企業がDXや新技術を導入する際、「実際に効果があるのか?」「現場で使えるのか?」という疑問を持つのは当然です。そこで重要になるのが「PoC(Proof of Concept:概念実証)」。本格導入前に小規模で技術の有効性を検証する取り組みのことです。
今回は、日本企業が実際に行ったPoC事例を4つの観点で分類し、どのような成果を上げたかを詳しくご紹介します。定量的な効果から現場での使い勝手まで、リアルなデータとともにお伝えしていきます。
収益・効率を定量で実証した事例

こちらでは、具体的な数値でコスト削減や効率向上を実証できた事例をまとめました。以下の5つの事例をご紹介します。
- KDDIエボルバが量子関連技術でシフト作成時間を5割超短縮した事例
- ローソンがAI最適化で配送台数8%削減を実現した事例
- JR東日本が生成AIで復旧時間を最大50%短縮見込みとした事例
- みずほフィナンシャルグループがwatsonxで98%の精度を達成した事例
- NECが映像AIで生産性4%改善見込みを確認した事例
KDDIエボルバが量子関連技術でシフト作成時間を5割超短縮した事例

量子関連技術で勤務シフト作成時間を5割超短縮、業務実証に成功 | 2022年 | KDDI株式会社
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 企業名 | KDDIエボルバ × KDDI × 日立 |
| 業界 | コンタクトセンター |
| ビフォー | シフト作成が属人的・長時間 |
| アフター | 量子関連技術(CMOSアニーリング等)で自動化 |
コンタクトセンターでは、スタッフの勤務シフトを組むのに多くの時間と労力がかかっていました。従来は経験豊富な管理者が手作業で調整しており、約11時間もの時間を要していたのです。
この課題に対し、量子関連技術の一つであるCMOSアニーリングという最適化技術を活用。複雑な条件下でも効率的にシフトパターンを計算できるシステムを開発しました。実証実験では作成時間を約5時間まで短縮することに成功し、5割を超える効率化を実現。
現在は実際の勤務現場での運用も始まっており、量子技術の実用性を証明した貴重な事例となっています。
ローソンがAI最適化で配送台数8%削減を実現した事例

<参考資料>AIによる店舗配送ダイヤグラム最適化の実証実験開始|ローソン公式サイト
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 企業名 | ローソン × オプティマインド |
| 業界 | 小売・物流 |
| ビフォー | 3か月固定の配送ダイヤ |
| アフター | 走行軌跡×店舗物量でAI最適化 |
コンビニの店舗配送では、従来3か月間同じダイヤグラム(配送スケジュール)を使い続けていました。しかし、実際の店舗ごとの商品需要や配送ルートの混雑状況は日々変動するため、非効率な配送が続いていたのです。
そこでローソンは、過去の走行データと各店舗の物量データをAIで分析し、最適な配送ルートを動的に計算するシステムを導入しました。群馬の物流センターでの試算では配送台数を8%削減し、CO₂排出量も約7%の削減を実現。この成果を受けて400店舗での運用も開始され、環境負荷軽減と運営コスト削減の両立を図っています。
JR東日本が生成AIで復旧時間を最大50%短縮見込みとした事例

信号通信設備に「鉄道版生成AI」を活用し輸送のさらなる安定性向上を実現します
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 企業名 | JR東日本 × 日立/BIPROGY |
| 業界 | 鉄道 |
| ビフォー | 故障・障害時の原因特定に時間 |
| アフター | 生成AIが原因推定・復旧手順提示 |
鉄道の信号や通信設備に障害が発生した際、原因の特定と復旧作業には専門知識と経験が必要で、多くの時間を要していました。特に複雑な設備では、熟練技術者でも原因究明に苦労するケースが少なくありません。
JR東日本では、過去の障害データや設備情報を学習した生成AIを開発し、障害発生時に自動で原因を推定して復旧手順を提示するシステムを構築。このシステムにより、復旧時間を最大50%短縮できる見込みを確認しました。
2025年9月からATOS(東京圏輸送管理システム)での実証実験を開始予定で、鉄道の安定運行に大きく貢献することが期待されています。
みずほフィナンシャルグループがwatsonxで98%の精度を達成した事例

〈みずほ〉と日本IBM、システム運用に生成AIを活用する実証実験を通じて運用の高度化を実現 | みずほフィナンシャルグループ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 企業名 | みずほFG × 日本IBM |
| 業界 | 金融(運用) |
| ビフォー | エラーメッセージ監視・対応が非効率 |
| アフター | watsonx基盤モデルで自動判別 |
金融機関のシステム運用では、大量のエラーメッセージやアラートが日常的に発生し、その中から本当に対応が必要なものを判別するのに多くの人手と時間がかかっていました。
みずほフィナンシャルグループでは、IBMの生成AI基盤「watsonx」を活用し、システムから発生するイベントを自動で分類・判別するシステムを構築。実証実験では98%という高い精度でのイベント検知・対応を実現しました。
これにより、システム運用担当者の負荷を大幅に軽減でき、より重要な業務に集中できる環境を整備。来年度には本番運用への適用を予定しており、金融業界におけるAI活用の先進事例として注目されています。
NECが映像AIで生産性4%改善見込みを確認した事例

NEC、映像AI技術を活用して手指を使った作業状況を識別・可視化・分析するソリューションを販売開始 (2025年5月21日): プレスリリース | NEC
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 企業名 | NEC |
| 業界 | 製造 |
| ビフォー | 現地観察依存 |
| アフター | 映像AI×デジタルツインで作業ログ可視化 |
製造現場では、作業効率を改善するために現場の状況を把握する必要がありますが、従来は人が直接観察するか、簡単な計測器に頼る程度でした。作業者の詳細な動きや手順を客観的に分析するのは困難だったのです。
NECでは、映像AIと呼ばれるカメラ画像を解析する技術を活用し、作業者の手指の動きまで詳細に識別できるシステムを開発。これをデジタルツイン(現実をデジタル空間で再現する技術)と組み合わせることで、作業ログを可視化し分析できるようにしました。
自社の製造現場でのPoC実験では、生産性を4%改善できる見込みを確認。現在は先行導入を進めており、製造業における映像AI活用の可能性を示した事例となっています。
業務適合性・ユーザ受容を現場で検証した事例
実際の現場でシステムが使えるかどうか、利用者に受け入れられるかを重点的に検証した事例です。以下の6つの事例をご紹介します。
- パナソニックが東京ドームで顔認証入場・決済の運用を開始した事例
- TOUCH TO GOが狭小地での無人決済店舗を展開した事例
- インテックが日本体操協会とクラウド演技解析の使用感を評価した事例
- 富士通がJALで機内オフライン環境でのSLM活用を検証した事例
- タリーズがWELLCUP真空ボトルの貸借システムを運用検証した事例
- インテックが製造現場での姿勢推定AIの適合性を確認した事例
パナソニックが東京ドームで顔認証入場・決済の運用を開始した事例

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 企業名 | パナソニック × 東京ドーム |
| 業界 | エンタメ・スポーツ |
| ビフォー | 入退場/決済が混雑・接触発生 |
| アフター | 顔認証入場・決済を運用開始(2022/3〜) |
コロナ禍において、スポーツ観戦や大型イベントでは入場時の混雑や接触機会の削減が重要な課題となっていました。従来のチケット確認や現金決済では、どうしても人との接触や待ち時間が発生してしまいます。
パナソニックは東京ドームと連携し、顔認証技術を活用した入場・決済システムを導入しました。事前に顔情報を登録した来場者は、ゲートで顔をかざすだけで入場でき、売店での決済も同様に顔認証で完了できる仕組みです。特に注目すべきは、マスクを着用したままでも高い認証率を実現したこと。
実証環境での検証を経て、2022年3月から実際の運用を開始し、複数のゲートや店舗に展開しています。技術的な精度だけでなく、実際の利用者体験まで含めて検証した成功事例といえるでしょう。
TOUCH TO GOが狭小地での無人決済店舗を展開した事例

東芝テック:狭小地での無人決済店舗の展開に関する実証実験の実施について
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 企業名 | TOUCH TO GO × 東急ストア × 東芝テック |
| 業界 | 小売(無人決済) |
| ビフォー | 従業員休憩室など狭小地での省人化が課題 |
| アフター | TTG-SENSE MICROで無人決済 |
企業の従業員食堂や病院内の売店など、狭いスペースでの小売店舗運営では人件費が課題となっていました。しかし、従来の無人決済システムは広いスペースが必要で、狭小な場所への導入が困難だったのです。
TOUCH TO GOが開発した「TTG-SENSE MICRO」は、コンパクトな設計で狭い場所でも設置可能な無人決済システム。商品を手に取って出口を通るだけで、AIが自動的に商品を認識して決済を完了させます。
東急ストアや東芝テックとの協業により、従業員専用の売店や24時間営業が必要な場所での実証実験を実施。実際の運用を通じてシステムの安定性や利用者の使い勝手を検証し、協業店舗の拡大につなげています。技術の完成度だけでなく、現実的な運用面での課題解決を重視した取り組みです。
インテックが日本体操協会とクラウド演技解析の使用感を評価した事例

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 企業名 | インテック × 日本体操協会(トランポリン) |
| 業界 | スポーツ科学 |
| ビフォー | 専用端末・現地依存 |
| アフター | クラウド演技解析で代表25名が遠隔利用 |
トランポリン競技では、選手の演技を科学的に分析するために専用の機器や設備が必要でした。しかし、これらの設備は特定の場所にしか設置されておらず、全国各地の選手が利用するには物理的な制約がありました。
インテックは日本体操協会と連携し、クラウド上で演技解析ができるシステムを開発。選手が撮影した動画をアップロードするだけで、AIが自動的に技の種類や完成度を分析し、改善点をフィードバックする仕組みです。
2025年1月から3月にかけて、トランポリン日本代表25名にアカウントを配布し、実際の使用感や実用性をPoC形式で評価中。単なる技術検証ではなく、アスリートの視点からの使いやすさや実際のトレーニングでの有効性を重視した検証を行っています。
富士通がJALで機内オフライン環境でのSLM活用を検証した事例

富士通とヘッドウォータース、日本航空客室乗務員のレポート作成業務効率化に向け業務特化型オンデバイス生成AIソリューションの実証実験を実施 : 富士通
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 企業名 | 富士通 × ヘッドウォータース × JAL |
| 業界 | 航空 |
| ビフォー | 機内オフラインでレポート作成が手作業 |
| アフター | 端末内SLMで下書き生成 |
航空会社の客室乗務員は、フライト中に様々なレポートを作成する必要がありますが、機内では通常インターネットに接続できないため、手作業でのレポート作成が負担となっていました。クラウド型のAIサービスは利用できず、作業効率の改善が困難だったのです。
富士通とヘッドウォータースは、JALと共同で端末内で動作する小型の言語モデル(SLM:Small Language Model)を活用したシステムを開発。インターネット接続がなくても、端末内でレポートの下書きを自動生成できるようにしました。
実証実験では作業時間の短縮と修正率の低下を確認し、オンデバイスでの処理によりセキュリティ面での安全性も確保。オフライン環境という制約がある中で、実用的なAI活用を実現した事例として注目されています。
タリーズがWELLCUP真空ボトルの貸借システムを運用検証した事例

プレスリリース(2025/6/18) |プレスリリース |会社情報 |TULLY’S COFFEE – タリーズコーヒー
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 企業名 | タリーズ × 丸紅フォレストリンクス |
| 業界 | カフェ(リユース) |
| ビフォー | 使い捨てカップ依存 |
| アフター | WELLCUP真空ボトルの貸借・返却を6店舗で運用検証(2025/4–9) |
カフェチェーンでは環境への配慮から使い捨てカップの削減が課題となっていますが、マイカップの持参率は低く、実効性のある解決策が求められていました。タリーズコーヒーは丸紅フォレストリンクスと連携し、「WELLCUP」という真空断熱ボトルの貸出・返却システムを開発。
顧客は店舗でボトルを借り、飲み終わったら提携店のどこでも返却できる仕組みです。2025年4月から9月にかけて6店舗での運用検証を実施し、「導入店ならどこでも返却」というユーザーエクスペリエンスや実際の店舗オペレーションを詳細に検証中。
技術面だけでなく、顧客の行動変容や店舗スタッフの業務負荷など、実運用に必要な要素を総合的に評価しています。サーキュラーエコノミー(循環型経済)の実現に向けた実践的な取り組みといえるでしょう。
インテックが製造現場での姿勢推定AIの適合性を確認した事例

インテック、AIで人の動態から作業内容を推定し、 製造業の生産性を可視化する実証実験を開始 ~作業内容の自動収集、抜け漏れなどの自動チェック、 匠の暗黙知のデータ化などを検証~|ニュース|インテック
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 企業名 | インテック × 横河システム建築/横河商事 |
| 業界 | 製造 |
| ビフォー | 人作業の実績把握が人手依存 |
| アフター | 姿勢推定AIで標準順守/暗黙知を可視化 |
製造現場では作業者のスキルや工程の標準化が重要ですが、従来は目視による確認や手作業でのデータ記録に依存していました。特に熟練者の持つ暗黙知や作業の標準順守状況を客観的に把握するのは困難でした。
インテックは横河システム建築・横河商事と連携し、カメラ映像から作業者の姿勢や動作を自動で認識・分析する姿勢推定AIを開発。作業者の動きから標準作業への準拠度合いや、熟練者特有の技術を可視化できるシステムを構築しました。
2024年1月から4月にかけて実施したPoCでは、工程や実証期間を明示した上で現場での適合性を検証。単なる技術検証ではなく、実際の製造現場で受け入れられるかどうかを重視した実証実験となっています。
■少しでもAI・システム開発やPoCに興味があれば、まずはお気軽にご相談ください。目的・課題を伺ったうえで、弊社から手堅く進める方法・お見積りをお伝えさせていただきます。
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スケーラビリティ・性能(距離/規模/アーキテクチャ)を技術的に検証した事例
技術的な限界への挑戦や、大規模展開時の性能を検証した事例をまとめました。以下の3つの事例をご紹介します。
- eSOLがルネサスと次世代ECUアーキテクチャの実現性を検証した事例
- JP楽天ロジスティクスが片道約12km自動飛行でのドローン配送に成功した事例
- 富士通が北海道で40台のセンサーによる広域人流可視化を実証した事例
eSOLがルネサスと次世代ECUアーキテクチャの実現性を検証した事例

自動車向けSOAアーキテクチャ用ECU集約通信ゲートウェイのPoC(概念実証)をルネサスのSoC上で実施 | プレスリリース | eSOL – イーソル株式会社
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 企業名 | eSOL × ルネサス |
| 業界 | 自動車 |
| ビフォー | ECU乱立/複雑化 |
| アフター | R-Car S4上でSOAゲートウェイECUのPoC |
現代の自動車には数十個から100個以上のECU(電子制御ユニット)が搭載されており、それぞれが個別に機能を制御しています。しかし、この分散型のアーキテクチャは配線の複雑化やコスト増加を招き、将来的な拡張性にも限界がありました。
eSOLはルネサスエレクトロニクスと共同で、SOA(Service Oriented Architecture:サービス指向アーキテクチャ)を活用した次世代の中央集約型ECUの実現可能性を検証。ルネサスの高性能プロセッサ「R-Car S4」上で、複数の機能を統合制御できるゲートウェイECUのPoCを実施しました。
従来は個別のECUで処理していた機能を一つの高性能ECUに集約することで、配線の簡素化と処理効率の向上を両立。自動車業界の次世代アーキテクチャ実現に向けた重要な技術検証として位置づけられています。
JP楽天ロジスティクスが片道約12km自動飛行でのドローン配送に成功した事例

JP楽天ロジスティクス、都市部の超高層マンションに向けたドローンによるオンデマンド配送に国内で初めて成功 | 楽天グループ株式会社
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 企業名 | JP楽天ロジスティクス(日本郵便×楽天) |
| 業界 | 物流(ドローン) |
| ビフォー | 都市部/長距離×超高層への受け渡しが難 |
| アフター | 片道約12km自動飛行でオンデマンド配送に成功(国内初) |
都市部での物流において、高層マンションへの配送は時間とコストがかかる課題でした。特に長距離かつ高層階への配送となると、従来の配送手段では効率性に限界があります。
JP楽天ロジスティクス(日本郵便と楽天の合弁会社)は、ドローンによる長距離自動飛行配送の技術検証に挑戦。片道約12kmという長距離を自動飛行し、都市部の超高層マンションに向けた配送を国内で初めて成功させました。住民が専用サイトで商品を発注すると、最大積載重量7kgの機体が自動でルートを飛行して配送を行う仕組み。
距離、高度、積載重量というドローン配送の技術的な限界に挑戦し、実用化に向けた重要な検証データを取得しています。都市部での新たな配送インフラとしての可能性を示した画期的な実証実験です。
富士通が北海道で40台のセンサーによる広域人流可視化を実証した事例

北海道広域で観光客などの人の流れをIoTで可視化する実証を開始 : 富士通
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 企業名 | 富士通 × 北海道(観光人流) |
| 業界 | 観光/スマートシティ |
| ビフォー | 観光客動態の把握が点的 |
| アフター | 40台のWi-Fiパケットセンサーで広域可視化 |
観光地の人流データは観光政策や混雑対策において重要ですが、従来は特定の観光スポットでの来訪者数を個別に把握する程度にとどまっていました。観光客がどのようなルートで移動し、どこで滞在するかという面的な動態は把握が困難だったのです。
富士通は北海道と連携し、Wi-Fiパケットセンサー40台を札幌駅・新千歳空港・後志地域の3エリアに設置。観光客のスマートフォンが発信するWi-Fi電波を匿名で検知することで、広域にわたる人の流れを可視化するシステムを構築しました。
複数エリアでの大規模センサーネットワークにより、従来では不可能だった観光客の移動パターンや滞在時間の分析を実現。スマートシティ実現に向けた人流データ活用の技術的な可能性と課題を検証した先進的な取り組みです。
連携・規制適合/セキュリティを制度面まで検証した事例
技術的な検証だけでなく、法規制への適合や業界間連携の仕組みまで含めて検証した事例です。
・関西電力送配電がUI銀行・カウリスと電力データを活用したKYC実証を開始した事例
関西電力送配電がUI銀行・カウリスと電力データを活用したKYC実証を開始した事例

電力データを用いたマネー・ローンダリング対策の実証実験を開始
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 企業名 | 関西電力送配電 × UI銀行 × カウリス |
| 業界 | 金融×電力 |
| ビフォー | 口座開設時の不正/AML対策が限界 |
| アフター | 電力設備情報の一部をKYC/継続的顧客管理に活用するPoC |
金融機関では口座開設時の本人確認(KYC:Know Your Customer)やマネーロンダリング対策(AML:Anti-Money Laundering)が重要ですが、従来の書類確認だけでは不正利用を完全に防ぐことは困難でした。特に継続的な顧客管理においては、新たなデータソースの活用が求められています。
関西電力送配電、UI銀行、カウリスの3社は、電力設備情報の一部を金融機関の顧客管理に活用する画期的な実証実験を開始。電力データを金融サービスで利用するには電気事業法の改正が必要でしたが、法令改正を反映した初の案件として法的適合性を確認しながら進めています。
単なる技術検証ではなく、業界をまたぐデータ連携に必要な規制対応や制度設計まで含めた総合的な実証実験。新たなデータ活用モデルの実現可能性を制度面から検証する重要な取り組みとなっています。
PoCを成功に導く設計ポイント

これまでの事例を参考に、自社でPoCを実施する際に押さえておくべき設計のポイントをまとめました。以下の5つの重要な要素について詳しく解説します。
成功基準を明確に定義する
PoCで最も重要なのは「何をもって成功とするか」を事前に明確にすることです。曖昧な目標では、実証実験が終わっても「結局効果があったのかどうか分からない」という事態になりかねません。
まず、定量的に測定可能なKPI(重要業績評価指標)を設定しましょう。例えば「作業時間を20%短縮する」「エラー率を5%以下に抑える」といった具体的な数値目標です。同時に、最低限達成すべきラインも決めておくことが重要になります。
「理想は30%短縮だが、最低でも10%短縮できれば次のステップに進む」といった判断基準を設けることで、客観的な評価が可能になります。
検証スコープを適切に設定する
PoCでは「何を検証するか」と同じくらい「何を検証しないか」を明確にすることが大切です。あれもこれもと欲張ると、結果的にどの要素の効果なのか判断できなくなってしまいます。
検証対象となる業務プロセスや部署、期間を明確に区切り、それ以外の要素は固定条件として扱いましょう。また、検証を始める前提条件も整理が必要。「現在のシステム環境はそのまま」「追加の人員配置は行わない」といった制約を明文化することで、現実的な検証結果を得られます。
スコープを絞ることで、限られた予算と期間の中で確実な成果を上げることができるのです。
客観的な評価設計を作る
PoCの結果を正しく評価するには、比較対象を設けることが不可欠です。新しいシステムを導入した場合の結果だけでなく、従来の方法での結果も同じ条件で測定し比較する必要があります。
例えば、AI診断システムを導入する場合、同じ患者データで従来の診断方法とAI診断の両方を実施し、精度や時間を比較するといった方法。また、十分なサンプル数と適切な検証期間の設定も重要です。
1週間だけの検証では偶然の要素が大きすぎるため、少なくとも1か月以上、できれば季節変動なども考慮した期間での検証を行いましょう。
必要なデータ要件を整備する
AIやデジタル技術のPoCでは、質の高いデータが成功の鍵を握ります。検証開始前に、必要なデータの種類、量、品質基準を整理しておきましょう。
データの取得方法や前処理(クリーニングや形式統一)の手順も事前に決めておく必要があります。特に注意すべきは、データの取得権限や利用許可。個人情報や機密情報を含む場合は、法令遵守や社内規定への適合を確認し、必要に応じて同意取得の手続きを整備します。
本格運用時にも同じ品質のデータを継続的に取得できるかも検討しておくことが重要です。
本格導入への移行基準を設定する
PoCが成功した場合の次のステップを事前に合意しておくことで、スムーズな本格導入につなげられます。Go/No-Go(進める/やめる)の判断基準を具体的に設定し、関係者間で共有しましょう。
成功した場合のパイロット運用の規模や期間、本格導入時の体制や予算についても大まかな計画を立てておきます。一方、期待した効果が得られなかった場合の対応方針も決めておくことも大切です。
「他の技術での再検証を行う」「課題設定を見直す」といった選択肢を用意しておけば、失敗を次の成功につなげることができます。
社内合意・予算獲得のための提案作り


PoCを実施するには、社内の理解と予算確保が不可欠です。効果的な提案を作成するための3つのポイントをご紹介します。
事業への具体的インパクトを示す
社内での合意を得るには、PoCがもたらす事業効果を具体的に示すことが重要です。定量的な効果として「年間コスト○○万円削減」「売上○%向上」といった数値を、可能な限り根拠とともに提示しましょう。
同時に、定性的な効果も重要。「従業員の働きやすさ向上」「顧客満足度の改善」「新規事業創出の可能性」など、数値では表しにくいメリットも説得力のある表現で伝えます。業界他社の成功事例や、今回ご紹介したような具体的なPoC実績を参考資料として活用することで、提案の信頼性を高められるでしょう。
経営陣が関心を持つ経営課題と関連付けることも効果的です。
説得力のある投資対効果を算出する
予算承認には明確な投資対効果(ROI:Return on Investment)の提示が必要です。PoCにかかる費用(システム開発費、人件費、設備費など)と、得られる効果(コスト削減額、売上増加額など)を整理し、投資回収期間を算出しましょう。
例えば「初期投資500万円、年間300万円の効果で約1.7年で回収」といった形で示します。ただし、過度に楽観的な数値は信頼性を損なうため、保守的な前提での試算も併せて提示することが重要です。
PoCが失敗した場合のコストや、実施しなかった場合の機会損失についても触れることで、投資判断の材料を包括的に提供できます。
段階的導入計画を作成する
いきなり全社展開を提案するより、PoC→パイロット運用→本格導入という段階的なアプローチを提示する方が承認されやすくなります。各段階での目標、期間、予算、評価基準を明確に示し、前の段階の成果に基づいて次のステップに進む判断基準も設定しましょう。
例えば「PoCで20%の効率化を確認できれば、3部署でのパイロット運用に移行」「パイロットで安定運用を確認できれば、全社展開を検討」といった具体的なマイルストーンです。
これにより、リスクを抑えながら段階的に効果を拡大していく道筋を示すことができます。
AI・システム開発のPoCならニューラルオプト
これまでご紹介してきたような本格的なPoC実施をお考えの企業様には、合同会社ニューラルオプトをお勧めいたします。当社は世界的生成AIであるChatGPTの開発に携わるAI開発企業として、日本で展開されているChatGPTの裏側にも関わっている技術力を持っています。
単純な開発受託ではなく、コンサルティングから対応可能な点が最大の特徴。「失敗リスクを最小化する」をコンセプトに、まず課題の整理と解決策の提案から始まり、組織への定着支援、そして運用しながら主体的に改善を続ける総合的なサポートを提供いたします。
データサイエンスの知見も豊富で、データマイニングやテキストマイニングにも対応。これまでにECサイト「eBay」の価格自動設定AI・業務システムや手書き文字のAI認識・要約システムなど、多様な分野での開発実績を持っています。
課題解決の相談から始めたい、失敗リスクを抑えて確実な成果を上げたいとお考えの企業様に最適なパートナーです。







