Webサイトで良質なKGI・KPIを設定する5ステップ。「良質」の定義や具体例も
KGIとKPIを理解しよう
WebサイトのKGI・KPIを設定する前にまず、その2つについての概要と違いについて解説していきましょう。
大まかには、以下の通りです。
- KGI(Key Goal Indicator):「重要目標達成指標」と呼ばれ、KPIの上位に位置する最上位目標の達成指標となります。例えばECサイトの場合、売上がKGIに設定されるでしょう。
- KPI(Key Performance Indicator):「重要業績評価指標」と呼ばれ、KGIを構成する要素を分解することで得られます。例えば「売上」をKGIとする場合、「売上=単価×販売個数」と考え、KPIを「単価」と「販売個数」に設定します。
詳しく見ていきましょう。
KGIとは
KGI(Key Goal Indicator)は「重要目標達成指標」と呼ばれます。
KGIは、ビジネスの最終目標を定量的に評価するための指標。KGIは、常にKPIの上位に存在します。つまり、KGIを達成するためにKPIを設定します。
例えばECサイトの場合、最も達成したい指標である最上位目標の「売上高」がKGIになります。一方、何かしらの契約を目的としたサイトは「契約数」がKGIに設定されるでしょう。
KPIとは
KPI(Key Performance Indicator)は、KGIを達成するために、間接的に達成しなければならない指標のことです。
KPIは、通常はKGIを構成する要素を分解することで得られます。
例えば「売上」をKGIとする場合、「売上=単価×販売数」だと考えるとKPIは「単価」と「販売数」になります。
あるいは「契約件数」をKGIとするWebサイトの場合は「契約件数=ユーザー数×成約率(CVR)」と考えKPIを「ユーザー数」「成約率」と設定することもあるでしょう。
このように、KPIはあくまで最上位目標であるKGIを達成するために設定する中間的な指標となります。
良質なKGIとKPIの条件:SMAC
良質なKGIとKPIの条件として、「SMAC」という言葉がマーケティングの現場ではよく使用されます。SMACとは「Specific(具体的)」「Measurable(測定可能)」「Achievable(達成可能)」「Consistent(一貫性がある)」の頭文字をつなげた造語です。
- Specific(具体的):具体性とは、数字のことです。例えば「市場でリーダーシップを確立する」というよりも、「30%の市場シェアを獲得する」と述べた方が具体的です。「何を」「どのくらい」「いつまで」は設定しましょう。
- Measurable(測定可能):測定できない指標であれば意味がありません。
- Achievable(達成可能):目的の達成が可能そうかどうかです。高い目標を設定するのは悪いことではありませんが、「一ヶ月後に売上1000%増を達成する」という目標は具体的で測定可能であるものの、達成可能かどうかは怪しいでしょう。
- Consistent(一貫性がある):KGI・KPIの方向性が、企業・事業の全体の方向性と一致しているかどうかも重要です。例えば、「とにかく安価に商品を提供する」という方向性の事業において、「商品の価格を200%に上げる」という目標は一貫性があるか精査した方が良いでしょう。
KGIとKPIを設定するときは、必ず「SMACであるか」を念頭に置きましょう。
WebサイトでKGIとKPIを設定するステップ
では、実際にWebサイトでKGIとKPIを設定していきましょう。
具体的なステップは、以下の通りです。
- Webサイトの目的を整理し、KGIを設定する
- KGIを構成する要素に因数分解する
- 要素のうち、操作可能かつ影響の大きいものをKPIに設定する
- 具体的なKPIを設定する
- さらにKPIを掘り下げる
1. Webサイトの目的を整理し、KGIを設定する
そのWebサイトは、何のために作るのでしょうか?認知獲得のため?売上の増加のため?それとも、新卒応募者数を増やすため?
目的に従って、達成するべき最上位目標(KGI)を考えてみましょう。
例えば、認知獲得が目的ならKGIは「Webサイトの月間ユニークユーザー数」になるでしょう。(ただ認知の獲得が目的なら、1人が何人も訪問すると増加してしまうPV数よりも月間ユニークユーザー数の方が適切です。)
売上の増加が目的ならばKGIは「Webサイト経由の月間売上高」、新卒応募者数を増やすのであれば「Webサイトへの流入によるエントリー数」になるでしょう。
「何を達成するか」が見えてきたら、次は「いつまでに」「どれだけ」を考えてみましょう。具体的には「Webサイト経由の月間売上高を、1年後に1億円にする」などです。
2. KGIを構成する要素に因数分解する
KGIは、直接的に成果を測定するのには優れているものの、「Webサイト経由の月間売上高を、1年後に1億円にする」と言われても漠然としていて「具体的に何をすれば良いのか」が分かりません。
具体的なアクションに繋げるために、次はKGIを構成する要素に因数分解しましょう。
例えば、「Webサイト経由の月間売上高を、1年後に1億円にする」というKGIの「Webサイト経由の月間売上高」は以下のように分解することが可能です。
Webサイト経由の月間売上高 = 月間ユニークユーザー数 × その商品カテゴリの月あたり平均購入数 × 各購入ごとで自社ブランドを選ぶ平均確率× 平均商品単価
ここでは分かりやすさのため、このあたりで分解はやめておきましょう。
「その商品カテゴリの月あたり平均購入数」は見方を変えると「購入頻度」とも言えます。例えば衣類用洗剤というカテゴリであれば、月あたり平均購入数は1つ程度でしょう。
「各購入ごとで自社ブランドを選ぶ平均確率」は、すべてのユニークユーザーがその商品カテゴリを購入しようとする場合、平均的にはどんな確率で自社ブランドを選ぶか、に関する確率です。
衣類用洗剤「クリーン」を仮定すると、ある人は50%(つまり2回のうち1回)、またある人は0%(つまり全く買うことがない)の確率で「クリーン」を選ぶでしょう。それらすべてを平均して得られる確率のことです。「レノア」や「アリエール」など有名なブランドでない限り、基本的にはほぼすべての人が0%(全く選ばない)であるため、この確率は非常に低くなります。
3. 要素のうち、操作可能なものに絞る
「Webサイト経由の月間売上高」は以下の4つの要素で構成されていることがわかりました。
- 月間ユニークユーザー数
- その商品カテゴリの月あたり平均購入数
- 月あたり購入数のうち自社ブランドを選ぶ確率
- 平均商品単価
では、「この4つ全てをKPIとして設定するべき」でしょうか?
答えはNoです。
なぜならば、Webサイトが操作できない範囲の変数が紛れているからです。リソースは有限なので、操作できない変数を変えようとするよりも操作できる変数を操作しようとすることに注力するべきです。
具体的には「その商品カテゴリの月あたり平均購入数」はWebサイトのKPIとしては確実に省いた方が良いでしょう。なぜなら「その商品カテゴリの月あたり平均購入数」は商品のカテゴリによってほぼ決まってしまうからです。例えば、顧客に「衣類用洗剤を月に4回は買い替えてください」と説得するのは困難です。そこにリソースを割くべきではありません。
ということで、KPIは以下の3つになりそうです。
- 月間ユニークユーザー数
- 月あたり購入数のうち自社ブランドを選ぶ確率
- 平均商品単価
4. 具体的なKPIを設定する
- 月間ユニークユーザー数
- 月あたり購入数のうち自社ブランドを選ぶ確率
- 平均商品単価
では、「Webサイト経由の月間売上高を、1年後に1億円にする」というKGIを達成するためには、具体的にこの3つの要素を「いつまで」に「どのくらい」にすれば良いのでしょうか?
仮に、現在の状況が以下の通りだと仮定します。「その商品カテゴリの月あたり平均購入数」は単純に1(月一で購入するもの)だとしましょう。
- 月間ユニークユーザー数:25000人
- 月あたり購入数のうち自社ブランドを選ぶ確率:2%
- 平均商品単価:10万円
結果的に…
- Webサイト経由の月間売上高(KGI):5000万円
「月間ユニークユーザー数 × その商品カテゴリの月あたり平均購入数 × 各購入ごとで自社ブランドを選ぶ平均確率× 平均商品単価 = Webサイト経由の月間売上高」に当てはめると、「25000 × 0.02 × 10 = 5000」となります。
では、「Webサイト経由の月間売上高」を10000万円(1億円)にするには、それぞれの変数をどうすれば良いでしょうか?
例えば、単純に「2倍の月間ユニークユーザー数を目指そう」となることもありえます。
- 月間ユニークユーザー数:50000人
- 月あたり購入数のうち自社ブランドを選ぶ確率:2%
- 平均商品単価:10万円
結果的に…
- Webサイト経由の月間売上高:1億円
こうなりますね。もしくは「月間ユニークユーザーと平均商品単価を少しずつ上げよう」というアプローチも考えられます。
- 月間ユニークユーザー数:40000人
- 月あたり購入数のうち自社ブランドを選ぶ確率:2%
- 平均商品単価:12.5万円
結果的に…
- Webサイト経由の月間売上高:1億円
実際にどのKPIをどこまで持っていくかは全体の戦略次第。Webの場合、狙っている市場が小さくなければ基本的には良質なコンテンツを作り続け、月間ユニークユーザー数を増やすのが最も単純なアプローチになると思います。
5. さらにKPIを掘り下げる
また、さらにKPIを掘り下げることもよくあります。
というのは、もっと細かく掘り下げた方が具体的なアクションに結び付けやすいからです。
例えば、「月間ユニークユーザー数」をさらに掘り下げみましょう。
- 月間ユニークユーザー数
- オウンドメディア(自社運営メディア)による流入
- ペイドメディア(外部メディアのうちお金を払うメディア、つまり広告)による流入
- アーンドメディア(外部メディアのうちお金を払っていないメディア)による流入
このように月間ユニークユーザー数は流入経路によってさらに3つに分解できます。
この3つのうち「オウンドメディアによる流入」というのは要するに「自社が運営するサイトに、広告費を払わずGoogle検索などから流入したもの」のこと。
オウンドメディアによる流入は、さらに「ページ数」「1ページあたりのユニークユーザー数」の2つに分解できます。ここまで分解すると「多くのコンテンツを更新してページ数を増やす」「コンテンツの質を高めて、1ページあたりのユニークユーザー数を増やす」のように具体的なアクションに結びつけやすくなります。
最終的なKPIを定めるときのポイント
「月間ユニークユーザー数」を最終的なKPIとするのか、それをさらに分解した「ページ数」「1ページあたりのユニークユーザー数」をKPIとするのかは、担当者の判断によります。
というのは、「KPIが細かぎると管理も現場も大変」という論理も「ざっくりとしたKPIでは具体的なアクションに結びつけにくい」という反対の論理も同時に成り立ってしまうからです。
そのため、最終的なKPIを定めるときはこの2つの論理のバランスをとって「KPIは具体的なアクションが結びつけやすい程度に細かいが、最大でも10個など管理しやすい数」に収めるのが良いでしょう。
KPIを細かく分解するときは、優先順位をつける
KPIをさらに細かく分解するときのコツは「影響が大きそうな変数に絞って、それだけ分解すること」です。つまり優先順位をつけよう、ということです。
KGIにほとんど影響を及ぼさないような細かい変数まで分解していると、作業量も膨大で、Webサイトを運営していく際に複雑さも増してしまいます。
ステップ3で操作可能な変数に絞ったのもそのため。「KGIに最も大きな影響を及ぼす変数は何か」を常に考えて、些細な変数に気を取られないように注意しましょう。
WebサイトでよくあるKGI・KPI
ここまでは、KGIとKPIを設定する方法について解説してきました。
方法論だけではいまいちイメージが湧かないはずなので、「実際、WebサイトではどのようなKPIを設定することが多いのか」を紹介していきます。
- ページビュー数(PV)
- ユニークユーザー数(UU)
- セッション数
- 直帰率
- コンバージョン率(CVR)
- 客単価
- お問い合わせ数
- 顧客獲得単価(CPA)
- リピート率
ページビュー数(PV)
ページビュー数とは、ある期間内にウェブサイトの特定のページが閲覧された回数。1人のユーザーが同じページを3回閲覧した場合、PVは3になる点に注意。
ユニークユーザー数(UU)
特定の期間内にウェブサイトを訪れた異なるユーザーの数。同じ人が3回訪れるとページビュー数は3になりますが、ユニークユーザー数は1になります。
困ったときは、財布の数、つまりユニークユーザー数(UU)に着目しましょう。
セッション数
ユーザーがウェブサイトに訪れてから離れるまでの一連の活動の数。訪問者がサイトに訪れてから30分間アクティビティがない場合、そのセッションは終了します。
例えば、「サイトに訪問→3つのページを見る→一度サイトから離れ、数時間後にまた訪問→3つのページを見る」という行動をとった場合、「1人のユーザーが2回に分けて合計で6ページを見た」となるため、ページビュー数は6、ユニークユーザー数は1、セッション数は2になります。
直帰率
訪問者がウェブサイトにアクセスしてすぐに離れる割合。一つのページのみを閲覧してサイトを離れるケースです。
一概には言えませんが、直帰率は「1つのページだけを見て、そのサイトの他のページには興味がなかった場合」に関する指標のため、「サイト全体でのコンテンツの一貫性」や「他のページへどれだけ辿り着きやすいか」を表します。
お問い合わせ数
ウェブサイト経由で発生した問い合わせの総数。お問い合わせの数の何割かが契約に結びつくと考えると、お問い合わせ数は契約件数に大きく関わる変数であり、Webサイトの場合、KGIとして設定されることも多いです。
コンバージョン率(CVR)
CVR(Conversion Rateは訪問者がウェブサイトで特定のコンバージョン(購入、問い合わせ、登録など)を達成する割合。コンバージョンとは要するにWebサイトに訪れた人を最終的に辿り着かせたいゴールのこと。
例えばお問合せをコンバージョンとする場合、CVRは「ユニークユーザー数 ÷ お問い合わせ数」になります。
「売上 = ユニークユーザー数 × CVR ×客単価」となるように、売上を構成する大きな変数として、KPIに設定されることが非常に多いです。
客単価
一人の顧客が平均的にどれだけの売上をもたらすかを示す金額。
「売上 = ユニークユーザー数 × コンバージョン率 ×客単価」となるため、コンバージョン率と同様、重要な変数となります。
ただ、客単価に大きな変数を及ぼすのは「そもそもどんな商品カテゴリか」「どれだけのブランド力があるか」であり、Webサイトが操作できる部分はそこまで大きくありません。KPIとして設定するには慎重になりましょう。無駄なリソースを使いかねません。
顧客獲得単価(CPA)
CPA(Cost per Acquisition)は1人の新しい顧客を獲得するためにかかる平均コスト。マーケティング効率を評価し、予算配分を最適化するのために重要です。広告を使用する場合によく追います。
例えば、「100万円をかけて、5人の顧客を獲得した」時のCPAは100÷5で20万円になります。
CPAは要するにコストパフォーマンスを表す指標であり「そもそもこの手段は正しいのか」に関係してくるため、重要性が高い指標となります。
リピート率
顧客が再度購入や利用を行う割合。リピート率はつまり商品やサービスの満足度を測る指標。
一見Webサイトよりむしろ「商品・サービスのクオリティ」に関係していそうな指標ですが、「そもそも商品・サービスに対して正しいユーザー層をWebサイトが集められているか」に関わる指標でもあるので、KPIとして設定されることもあります。
KGIとKPIのまとめ
- KGI(Key Goal Indicator):「重要目標達成指標」と呼ばれ、KPIの上位に位置する最上位目標の達成指標となります。例えばECサイトの場合、売上がKGIに設定されるでしょう。
- KPI(Key Performance Indicator):「重要業績評価指標」と呼ばれ、KGIを構成する要素を分解することで得られます。例えば「売上」をKGIとする場合、「売上=単価×販売個数」と考え、KPIを「単価」と「販売個数」に設定します。
- Specific(具体的):具体性とは、数字のことです。例えば「市場でリーダーシップを確立する」というよりも、「30%の市場シェアを獲得する」と述べた方が具体的です。「何を」「どのくらい」「いつまで」は設定しましょう。
- Measurable(測定可能):測定できない指標であれば意味がありません。
- Achievable(達成可能):目的の達成が可能そうかどうかです。高い目標を設定するのは悪いことではありませんが、「一ヶ月後に売上1000%増を達成する」という目標は具体的で測定可能であるものの、達成可能かどうかは怪しいでしょう。
- Consistent(一貫性がある):KGI・KPIの方向性が、企業・事業の全体の方向性と一致しているかどうかも重要です。例えば、「とにかく安価に商品を提供する」という方向性の事業において、「商品の価格を200%に上げる」という目標は一貫性があるか精査した方が良いでしょう。
- Webサイトの目的を整理し、KGIを設定する
- KGIを構成する要素に因数分解する
- 要素のうち、操作可能かつ影響の大きいものをKPIに設定する
- 具体的なKPIを設定する
- さらにKPIを掘り下げる
この記事では、KGIとKPIとはそもそも何なのかから、良質なKGIとKPIの条件としてSMACを取り上げ、実際にKGIとKPIを設定する方法について解説しました。
細かなKPIを設定することで、「具体的に何をすれば良いのか」が明確になります。Webサイトの場合は、「そのKPIを達成するためには、どんなサイトにするべきか」「そのサイトは、どんな構造か(サイトマップ)」を考えることがようやく可能になります。
「進んでみたはいいものの、そもそも進む方向が間違っていた」とならないように、KGI・KPIの設定はしっかり時間をかけて慎重に行いましょう。