロジェクトであれば500万円程度から始められますが、大規模で高度な機能を実装する場合は3000万円以上かかることもあります。
費用を左右する主な要因は以下の通りです。
- 開発規模(社内利用か一般公開か)
- 必要とする機能の複雑さ
- データベースの整備状況
- 連携する外部システムの数
- カスタマイズの程度
RAGシステムは初期投資が必要ですが、導入により業務効率化や顧客満足度向上などの効果が期待できます。投資対効果を見極めた上で、自社に最適な規模と機能を選択することが重要です。
【一覧表】RAGの開発費用相場
ここでは、RAG(検索拡張生成)の開発費用相場を以下の軸ごとに解説していきます。
- 規模ごとの開発費用相場
- 目的ごとの開発費用相場
- 機能ごとの開発費用相場
- 開発工程ごとの費用相場
規模ごとの開発費用相場
RAGシステムの開発費用は、規模によって大きく異なります。以下の表は、一般的な規模別の費用相場です。
規模 | 費用 |
---|---|
最低限の規模(PoC開発) | 300万円〜500万円 |
社内だけで使える規模 | 500万円〜1200万円 |
一般公開する規模 | 1500万円〜3000万円以上 |
最低限の規模のRAGシステムは、概念実証(PoC)として特定の部門や限られた用途で試験的に利用するものです。このレベルでは基本的な検索機能と生成機能のみを実装し、データ量も限定的です。
社内利用向けのシステムになると、より多くの部門や業務プロセスをカバーする必要があります。社内の複数のデータベースと連携し、セキュリティ対策も強化するため、費用は上昇します。
一般公開する規模のRAGシステムは、高い負荷処理能力とセキュリティ対策が必要となり、さらに高度なカスタマイズやユーザーインターフェースの改良も求められるため、最も高額になります。特に大量のユーザーアクセスに対応するインフラ整備やセキュリティ対策に費用がかかる点が特徴です。
目的ごとの開発費用相場
RAGシステムの導入目的によっても、必要となる機能や規模が変わり、それに応じて費用も変動します。
目的 | 費用 |
---|---|
MVP開発(最小限の機能で検証) | 300万円〜600万円 |
社内ナレッジ検索・活用 | 600万円〜1200万円 |
カスタマーサポート効率化 | 800万円〜1500万円 |
マーケティングコンテンツ生成 | 700万円〜1400万円 |
医療・法律など専門分野での活用 | 1200万円〜2500万円 |
一般公開型Q&Aサービス | 1500万円〜3000万円以上 |
MVPとして最小限の機能で検証する場合は、比較的低コストで開始できます。基本的な検索機能と生成機能のみを実装し、限られたデータセットで動作確認を行うのが一般的です。
社内ナレッジの検索・活用を目的とする場合は、社内文書やデータベースとの連携が必要になります。部門ごとのアクセス権限管理なども含めると、中程度の費用となるでしょう。
カスタマーサポートの効率化を目指す場合は、FAQ、マニュアル、過去の問い合わせ履歴などと連携する必要があり、さらに顧客対応の品質管理機能も重要です。
専門分野での活用になると、より高度な精度とセキュリティが求められるため、費用は高額になる傾向があります。特に医療や法律分野では、情報の正確性が極めて重要なため、検証や品質管理にも多くの工数が必要です。
機能ごとの開発費用相場
RAGシステムには様々な機能を追加することができ、それぞれに費用が発生します。以下は主要機能ごとの費用相場です。
機能名 | 費用 |
---|---|
基本的な検索・生成機能 | 300万円〜500万円 |
複数データソース連携 | 100万円〜300万円 |
多言語対応 | 150万円〜300万円 |
セキュリティ強化(アクセス制御等) | 100万円〜250万円 |
パーソナライゼーション機能 | 200万円〜400万円 |
ダッシュボード・分析機能 | 150万円〜300万円 |
API連携 | 100万円〜200万円 |
チャットボットインターフェース | 150万円〜300万円 |
基本的な検索・生成機能は、RAGシステムの中核部分であり、最も基本的な投資となります。これには外部データベースからの情報検索と、それを基にした回答生成の機能が含まれます。
複数データソース連携は、社内文書、Webサイト、データベースなど、様々な情報源から必要なデータを収集・整理する機能です。連携するデータソースの数や複雑さに応じて費用が変動します。
多言語対応は、グローバル展開を考える企業には重要な機能です。言語ごとにモデルの調整や翻訳機能の実装が必要となるため、対応言語の数によって費用が増加します。
セキュリティ機能は、特に機密情報を扱う場合には必須です。ユーザー認証、アクセス制御、データ暗号化などの機能が含まれます。
パーソナライゼーション機能は、ユーザーの過去の行動や嗜好に基づいて、より関連性の高い情報を提供する機能です。高度な機械学習アルゴリズムが必要となるため、比較的高額になります。
開発工程ごとの費用相場
RAGシステムの開発は複数の工程に分かれており、それぞれの工程で費用が発生します。
開発工程 | 費用の割合 | 費用(中規模の場合) |
---|---|---|
要件定義 | 全体の15%〜20% | 150万円〜240万円 |
設計 | 全体の20%〜25% | 200万円〜300万円 |
データ準備・前処理 | 全体の15%〜20% | 150万円〜240万円 |
実装 | 全体の25%〜30% | 250万円〜360万円 |
テスト | 全体の10%〜15% | 100万円〜180万円 |
運用保守(年間) | 開発費の20%〜30% | 200万円〜360万円/年 |
要件定義の段階では、RAGシステムの目的や求められる機能、パフォーマンス要件などを明確にします。この段階での綿密な計画が後の開発効率を大きく左右するため、十分な時間と予算を確保することが重要です。
設計段階では、システムアーキテクチャやデータベース構造、ユーザーインターフェースなどの詳細設計を行います。この段階での決定がシステム全体の性能や拡張性に影響するため、適切な技術選定が必要です。
データ準備・前処理は、RAGシステムの精度に直結する重要な工程です。社内文書やナレッジベースの整理、データクレンジング、インデックス作成などが含まれます。データの質と量によって費用が大きく変動する点が特徴です。
RAG開発の初期費用の他にかかる費用
RAGシステムの開発費用は、基本的に「人月単価(作業単価)×時間 + 固定費(サーバー代など)」で決まります。人月単価は開発者のスキルや経験によって異なりますが、一般的にAIエンジニアやデータサイエンティストは80万円〜120万円/月程度が相場です。
また、プロジェクトマネージャーやアーキテクトなど高度な専門知識を持つ人材はさらに高額になる傾向があります。
ここからは初期開発費用以外にかかる費用について詳しく見ていきましょう。
運用保守に年間200万円〜
RAGシステムの運用保守費用は、一般的に初期開発費用の20%〜30%程度が年間費用の目安となります。中規模のRAGシステム(開発費1000万円程度)の場合、年間200万円〜300万円の運用保守費用を見込んでおく必要があります。
運用保守費用に含まれる主な項目は以下の通りです。
- システム監視・障害対応
- セキュリティアップデート
- パフォーマンス最適化
- 小規模な機能改善・バグ修正
- ヘルプデスク・ユーザーサポート
特にRAGシステムでは、情報源となるデータベースの更新や、AIモデルの定期的な調整も重要な保守作業となります。データの鮮度がRAGの精度に直結するため、データ更新の頻度や範囲によっては追加コストが発生する可能性もあります。
インフラ費用に月額20万円〜
RAGシステムの運用には、サーバーやストレージ、ネットワーク等のインフラ費用が継続的に発生します。主なインフラコストは以下の通りです。
- クラウドサーバー利用料(AWS、Google Cloud、Azureなど)
- データベース利用料
- API呼び出し料金(OpenAIなど外部AIサービス利用時)
- ストレージ料金(データ保存用)
- ネットワーク転送料金
特にRAGシステムでは、大量のデータを保存・検索するためのデータベース利用料と、高性能な演算処理を行うためのサーバー利用料が主要なコスト要因となります。
規模にもよりますが、社内利用向けの中規模RAGシステムの場合、月額20万円〜50万円程度のインフラ費用が発生すると見込んでおくとよいでしょう。一般公開型の大規模システムになると、月額100万円を超えることもあります。
費用を抑えるためには、オートスケーリングの活用や、低頻度アクセスデータの低コストストレージへの移行など、クラウドリソースの最適化が重要です。
新機能・修正の開発費用
RAGシステムは導入後も、ビジネス要件の変化やユーザーフィードバックに基づいて機能追加や改善を行うことが一般的です。これらの追加開発にかかる費用は、機能の複雑さや規模によって大きく異なります。
代表的な追加開発項目とその費用の目安は以下の通りです。
- 小規模な機能追加:50万円〜100万円
- UI/UX改善:100万円〜300万円
- 新しいデータソース連携:100万円〜200万円/ソース
- 分析・レポート機能の拡張:150万円〜300万円
- パフォーマンス最適化:100万円〜300万円
計画的な拡張を行うためには、年間の開発予算として初期開発費の30%〜50%程度を確保しておくことが望ましいでしょう。
AIモデル利用料に月額10万円〜
RAGシステムでは、OpenAIのGPTやGoogle、Anthropicなどが提供する大規模言語モデル(LLM)を利用するケースが多く、APIの利用料金が継続的に発生します。料金体系はトークン数(処理する文字数)に基づいて計算されるのが一般的です。
例えば、GPT-4の場合、入力は1000トークンあたり約$0.01、出力は1000トークンあたり約$0.03の料金がかかります。ビジネス利用の場合、月間数百万トークンの処理が必要になることも珍しくありません。
利用規模によって大きく異なりますが、中規模のビジネス利用であれば月額10万円〜50万円程度、大規模な公開サービスとなると月額100万円以上のAIモデル利用料を見込む必要があります。
AIモデル利用料を最適化するには、クエリの効率化やキャッシュの活用、また自社でのモデル導入(初期投資は高いが長期的にはコスト削減になる可能性がある)などの戦略が考えられます。
データ収集・クレンジング費用
RAGシステムの精度は、ベースとなるデータの質と量に大きく依存します。そのため、質の高いデータを収集し、適切に前処理することが重要です。このデータ準備作業には以下のような費用が発生します。
- 外部データの購入費用:業界や目的によるが100万円〜500万円
- データクレンジング・前処理費用:データ量によるが100万円〜300万円
- データアノテーション(ラベル付け):50万円〜200万円
- データ更新・メンテナンス:年間50万円〜150万円
これらの費用は初期開発時に一部計上されることもありますが、システム運用後も継続的にデータ更新やメンテナンスを行う必要があり、ランニングコストとして計上すべき項目です。特に新しい分野や専門領域のRAGシステムでは、質の高いデータ収集に多くの投資が必要になる点に注意が必要です。
RAGの開発費用に影響する主な要素
RAGシステムの開発費用は、基本的に「人月単価(作業単価)×時間 + 固定費(サーバー代など)」で決まります。これらの要素に影響を与える主な要因について解説します。
1. 扱うデータの種類と量
RAGシステムの開発費用を大きく左右する要素の一つが、扱うデータの種類と量です。扱うデータが多様で大量になるほど、システムの複雑度が増し、開発コストも上昇します。
具体的には、以下のようなデータ関連の要素が費用に影響します。
- 複数の形式(テキスト、PDF、画像、音声など)に対応する必要がある場合
- 構造化されていないデータの処理が必要な場合
- 企業内の複数データベースと連携する必要がある場合
- 大量のデータを高速に検索できる仕組みが必要な場合
例えば、単一のテキストデータベースだけを対象とする場合と比べて、画像認識や音声認識も含めた複合的なデータ処理が必要になる場合は、開発工数が2〜3倍になることもあります。
2. 機能の複雑さ・専門性
RAGシステムの機能が複雑で専門的になるほど、開発に携わる人材に求められるスキルレベルも高くなります。
高度なAI知識やデータサイエンスのスキルを持つエンジニアの人月単価は一般的なエンジニアよりも高額であり、開発費用全体を押し上げる要因となります。
専門性が高くなる例としては以下のようなケースが挙げられます。
- 医療や法律など専門分野に特化したRAGシステムの開発
- 高度な自然言語処理や推論能力が求められる場合
- 複雑なクエリ処理や文脈理解が必要な場合
- マルチモーダル(テキスト、画像、音声などの複合)対応
特に専門分野向けのRAGシステムでは、その分野の専門知識を持つコンサルタントやSME(Subject Matter Expert)の参画も必要となり、人件費が大幅に増加する傾向があります。
3. 利用するAIモデルの種類と規模
RAGシステムで採用するAIモデル(LLM)の種類と規模によって、開発コストと運用コストが大きく変わります。より高性能なモデルを採用すると精度は向上しますが、その分コストも増加します。
費用に影響する主なモデル関連の要素は以下の通りです。
- 自社でモデルを構築するか、外部APIを利用するか
- オープンソースモデルを利用するか、商用モデルを利用するか
- モデルのサイズ(パラメータ数)や性能
- ファインチューニングの有無と範囲
例えば、OpenAIのGPT-4などの高性能モデルを利用する場合は高額なAPI利用料が発生しますが、オープンソースのLlamaやMistralなどを自社サーバーで運用する場合は、初期の構築コストは高いものの、長期的には運用コストを抑えられる可能性があります。
4. 開発要件の明確さ・変更回数
開発を始める時点での要件が明確でないと、後から仕様の変更や追加が発生し、開発費用が予想以上に高くなるリスクがあります。
特にRAGシステムは比較的新しい技術であるため、導入企業側でも要件を明確に定義できないケースが多々あります。
費用増加につながる主な要因は以下の通りです。
- 途中での検索対象データの追加や変更
- ユーザーインターフェースの大幅な変更
- 精度や応答速度に関する要件の厳格化
- セキュリティやコンプライアンス要件の追加
こうした変更を最小限に抑えるためには、開発の初期段階で十分な要件定義を行い、プロトタイプを使った検証を重ねることが重要です。アジャイル開発手法を採用し、小規模な機能から段階的に開発・リリースしていくアプローチも効果的です。
5. セキュリティ・コンプライアンス要件
RAGシステムは企業の機密情報や顧客データを扱うことが多いため、セキュリティやコンプライアンスの要件が厳しくなるほど、開発コストは上昇します。特に規制の厳しい業界(金融、医療、法律など)では、追加の安全対策が必要となります。
費用に影響する主なセキュリティ要素は以下の通りです。
- データの暗号化と安全な保管
- アクセス制御と認証の厳格化
- プライバシー保護対策(個人情報の匿名化など)
- 監査ログの記録と分析
- セキュリティ監査や脆弱性テスト
例えば、GDPR(EU一般データ保護規則)やHIPAA(米国医療保険の携行性と責任に関する法律)などの厳格な規制に準拠する必要がある場合、開発費用は通常よりも20%〜40%程度増加することがあります。
また、社内のセキュリティポリシーに基づいたカスタマイズや、オンプレミス環境での構築要件がある場合も、追加のコストが発生する点に注意が必要です。
RAGの開発費用を安く抑える5つのコツ
RAGの開発費用を安く抑えるコツは、以下のとおりです。
- 開発したいもののイメージを固めておく
- 不必要な機能は入れ込まない
- 実績・スキルがある会社に依頼する
- オープンソースモデルとツールを活用する
- データ準備と前処理に自社リソースを投入する
1. 開発したいもののイメージを固めておく
RAGシステム開発において、最初にしっかりとした要件定義とゴール設定を行うことが重要です。イメージが固まっていれば、見積もり時点で開発会社に明確に伝えることができ、後から変更が生じる可能性を減らせます。
具体的には以下のポイントを明確にしておくとよいでしょう。
- どのような情報源(社内文書、Webサイト、データベースなど)を検索対象とするか
- どのようなユーザー(社内の特定部門、全社員、顧客など)が利用するか
- どのような質問や検索に対応する必要があるか
- 回答の生成に求める精度や内容の詳細さはどの程度か
これらを事前に明確化しておくことで、開発会社は適切な技術選定と工数見積りを行うことができ、途中での大幅な仕様変更による追加コストを避けられます。
2. 不必要な機能は入れ込まない
RAGシステムは様々な高度な機能を実装できますが、すべての機能が必ずしも必要とは限りません。初期段階では必要最低限の機能に絞り、本当に価値を生み出す機能に集中することでコストを抑えられます。
以下のような機能は、必要性を十分に検討した上で導入を判断しましょう。
- 複雑な自然言語処理機能(感情分析、意図検出など)
- 多言語対応
- 高度なパーソナライゼーション
- 複雑なダッシュボードや分析機能
MVP(Minimum Viable Product:最小限の機能を持つ製品)アプローチを採用し、まずは基本機能だけで運用を始め、ユーザーフィードバックをもとに段階的に機能を追加していくことで、無駄な開発コストを削減できます。
3. 実績・スキルがある会社に依頼する
RAG開発の実績とスキルがある会社に依頼することは、長期的に見てコスト削減につながります。経験豊富な開発会社は以下のような利点があります。
- より正確な見積りが可能
- 開発速度が速く、品質も高い
- 問題の早期発見と効率的な解決が可能
- 既存のコンポーネントやライブラリを再利用できる場合がある
特にRAGシステムのような比較的新しい技術分野では、経験の差が大きく開発効率に影響します。安さだけで選んだ結果、品質問題や開発の遅延が発生し、最終的には追加コストがかかるケースも少なくありません。
開発会社を選ぶ際は、実績や過去のプロジェクト事例、技術ブログなどを確認し、本当に技術力があるかを見極めることが重要です。
4. オープンソースモデルとツールを活用する
商用APIに依存しすぎず、オープンソースのAIモデルやツールを積極的に活用することでコストを削減できます。最近では高性能なオープンソースモデルも増えており、多くの用途で十分な性能を発揮します。
コスト削減につながるオープンソース活用の例は以下の通りです。
- OpenAI APIではなく、Llama、Mistral、Falcon等のオープンソースモデルを利用
- Langchain、LlamaIndexなどのRAG構築フレームワークを活用
- Elasticsearch、Meilisearchなどのオープンソース検索エンジンを利用
- Hugging Faceのエコシステムを活用した開発
特に利用量が多い場合や長期運用を前提とする場合は、初期の構築コストがかかっても、自社サーバーでオープンソースモデルを運用する方が長期的にはコスト効率が良くなる場合が多いです。
5. データ準備と前処理に自社リソースを投入する
RAGシステム開発において、データの準備と前処理は大きなコスト要因の一つです。この部分に自社リソースを投入することで、外部委託コストを削減できます。
具体的なアプローチとして以下が挙げられます。
- 社内文書やナレッジベースの整理を社内で実施
- データのクレンジングや前処理の一部を自社社員が担当
- テスト用のクエリセットの作成を実際のエンドユーザーが担当
- 初期のラベリングやアノテーション作業を社内で分担
特に、その企業や業界特有の専門知識が必要なデータ準備については、外部に委託するよりも社内の専門家が関わった方が効率的でコスト効果も高いです。
また、データの整理と構造化は継続的なプロセスであるため、自社内にこのスキルを持つことで、長期的な運用コストも削減できるメリットがあります。
RAG開発費用の妥当性を評価するには?
見積もりを受け取った際に、その金額が妥当かどうか判断するのは難しいものです。特にRAGのような新しい技術領域では、市場が成熟しておらず比較対象も少ないため、なおさら難しくなります。
ここでは、RAG開発費用の妥当性を評価するポイントを紹介します。
あらかじめ相場を調べておく

RAG開発の費用相場を事前に調査しておくことで、見積もりの妥当性を判断する基準を持つことができます。費用相場の調査方法としては以下が有効です。
- 複数の開発会社から見積もりを取得し比較する
- 業界セミナーやカンファレンスで情報収集する
- 同業他社や知人のネットワークを通じて実例を聞く
- IT専門メディアやリサーチレポートで相場感を確認する
見積もりを比較する際は、単純な金額だけでなく、含まれる機能や対応範囲、保守サポートの内容なども含めて総合的に評価することが重要です。また、異常に安い見積もりには隠れたリスクがある可能性もあるため注意が必要です。
開発工程と工数の透明性を確認する
見積もりの妥当性を評価するには、開発工程ごとの具体的な作業内容と工数の内訳が明確になっているかを確認することが重要です。RAG開発における工程別のポイントは以下の通りです。
- 要件定義・設計:検索対象データの分析や前処理の方針、AIモデル選定などが含まれているか
- データ準備:データ収集、クレンジング、インデックス作成などの工数は適切か
- 実装:検索エンジンとAIモデルの連携、ユーザーインターフェース開発などの内訳は明確か
- テスト:精度評価や性能検証の方法と範囲は適切か
- 運用保守:データ更新やモデル調整などの継続的な作業が考慮されているか
各工程の工数が適切に配分されているか、特定の工程に偏りがないかをチェックすることで、見積もりの現実性を評価できます。適切な見積もりでは、データ準備と実装部分に多くの工数が配分されるのが一般的です。
技術的な選択肢と費用対効果を比較検討する
RAG開発では、採用する技術やアプローチによって費用が大きく変わります。見積もりに含まれる技術的な選択肢が自社のニーズと予算に適しているかを検討することが重要です。
費用対効果を評価するポイントは以下の通りです。
- 使用するAIモデル:高額な商用APIを使用する必要があるか、オープンソース代替案は検討されているか
- インフラ構成:クラウドかオンプレミスか、スケーラビリティと初期コストのバランスは適切か
- データ処理アプローチ:データの量と質に応じた適切な処理方法が選ばれているか
- 開発フレームワーク:既存のRAG開発フレームワークを活用して効率化できる部分はあるか
開発会社に対して、なぜその技術やアプローチを選択したのか、代替案と比較してどのようなメリット・デメリットがあるのかを質問し、その回答の論理性と透明性を評価することも重要です。
開発費用の妥当性評価では、単に「安いか高いか」だけでなく、投資対効果(ROI)の観点から判断することが大切です。RAGシステム導入による業務効率化や売上向上などの具体的なビジネス効果を試算し、開発費用との比較で判断するアプローチも効果的です。
失敗しないRAGの開発会社の選び方
RAGシステムの開発は専門性が高く、適切な開発パートナーを選ぶことが成功への大きな鍵となります。以下に、失敗しないRAG開発会社の選び方のポイントを紹介します。
RAGの開発実績があるか

RAGは比較的新しい技術であるため、実際の開発経験がある会社を選ぶことが重要です。以下の点を確認しましょう。
- 具体的なRAG開発の事例やケーススタディを持っているか
- 様々な業界や用途でのRAG導入経験があるか
- 開発したシステムの実際の運用実績はどうか
- 顧客の声や成功事例を確認できるか
単にLLMやチャットボットの開発経験があるだけでなく、検索機能と生成AIを組み合わせたRAGの特性を理解し、実際に実装した経験があることを確認することが大切です。
可能であれば、開発した事例のデモを見せてもらうか、実際に利用している企業の評価を聞くことを推奨します。
AIモデルとデータ処理の専門知識を持っているか

RAG開発では、AI技術だけでなくデータ処理や検索技術の専門知識も重要です。以下のポイントを確認しましょう。
- 自然言語処理(NLP)の専門知識を持つエンジニアが在籍しているか
- 様々なAIモデル(OpenAI、Claude、Llama、Mistralなど)の特性と違いを理解しているか
- ベクトルデータベースや検索エンジンの実装経験があるか
- データ前処理やエンベディング生成の最適化手法を理解しているか
開発会社のブログや技術資料、セミナーなどを確認し、単にAPIを呼び出すだけでなく、RAGの仕組みや技術的な課題を深く理解しているかを評価するとよいでしょう。また、オープンソースコミュニティへの貢献や技術カンファレンスでの発表なども、技術力を示す良い指標となります。
ドメイン知識とデータ活用のノウハウがあるか
RAGの精度は対象ドメインの理解度とデータの質に大きく依存します。開発会社が以下の能力を持っているかを確認しましょう。
- 自社の業界や業務に関する基本的な理解があるか
- 専門用語や特殊な表現を適切に処理できるか
- データ収集から前処理、インデックス作成までの一貫したノウハウがあるか
- データ品質の評価や改善の方法論を持っているか
特に専門性の高い分野(医療、法律、金融など)でRAGを導入する場合は、その分野の知識を持つコンサルタントやデータサイエンティストが在籍しているかどうかも重要なポイントとなります。
担当者とのやり取りに違和感がないか

コミュニケーションの質は開発プロジェクトの成功を左右する重要な要素です。特にRAGのような複雑なシステム開発では、要件や期待値を正確に共有することが不可欠です。
コミュニケーションに齟齬がある場合、こちらの要望が上手く伝わらず、思ったとおりのシステムができないリスクが高まります。事前のミーティングや提案のやり取りの中で以下の点を評価しましょう。
- 専門用語を適切に噛み砕いて説明できるか
- こちらの質問や懸念に対して誠実に回答するか
- 技術的な制約や課題を隠さずに共有するか
- 要件を正確に理解しているか確認するプロセスがあるか
また、プロジェクトマネジメントの方法論や進捗報告の頻度、問題発生時の対応方針なども事前に確認しておくことが重要です。
開発後の分析・改善までできるか

RAGシステムは導入して終わりではなく、継続的に改善していくことで真価を発揮します。発注者の要望に従うだけのシステム開発会社ではなく、利用データを分析して目的を踏まえた改善提案を行ってくれる会社を選ぶことが重要です。
特に利益創出の手段としてRAGシステムを利用したい場合は、以下のような能力を持つ会社を選びましょう。
- 利用ログやフィードバックデータの分析能力
- RAGの精度や性能を定量的に評価する仕組み
- ユーザーの行動パターンからの洞察抽出能力
- データとモデルの継続的な改善方法の提案
開発後のサポート体制やSLA(サービスレベルアグリーメント)の内容、保守契約の範囲なども事前に確認し、長期的なパートナーシップを築ける会社を選ぶことが、RAGシステムの成功につながります。
RAG(検索拡張生成)の開発ならニューラルオプト
RAG(検索拡張生成)の開発を検討する際は、専門知識と豊富な実績を持つ開発会社に相談することをおすすめします。
弊社ニューラルオプトは、Open AIのChat GPT開発にも携わっているなど、AI開発については深い知見を持っているのが強みです。
DXの重要性が高まる中、チャットボットの導入を検討してみてはいかがでしょうか。合同会社ニューラルオプトは、お客様のビジネス成長に貢献するため、全力でサポートいたします。