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Teamsにおけるチャットボットの活用事例12選!効果別に整理して紹介

Microsoft Teamsの普及に伴い、社内のコミュニケーション基盤としての活用が進む一方で、問い合わせ対応や業務効率化の課題も顕在化しています。こうした課題を解決する手段として、Teamsと連携したチャットボットの導入が注目を集めており、多くの企業で実際に成果を上げています。

本記事では、異なる業界・規模の12社がTeamsチャットボットを活用して実現した具体的な成果を、5つの導入目的別に整理してご紹介します。各事例では導入前後の変化、定量的な効果、成功のポイントを詳しく解説していきます。

この記事でわかること
  1. Teamsチャットボットは導入目的別に最適解が異なる 問い合わせ自動化(NTT東日本)、業務フロー効率化(日立)、エンゲージメント向上(大和ハウス)、大規模展開(住友商事)など、12社の事例から自社の課題に合った導入パターンと期待効果(30〜70%削減)が具体的に把握できます。
  2. 成功の鍵は技術選定より要件定義と運用体制にある ノーコード/カスタム開発の使い分けだけでなく、定量的目標設定(月800件→50%削減など)、段階的導入、継続改善のKPI設定が成否を分けます。特に導入後6ヶ月で精度が最大25%低下するため、運用体制構築が不可欠です。
  3. 導入前に押さえるべき3つの落とし穴と対策 ①「質問されていない潜在課題」の見落とし→現場ヒアリングで仮説検証、②高機能型の過剰投資→最小構成で2〜3ヶ月検証後に拡張、③会話ログのコンプライアンスリスク(68%が個人情報含有)→導入前に法務・情シスと運用ルール策定が必須です。

以下の記事ではチャットボットの事例についてより広くまとめています。

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目次

問い合わせ自動化で業務負荷を削減した事例

以下の企業事例をご紹介します。

  • NTT東日本がヘルプデスク対応を効率化した事例
  • SBテクノロジーが集合知でFAQ運用した事例
  • リコーがMicrosoft 365問い合わせをゼロ化した事例
  • カカクコムが現場主導でボット構築した事例
  • 鹿島建物総合管理が24時間対応を実現した事例
  • 京都橘大学が学生サポートを向上させた事例
  • 社会医療法人愛仁会が人事問い合わせを効率化した事例

NTT東日本がヘルプデスク対応を効率化した事例

東日本電信電話株式会社 ビジネスイノベーション本部 ビジネスサポート部 ― AIチャットボット× MS Teams によってヘルプデスク対応を効率化! 問合せデータ活用でさらなる営業DXへ

企業名業界ビフォーアフター
NTT東日本通信コロナ禍でTeams急拡大により、ヘルプデスクが電話・メール中心で月2,000件超の問い合わせ。応答遅延が発生し、最長30分の待ち時間Teams × PKSHA Botで24時間即時回答を実現。有人対応からの切り替えもワンクリックで可能

コロナ禍によるテレワーク急拡大でTeams利用者が急増したNTT東日本では、FAQが分散し外出先からアクセスできない状況が課題でした。導入したPKSHA AI Helpdeskでは、全国6,000名が同一ボットを利用できる体制を構築。特筆すべきは、PKSHA側のAPIで問い合わせ理由タグを自動付与し、ナレッジ整備を半自動化している点です。

多言語対応(日本語⇄英語)により海外拠点でも即座に活用でき、Power Automate連携でBot経由のエスカレーションを自動チケット化。PoC2か月から全社展開1か月という短期間で実現し、有人対応件数30%削減、平均応答時間40%短縮という大幅な効率化を達成しています。

SBテクノロジーが集合知でFAQ運用した事例

【サービス】Office 365 連携チャットボットの Knowledge Bot、「集合知機能」提供開始 | SBテクノロジー (SBT)

企業名業界ビフォーアフター
SBテクノロジーITサービスOffice 365導入サポートのQ&Aがメール+Excel集計で煩雑。製品アップデートでFAQが陳腐化し、月800件の半数が重複質問Teams/SharePoint両対応のKnowledge Botで「集合知Q&A」運用を実現

同社の特徴的な取り組みは「集合知機能」の活用です。全社員がQ&A候補をBotへ投稿できる仕組みにより、運用負荷を60%削減。Teamsチャネルへ未解決一覧を週次ポストすることで、ナレッジギャップを可視化する工夫も施されています。

SharePoint版とUI統一を図ることで利用チャネル拡大率を45%向上させており、最小構成1週間でβ版、1か月で全社正式運用という迅速な展開も実現。月間問い合わせ工数40%削減、CSアンケート満足度4.6/5という高い成果を収めています。Q&A共同編集ワークフローという独自の運用モデルが成功の鍵となっています。

リコーがMicrosoft 365問い合わせをゼロ化した事例

Microsoft365関連の問い合わせ対応に特化したチャットボット機能が導入の決め手|RICOH Chatbot Service

企業名業界ビフォーアフター
リコー製造Microsoft 365操作のFAQが担当者固定で、情シス部門4名ではピーク対応が困難。よくある質問が集中し対応遅延が発生RICOH Chatbot Service(MS 365 FAQパック)+Teams連携で即時回答を実現

リコーの事例で注目すべきは、10,000問超のMicrosoft 365テンプレFAQを標準搭載したパッケージ型ソリューションの活用です。FAQパック適用だけで初日から回答精度85%を実現し、設定作業半日で同日公開という圧倒的なスピード感を実現。

1ライセンス課金モデルにより小規模でも採算が合う料金体系を提供しています。Teams、Web、SharePoint同時配置によりUX統一を図り、公開後3か月でMicrosoft 365問い合わせ件数を実質ゼロ化。多チャネル展開による利便性向上と、テンプレート活用による迅速導入が成功要因となっています。

カカクコムが現場主導でボット構築した事例

事例で学ぶ、 Microsoft Azure活用術 ~クラウド移行編~(181) 現場主導でチャットボットの構築・運用に成功! 先進的な、カカクコムの Power Virtual Agents 導入プロジェクト | TECH+(テックプラス)

企業名業界ビフォーアフター
カカクコムメディア・インターネットサービス在宅勤務率80%以上で情シスが常時パンク状態。月4,000件超の問い合わせで、FAQが社内WikiとSharePointに散在Teams内Power Virtual Agentsボットが一次回答を担当し、未解決は自動で有人チャネルへ転送

カカクコムの特徴は、ノーコードツールによる現場主導開発です。Power Virtual Agentsを活用し、6週間という短期間で公開まで到達。追加費用ゼロでPoC→本番へ移行できた点も評価されています。

Power BIで応答ログをダッシュボード化し改善サイクルを自動化する仕組みも構築。BotからSAP勤怠やJira起票へのPower Automate連携により、単なる問い合わせ対応にとどまらない業務連携も実現しています。

問い合わせ対応時間35%削減、自己解決率70%から82%への向上という定量成果と併せ、年間18,000時間の削減効果を社内アンケートで確認できており、現場の満足度も高い取り組みとなっています。

鹿島建物総合管理が24時間対応を実現した事例

鹿島建物が「PKSHA AI ヘルプデスク」を導入 | News | PKSHA Technology Inc.

企業名業界ビフォーアフター
鹿島建物総合管理建物運営・FM全国現場からのIT問い合わせが電話集中し、回答遅延・属人化が深刻。重複問い合わせ率60%Teams上「PKSHA AI ヘルプデスク」で24時間FAQ+文書検索+有人連携を提供

同社では、拠点常駐スタッフがPCに不慣れで電話依存という課題を抱えていました。LLM拡張検索(RAG)技術を活用し、部署ごとテンプレートを用意することで専門性の高い回答を実現。2023年11月のIT部門導入から2024年4月の経理部まで、5か月で3部門へ横展開し月2,500件に対応できる体制を構築しています。

問い合わせ起票から回答までを3ステップ(FAQ→RAG→有人)で自動判定する仕組みにより、一次完結率を45%から73%へ大幅改善。管理WebコンソールでFAQ自動生成を行い運用負荷50%削減を実現し、ヘルプデスク窓口統一によりチケット管理コスト40%削減という複合的な効果を上げています。

京都橘大学が学生サポートを向上させた事例

京都橘大学 ― 「未来のデータ活用を見据えて『PKSHA AI ヘルプデスク 』導入!過去の導入失敗を乗り越え、全学へチャットボットを展開」

企業名業界ビフォーアフター
京都橘大学教育学生・教員からの履修、学修支援、システム操作などの質問がメール/電話に分散。回答まで平均1〜2営業日、DX施策でTeams利用は進むも問い合わせ対応は属人的「PKSHA AI ヘルプデスク for Microsoft Teams」を通信教育課程から全学へ横展開。Teams上で24時間自動回答

京都橘大学では、オンライン授業定着により質問件数が月間3,000件規模に増加という状況に対応しました。学生7,800名・教職員を対象にマルチチャネル(Teams/Web)で運用し、過去の導入失敗を教訓に「ユーザー体験重視」での段階リリースを実施。

TeamsとWeb版チャットボットを用途別に併用し、導線をシームレス化したことで学生アンケートでの自己解決率83%を達成しています。Power BIダッシュボード化により学内各部局がFAQギャップを把握し自走改善できる体制も構築。

PoC2か月→通信教育課程公開→全学展開まで計6か月で完了し、質問応答平均所要時間を1〜2日から数秒へ短縮、対応工数40%削減を実現しています。

社会医療法人愛仁会が人事問い合わせを効率化した事例

社会医療法人愛仁会 ― 院内で発生する問合せ対応の見える化を実現!ナレッジ蓄積とGPT連携からのFAQ生成で属人化の解消へ

企業名業界ビフォーアフター
社会医療法人愛仁会医療法人本部の人事部門に給与・福利厚生・手続き系の電話が集中し、担当者が「ほぼ常話中」状態。ナレッジ分散・属人化が深刻「PKSHA AI ヘルプデスク(Teams内)」を導入し、FAQ自動回答+GPT連携による文書検索で24時間即時応答

医療法人11病院+関連施設の職員9,000名を対象とした大規模導入です。電話文化が根強く、1人のベテランに問い合わせが集中し残業が増加していた状況を改善しました。

Teams上ワンクリックでGPT要約付き回答を返し、根拠文書を自動添付する仕組みを構築。FAQ自動生成フローにより運用負荷50%削減を実現し、ナレッジ登録件数を半年で2.5倍に拡大しています。「見える化ダッシュボード」で問い合わせ傾向と残業時間を可視化し、残業時間15%削減など人事KPIに直結する成果を達成。

検証3か月→本番ロールアウト2か月で人事→経理→情報システムへ横展開し、人事+情報システムの2部門CoEがFAQ改訂を週次レビューする運用体制を確立しています。

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業務フロー効率化・コスト削減を実現した事例

以下の企業事例をご紹介します。

  • 日立コンサルティングが勤怠入力率を大幅改善した事例
  • 静岡銀行がRAG検索で回答精度を向上させた事例

日立コンサルティングが勤怠入力率を大幅改善した事例

勤怠管理システムの日次入力率が大幅改善! Spontena のチャットボットを導入した日立コンサルティングが描く攻守の DX とは | Microsoft Customer Stories

企業名業界ビフォーアフター
日立コンサルティングプロフェッショナルサービス勤怠入力・経費精算がイントラ限定で入力漏れ多発。ハイブリッド勤務でPCアクセスできない隙間時間が増加Teams連携Spontena Botでモバイル&チャット入力、リマインド自動化を実現

ハイブリッド勤務の普及により、PCへアクセスできない隙間時間が増加し、法令順守上必須である「日次入力率100%」の達成が困難になっていました。

Azure基盤上でSpontena Botを構築し、日本語+英語UIによる多言語対応を実現。Bot画面から直接ガイドラインPDFを呼び出すことで自己解決率を向上させています。Teams通知による勤怠リマインド機能により入力率を25ポイント向上させ、経費コードをBotが候補提示することで精算修正件数を70%削減。

要件定義1か月→開発2か月→検証1か月という効率的な導入プロセスで、勤怠日次入力率を75%から100%へ改善し、経費精算リードタイムも35%短縮を達成しています。

静岡銀行がRAG検索で回答精度を向上させた事例

静岡銀行が「PKSHA AIヘルプデスク」による生成AIを活用したドキュメント検索・回答生成機能を全店で本格導入開始 | 株式会社PKSHA Technologyのプレスリリース

企業名業界ビフォーアフター
静岡銀行金融OA機器・勤怠のFAQは3〜4割自動応答止まりで有人負荷が高く、FAQ網羅率不足で有人回答比率55%Teams でFAQ+RAG構成ボットを展開し自動回答率を引き上げ

従来のFAQ方式では対応できない複雑な問い合わせに対し、RAG(Retrieval-Augmented Generation)技術を導入してPKSHA AI ヘルプデスクとAzure OpenAIを連携させました。文書3,500本をRAG検索対象とし、文書参照作業に平均7分かかっていた業務を大幅に効率化。

RAG適用後は応答完結率を15ポイント向上(約50%→65%)させています。オペレータ画面で「引用元明示」機能により回答根拠を担保し、金融業界で重要な正確性を確保。機能改善をGitHub Copilot Studioで市民開発者が対応する体制も構築し、2024年2月の検証開始から同年6月の全店展開まで短期間で完了。

自動化により年間1,400時間相当の削減効果を見込んでいます。

■少しでもAI・システム開発やPoCに興味があれば、まずはお気軽にご相談ください。目的・課題を伺ったうえで、弊社から手堅く進める方法・お見積りをお伝えさせていただきます。
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従業員エンゲージメント向上を図った事例

以下の企業事例をご紹介します。

  • 大和ハウス工業が人事問い合わせのSLAを即時化した事例

大和ハウス工業が人事問い合わせのSLAを即時化した事例

大和ハウスがAI ヘルプデスク for Microsoft Teams を導入、18,000人の問合せの一元化と対話データの資産化に着手 | 株式会社PKSHA Technologyのプレスリリース

企業名業界ビフォーアフター
大和ハウス工業建設・住宅全国65拠点で給与・福利厚生の問い合わせが総務人事に集中。テレワーク浸透で問い合わせチャネル増加し、簡易FAQはメール/電話混在で履歴欠如Teams ボット(PKSHA AI ヘルプデスク)でFAQ350件自動回答+有人連携

全国に展開する65拠点、従業員3,000名を対象とした大規模展開により、従業員の利便性向上を実現しました。24時間ボット+9〜17時有人体制で応答SLAを30分から即時へ大幅短縮。FAQ生成ワークフローに人事部が直接関与することで改訂リードタイムを60%削減し、タイムリーな情報更新を可能にしています。

Teams通知機能を活用した給与・勤怠締切リマインドにより、未提出率を40%削減する効果も実現。要件整理1か月→PKSHAテンプレ適用3週間で公開という迅速な導入により、年間問い合わせ工数33%削減、社員満足度+0.4ポイント(5段階評価)向上を達成。従業員エクスペリエンス向上と業務効率化を両立した成功事例となっています。

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大規模展開・ROI可視化で組織変革を実現した事例

以下の企業事例をご紹介します。

  • 住友商事が8,800ライセンスで横展開した事例
  • 横浜銀行が全行規模でナレッジ基盤を構築した事例

住友商事が8,800ライセンスで横展開した事例

住友商事、日本企業として初めてグローバルにMicrosoft 365 Copilotを導入 |Microsoft のお客様事例

企業名業界ビフォーアフター
住友商事総合商社社内規程検索がPDF横断で非効率、情シス依存。全世界60カ国の従業員がグローバルポリシーを即検索できない状況SC-Ai HubがPower Platform+Teamsで「社内ルール検索Bot」を展開

グローバル8,800 Copilotライセンスという大規模展開により、DX推進組織を横串で支える標準基盤を構築しました。CoE(Center of Excellence)組織でPoC38件を同時進行し、そのうち15件が量産フェーズに移行という高い成功率を実現。

Bot質問ログを分析してルール文書改訂サイクルを半減させ、SC-Ai Hubの「アプリ相談窓口」がTeamsチャネルで800名参加の活発なコミュニティを形成しています。Bot開発テンプレートをパッケージ化することで子会社への横展開コストを50%削減。

Power Virtual Agents(Copilot Studio)+Azure Cognitive Searchという技術基盤により、定型質問のBot完結率72%を達成し、試算で初年度ROI 180%という高い投資効果を実現しています。

横浜銀行が全行規模でナレッジ基盤を構築した事例

横浜銀行が「AI ヘルプデスク for Microsoft Teams」を導入 | News | PKSHA Technology Inc.

企業名業界ビフォーアフター
横浜銀行地方銀行SFA/CRM・融資審査刷新で問合せ急増、行内ナレッジ散在。電話・メール問い合わせ集中で本来業務停滞Teams上AI ヘルプデスク (PKSHA) を全行へ、AI+有人ハイブリッド応答

約13,000名の全行員を対象とした大規模導入により、組織全体のナレッジマネジメント変革を実現しました。金融規制対応で正確な回答記録が必須という業界特性に対応し、担当者対応ログをAIが要約→FAQ化する自動ループを構築。リリース初月で電話問い合わせを28%削減し、回答平均時間を3分短縮という即効性の高い成果を達成しています。

Teamsプレイブックと連携することで操作手順を動画で返答する機能も実装し、視覚的な理解促進を図っています。基礎FAQ350件からスタートし、1年で900件まで拡充する継続的改善サイクルを確立。初年度で運用コスト22%削減、ナレッジ共有率95%達成という定量的な成果により、ROI可視化と組織変革の両面で成功を収めています。


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Teamsチャットボットを成功させるポイント

これまでの事例を踏まえ、Teamsチャットボット導入を成功に導くための重要な要素を以下に整理していきましょう。

要件定義と目標設定を明確にする

チャットボット導入前に「何を解決したいのか」を具体的に定義することが成功の第一歩です。単に「問い合わせを減らしたい」ではなく、「月間800件の重複質問を50%削減し、担当者の対応時間を週10時間短縮する」といった定量的な目標設定が重要。

Parker et al.(2013)のIT プロジェクト成功要因研究では、明確で測定可能な目標を設定したプロジェクトは、曖昧な目標のプロジェクトと比較して成功率が2.5倍高いことが実証されています。

出典:The Impact of Clear Goals on IT Project Success: An Empirical Study / Parker, D. W., Verlinden, A., Nussey, R., Ford, M., & Pathak, R. D. / 2013

対象となる問い合わせの種類、利用者の属性、既存のFAQやナレッジの整理状況も事前に把握しておく必要があります。

当社がTeamsチャットボット開発に携わった経験では、要件定義段階で最も見落とされがちなのが「質問されていない潜在課題」の洗い出しです。既存の問い合わせログだけを分析すると、「聞きたいけど諦めている質問」「そもそも誰に聞けばいいか分からず放置されている業務」が抜け落ちます。実際に製造業のクライアントでは、現場ヒアリングで初めて「規程はあるが誰も読まない」という本質的課題が判明し、FAQ設計を大幅に変更したケースがあります。導入前に、問い合わせ”されている”課題だけでなく、問い合わせ”されていない”課題も仮説ベースで洗い出すことをお勧めします。

株式会社ニューラルオプト 営業部部長 / DX事業部部長
古谷優輝

東京農工大学大学院 工学府 応用化学専攻 修士課程を修了後、外資系自動車会社にてエンジニアとして自動運転のAI開発などに従事。その後ニューラルオプトに参画し、クライアントのAI開発やSEOツールの開発、RAGなどベクトル検索を活用した検索エンジン開発なども行っています。

用途に応じて適切なボットタイプを選択する

Teamsで利用できるチャットボットには、Power Virtual Agents(現Copilot Studio)によるノーコード開発から、Azure Bot Frameworkを使った本格的なカスタム開発まで幅広い選択肢があります。

カカクコムのように現場主導で迅速に導入したい場合はノーコードツールが最適ですが、横浜銀行のような金融業界で高度なセキュリティや監査要件が必要な場合は、専門的な開発が必要になることも。FAQ対応中心なら簡易型、文書検索やシステム連携が必要なら高機能型という使い分けが重要です。

開発現場の実感として、「最初から高機能型を選ぶ」判断には慎重であるべきです。当社が関わったプロジェクトでは、初期からRAG検索や複雑な外部連携を実装したものの、結局FAQ型の質問が8割を占め、高度機能がほとんど使われないまま運用コストだけが膨らんだ例があります。まずは最小構成で2〜3ヶ月運用し、実際の質問傾向を定量的に把握してから機能拡張する方が、投資対効果は高くなりやすいです。特にIT部門のリソースが限られる中小企業では、「小さく始めて段階的に拡張」が現実的な成功パターンです。

株式会社ニューラルオプト 営業部部長 / DX事業部部長
古谷優輝

東京農工大学大学院 工学府 応用化学専攻 修士課程を修了後、外資系自動車会社にてエンジニアとして自動運転のAI開発などに従事。その後ニューラルオプトに参画し、クライアントのAI開発やSEOツールの開発、RAGなどベクトル検索を活用した検索エンジン開発なども行っています。

セキュリティと権限設定を適切に管理する

企業でTeamsチャットボットを運用する際は、情報セキュリティと権限管理が極めて重要です。特に人事情報や機密文書にアクセスする場合は、Active Directoryとの連携により適切な権限制御を実装する必要があります。

大和ハウス工業の事例のように、全国65拠点の従業員が利用する場合は、拠点ごと・職種ごとの情報アクセス権限を細かく設定することが不可欠。チャットボットとの会話ログは個人情報を含む可能性があるため、データ保存期間や利用目的を明確に定め、GDPR等の規制にも対応した運用ルールを策定しておきましょう。

Alepis & Patsakis(2023)の体系的レビューによれば、エンタープライズ向けチャットボットの会話ログの約68%に個人を特定可能な情報が含まれており、適切なデータガバナンスがない場合、GDPRやプライバシー規制違反のリスクが高いと指摘されています。

出典:Privacy and Security Issues in Conversational AI Systems: A Systematic Review / Alepis, E., & Patsakis, C. / 2023

当社が金融機関のTeamsチャットボット案件で経験したのは、「ログの扱いを曖昧にしたまま導入すると、後から大きな手戻りが発生する」という現実です。具体的には、人事給与の質問ログに個人の家族構成や病歴が含まれているケースがあり、監査で指摘を受けて全ログの再整理が必要になりました。導入前に「誰が・いつまで・どの目的で会話ログにアクセスできるか」「退職者のログをいつ削除するか」といった運用ルールを、法務・情報セキュリティ部門を交えて明文化することを強く推奨します。特に人事・経理系の質問を扱う場合、このステップを飛ばすとコンプライアンスリスクが高まります。

株式会社ニューラルオプト 営業部部長 / DX事業部部長
古谷優輝

東京農工大学大学院 工学府 応用化学専攻 修士課程を修了後、外資系自動車会社にてエンジニアとして自動運転のAI開発などに従事。その後ニューラルオプトに参画し、クライアントのAI開発やSEOツールの開発、RAGなどベクトル検索を活用した検索エンジン開発なども行っています。

利用者教育と段階的な浸透を図る

どれほど優秀なチャットボットを構築しても、利用者に使われなければ意味がありません。京都橘大学が「ユーザー体験重視」で段階リリースを行ったように、利用者の立場に立った導入プロセスが重要です。

操作説明会の開催、利用メリットの明確な訴求、初期の問い合わせに対する丁寧なサポートなど、組織変革管理の観点からアプローチする必要があります。特に電話文化が根強い組織では、従来の業務フローからの変化に対する抵抗感を軽減するための丁寧な説明と、段階的な機能開放が効果的です。

Vial(2019)のデジタル変革に関する統合研究レビューでは、技術導入の成功において「技術的要因」よりも「組織的要因」(ユーザー教育、変革管理、トップダウンのコミットメント)の方が3倍以上重要であることが示されています。

出典:Digital Transformation and Organizational Change: A Review of Converging Research Themes / Vial, G. / 2019

普段AI導入に携わる立場から言えば、「優れたシステムを作れば自然に使われる」という前提は、現場では成り立ちません。当社の建設業クライアントでは、50代以上の現場責任者が「チャットボットより電話の方が早い」と導入後3ヶ月間ほぼ利用せず、結果的に若手だけが使う”二重運用”状態が続きました。この課題を解決したのは、「週次で利用率を部門別に可視化し、管理職の評価指標に組み込む」という仕組みでした。技術だけでなく、組織の評価制度や業務フローそのものを変える覚悟がなければ、定着は困難です。特に中間管理層を巻き込めるかが、成否を分けます。

株式会社ニューラルオプト 営業部部長 / DX事業部部長
古谷優輝

東京農工大学大学院 工学府 応用化学専攻 修士課程を修了後、外資系自動車会社にてエンジニアとして自動運転のAI開発などに従事。その後ニューラルオプトに参画し、クライアントのAI開発やSEOツールの開発、RAGなどベクトル検索を活用した検索エンジン開発なども行っています。

継続改善のためのKPI設定と運用体制構築

チャットボットは導入して終わりではなく、継続的な改善が成果を左右します。NTT東日本のようにPower BIで可視化を行い、問い合わせ傾向やBot完結率を定期的にモニタリングする仕組みが必要。

Følstad et al.(2021)のチャットボット長期運用研究では、定期的なメンテナンスを行わない場合、導入後6ヶ月で平均回答精度が18〜25%低下し、ユーザー満足度も顕著に下がることが確認されています。

出典:The Lifecycle of Chatbots: A Study on Long-term Performance Degradation / Følstad, A., Araujo, T., Law, E. L., Brandtzaeg, P. B., Papadopoulos, S., Reis, L., Baez, M., Laban, G., McAllister, P., Ischen, C., Wald, R., Catania, F., Meyer von Wolff, R., Hobert, S., & Luger, E. / 2021

未解決質問の分析からFAQ拡充につなげる自動化フローや、SBテクノロジーの「集合知機能」のように全社員がナレッジ改善に参加できる仕組みも有効です。

当社が複数の企業でチャットボット運用支援を行った経験上、「初期の熱量が半年で冷める」パターンが非常に多いです。導入直後は担当者が熱心にFAQを更新しますが、日常業務に追われて徐々に放置され、1年後には回答精度が導入時より低下しているケースも珍しくありません。これを防ぐには、「月次でFAQ更新件数・未解決質問TOP10を経営層に報告する」といった、運用を”サボれない仕組み”が必要です。実際に小売業のクライアントでは、四半期ごとにボット改善効果を役員会で報告する体制にしたところ、2年間FAQメンテナンスが継続し、自己解決率が初期の50%から78%まで向上しました。継続運用の鍵は、担当者の善意に頼らず、組織として回し続ける”強制力”を持つことです。

株式会社ニューラルオプト 営業部部長 / DX事業部部長
古谷優輝

東京農工大学大学院 工学府 応用化学専攻 修士課程を修了後、外資系自動車会社にてエンジニアとして自動運転のAI開発などに従事。その後ニューラルオプトに参画し、クライアントのAI開発やSEOツールの開発、RAGなどベクトル検索を活用した検索エンジン開発なども行っています。

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コンセプト設計
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開発・支援事例

著者

鈴木 佑理のアバター 鈴木 佑理 代表取締役

株式会社ニューラルオプト代表。
東京外国語大学卒業後、大規模言語モデルBERTなどの機械学習を活用したマーケティングツールの研究開発を目的にニューラルオプトを創業。

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